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3 それが儚いものだと知ったら
6 時間は止まらない
しおりを挟む「最近のまいちゃん、何か悩んでいる?」
本人を前に言えない悩みに、口を開いては閉じる。
「言って」
「だって、先輩がいなくなっちゃうから……」
今日一緒に過ごした先輩は普通の男の子にしか見えなかった。
だけどこの世界からいつ消えてしまうのか、怖いし不安でたまらない。
在学中に悲しい知らせは聞きたくないけれど、卒業してしまったら先輩の消息がわからなくなる。
SNSで既読がつくかどうか確かめるようなことはしたくない――。
あと何回会えるかわからないのに、先輩の心を悩ませる私は最低だ。
どうして二学期のテストの結果が悪かったとか、三学期は出席日数を考えたらもう休めないんだとかそういううことをすぐに答えられなかったんだろう。
いつもの私だったら、それくらいの嘘はするっと出てくるのに。
「また会えるよ。まいちゃんが俺と会ってくれればね……いや?」
「いやじゃないです! いっぱい会いたい、です……」
そう答えると先輩の口角がほんの少し上がった。
「うん、よかった。……まいちゃんさ、岩手先生との会話聞こえてた?」
「……少しだけ、です」
先輩が私の手をぎゅっと握る。
「あれからちょっと、おかしいよね? 違うかな」
答えられない私に、先輩が小さく息を吐いた。
「何か勘違いしているみたいだから……。この話は卒業まで内緒にしていてほしいんだけど、岩手先生は俺の母親なんだよね。小学生の時に離婚しているから、まさかこんなところで会うと思わなくて。今年度で退職して再婚相手が暮らすイタリアへ行くのが決まっているから今のうちに会っておこうと思って保健室に入り浸っていたんだ」
想像もしなかったことを言われて言葉が出ない。
しかも、それは建前だけどって小声で言うからどういうことだろう。
やっぱり病気を隠しているということ?
「……岩手先生って去年から赴任でしたよね」
私が高校に入った時に新任の挨拶をされていた記憶。
それなら病気のことも相談していたのかな。
「言われてみれば目元が似ている気もします」
「そう、かな。……少し我儘言って休ませてもらっていた」
疎遠になっていた息子に甘えられたら、岩手先生も強く言えなかったのかも。
「先生優しいし、会えてよかったですね……」
最期に離れていた母親と過ごしたいと思うのは不思議じゃない。
小学生の頃の離婚だったなら、きっと先輩も寂しかったと思うから。
「まいちゃんは、優しいな。それに岩手先生も甘いよね。俺、貧血なんだ。薬は飲んでいるけど、鉄剤って飲んだらすぐによくなるわけじゃないんだよね。血圧が低いのもあるかもしれない」
「貧血……ですか」
体内で出血していて貧血なのかもと考えたら、今日一日出かけたのはすごく疲れているかも。
「先輩、今の体調は大丈夫ですか……?」
「大丈夫だよ? まいちゃん、俺の体調はまいちゃんと同じだよ」
「同じ?」
私の顔をのぞき込む先輩の眼差しに居心地が悪くなる。
「自分の都合でお休みするところ」
見透かされていたことに気づかなかった。
見たことのない少し意地悪な笑い方を、驚いてひたすら見つめる。
「……先輩、ただの貧血だったんですか?」
自分のことは棚に上げて、つぶやく。
ずる休みをしていたことがバレていたのは恥ずかしい。
けど、先輩が私と一緒なら、この世界から消えて無くならないってこと――?
「そうだよ。朝礼の時に倒れたことがあって、遠慮なく利用してる。それにどれだけ食べても太らないし、肌が白いから……」
そう言って肩をすくめた。
色々なものが重なって先輩は病弱にみえる。
「…………」
「それに内部進学だからのんびり保健室で過ごせたのもあるかな。まいちゃんもいたし」
進路の話が出なかったのも、とっくに決まっていたから?
