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5 癒される
しおりを挟む「殿下、はじめまして。わたくし、シャルロットでございます。先日、八歳になりました!」
翌日の昼過ぎに私の大本命がやってきた。
可愛い~!
おっきくてすみれ色の瞳にクセのあるふわふわの金髪。
シャルロットがいいなぁ!
それなら、あと十年猶予があるし、シャルロット一択でしょ!
その間にシャルロットの為に年の近い新しい婚約者も探せばいいしね。
「ようこそ、シャルロット。これからはシャルと呼んでも?」
「はい。殿下がお望みなら」
侯爵家って、こんな小さい子にこんな教育してるの?
大丈夫?
後ろに控えている侯爵をじっと見ると、にこやかに笑顔を浮かべている。
何考えてるか、わからないなー。
うちの子、可愛いだろー! なら同意。
めっちゃくっちゃ、可愛いよ!
「じゃあ、シャル。ちょうど花が咲きはじめたんだ。庭園を案内しよう」
「はい、ありがとうございます」
手を差し出すと、小さくてぽちゃっとした手をのせてくる。
やだ、もう。可愛い!
「では、侯爵。少し歩いてくるよ」
シャルロットの手をそっと握って外に連れ出す。
さすがに小さいから、週に三度ほど日中に通いでやってくることになったけど、きっとよくわかっていないんだろうな。
彼女が来た時はなるべく他の御令嬢達とかち合わないようにしたい。
私の大本命だし、いじめたら許さない。
まぁ、いたいけな少女をいじめるような子が王族の一員になるなんて許されないからね。
結婚なんてしないけど!
妹がいたらこんな感じなのかなー。
シャルに対してはお兄ちゃん気分で守ってあげたくなる。
「シャルはどんな花が好き?」
二人きりになって、そう話しかけると、
「いい香りのする花が好きです! あと、殿下は食べれる花を知っていますか?」
「食べれる花……うん、サラダとかゼリーに飾る花、あるよね」
あんまり食欲わかないけど、あるよね。
食べられる花、何があったかな。
「シャルは食べてみたいの?」
「はいっ! どんな味がするのか、すごく興味があります」
「そうなんだ……ああ、そうだ。すみれの砂糖漬けなら用意できるんじゃないかな。薔薇ジャムはもう少し先の季節になるけれど」
義姉上が、紅茶に入れていたような?
確か、いかがって言われて飲んだ記憶がある。
甘くて、ふわっと花の香りがしたっけ。
「すみれ! ばら! 殿下ってなんでも知ってるんですね!」
キラキラした目で見つめてくるから、可愛くてしかたない。
でも、ごめん。あんまり知識ないんだ。
ツツジはここの庭で見たことないし、いや、あっても品種によっては毒性があるから蜜を吸っちゃダメって理科の先生の話で知ったんだよね。
前世のおばあちゃんちでよく舐めていたけど、お腹、丈夫で良かったな~。
「とっても、甘いよ。あるかどうか聞いてみようか」
「はい!」
花より食い気になっちゃったけど、可愛いからいっか。
あれ? エディブルフラワー研究家ってのもありだな。
万一に備えて、食べれるものが増えるのはいいことだよね!
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