じゃあ、少しくらい進路の話をしてくれてもよかったのに。
むっとする私の顔を見て笑みを深め、これからも頻繁に会えるねって言った。
「……先輩が深刻な病気なんじゃないかって、ずっと勘違いしてました」
さっきからずっとみつめられていて、恥ずかしいけど視線をそらせない。
先輩がいつもと違う表情を浮かべているし、まだ頭の中はすべてを整理できていないからだと思う。
「あぁ、そういうこと……本当に貧血だけだよ。まいちゃんは?」
「頭痛だけです。……本当に、貧血だけですか? 嘘じゃなくて」
「何度も言わせるんだ? 本当に軽い貧血だけ」
私はずっと考え過ぎて、勝手に悪い想像していた。
一気に顔が赤くなる。
でもほっとしている自分もいて。
恥ずかしくて顔を覆ってしまいたいのに先輩に手を握られているし、情けない顔はしっかり見られてしまった。
「……勘違いしてごめんなさい」
「いいよ。可愛い顔が見れたから。それにこれからもいろんな表情がみたい」
凪先輩がこれまで見てきた先輩じゃないみたい。
少し意地悪で、でもそんなところも嫌じゃないし、意外と私達は似た者同士だったらしい。
そんなことを考えていると、先輩がつないでないほうの手を伸ばして私の髪を撫でた。
「まいちゃんの全部、気に入っている。もっと知りたい」
「私も……先輩のこともっと知りたいです」
好きって言葉が口から飛び出しそうになる。
でもきっと、まだ早い。
「まいちゃん、この先もつき合ってくれる? 初詣、一緒に行こうよ」
「はい」
「冬休み、何回会えるかな」
先輩の空いている日は全部。
そう思っていることも、もしかして伝わっていたらどうしよう。
「あとで……予定みて相談したいです」
「うん、まいちゃんのそういうところも好きだよ」
会えない時もSNSで連絡を取り合いたいって思っていることも、ほんの少しかけ引きしようとした私の考えていることも、やっぱりバレているのかもしれない。
さらりと好きって言ってしまうところもずるい。
「閉園まであと二十分か……。お店でなにかお揃いのものが欲しいな」
「はい、私も」
クリスマスプレゼントは渡されても重いと思って用意しなかったし、昼間のスーベニアショップは混雑具合がひどくてのぞかなかった。
それに一緒にいられる時間のほうが大切だと思ったから――。
「なんとなく目星はつけているんだけど、まいちゃんが気に入ってくれるといいな」
「じゃあ、急ぎましょう。……あ、せっかくなのでツリーの前で一枚一緒に写真撮りたいです」
「一枚でいいの? じゃあ先に今、一枚」
先輩が近づいて、テーマパークの出入り口にある大きなツリーを背景に撮る。
二人の間に小さく映るクリスマスツリー。
うん、先輩はカッコいい。
「帰りにツリーの前でも撮ろう」
終わってほしくなかったデートは、次へと続くことがわかって私の足取りも軽くなる。
先輩のほうが私のことをわかっているみたいだから、これからはためらわずに訊いてみよう。
先輩が隠していた顔をもっと知るのはこれからで、彼に近づくたびに私はますます好きになると思う。
だけど今日は悔しいから好きって言わない。
「凪先輩、質問していいですか?」
それが儚いものだと知ったら 終
******
お読みくださりありがとうございました。
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完結おめでとうございます。
蓋を開けてみれば、ほっとするような。
とにかく、憂いがなくなり良かったですね。こちらも安心しました。
いろんな顔を持つのは、先輩だけじゃなくて自分もなのでこれからお互いにもっと気持ちが強く大きくなるといいですね。
可愛いお話でした。
お幸せに(*´▽`*)
3組めは最終話で……
蓋を開けたら、がっくりじゃなくてよかったです( ˊ• ·̭ •̥ )
か、可愛いですか……お優しい😢
似たもの同士な2人です♪
筋肉は正義さま、ここまでお読みくださりありがとうございました〜🤗
6 本日拝読しました。
一旦の完結、おめでとうございます……っ。
今回も(本日拝読した回でも)、共感する部分が、たくさんありまして。
そのため、一体感を覚えながら。お二人の姿を、眺めさせていただきました。
あめ様。
いつも。素敵な世界を発信してくださり、本当に、ありがとうございます。
共感していただけて嬉しいです〜😊
1組めの初々しいカップルの後、2組め、3組めとだんだんクセが強くなっていっている気がしますね ( ˃ ⌑︎ ˂ )💦
柚木ゆずさま、ここまでおつきあいくださりありがとうございました〜🤗
|•ω•`)やっぱり
そ~ーいうことだったのですね
勘違いで
良かった😄
これから
ずっと一緒ですね
( ⸝⸝˘͈ ᵕ˘)(˘͈ᵕ ˘͈♡)ピトッ…💓
いったん
|
/完結 \
/ ∧ \
│ /川\ │
\/┏┻┓\/
。゛#┃お┃゛。
゛,。┃め┃#。゛
。゜#┃で┃゛。゛
,*。┃と┃゜。#
#゜。┃う┃゜*。
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/ ⊃Φ"ございます
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。:🌹・🌷゚🌹*🌸🌷
・🌷🌻★゚.🌹☆。:🌷🌺
🌻.🌹🌸.:*🌹🌺🌷🌸🌻
🌹🌸🌹🌺🌻🌼。_🌹*🌷
\ξ \ ζ /
∧,,∧ \ /
(๑´ ∀ ` ๑) /
/ つ🎀o
しーJお疲れ様でした
そうなのです( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )
悲恋、せつない、そんなタグのついていないお話です😅
そんなオチですみませ〜ん💦
この2人はこの後一気に距離を詰めるんじゃないかなーと思ってます🌺
青空さま、3組目もおつきあいくださりありがとうございました〜🤗