異世界で再会した姉はおばあちゃんで、私はそこで恋に落ちた

能登原あめ

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 私は姉のあみちゃんといつも二人で過ごしてきた。
 小学校に上がる頃に両親が離婚して、お父さんに引き取られアパートに引っ越したけど、もともと夜勤が多くて帰ってこない日も多い。
 お父さんがパンを買い忘れると私もあみちゃんもお腹を空かせたまま眠ることもあって。
 
 でも今夜は、インスタントラーメンの袋を叩いて潰して二人で分け合って食べる。
 ヒヨコのキャラクターの袋麺はちょっと味が濃いけどお水を飲んだら大丈夫。
 お父さんはお酒を飲みながらそうしてたから。
 おしゃべりしながらぽりぽりとつまむ。

「ゆみ、今日の体育さ、走るの早かったね~! びっくりした」
「見てたの? 走るの好きだからね~。でもドッジボールは苦手」
「あー。当たると痛いしね! ずっと外野でいいのに……」
「あみちゃんはほんとに体育嫌いだね」

 今日は学童でおやつが出てよかった。
 私は小学校二年生であみちゃんは三年生。
 料理に興味もあるけど、お父さんはまだガスコンロを使っちゃダメだと言う。
 
 お父さんが作れる料理はラーメンで、うちには炊飯器はあるけど、お米がない。
 面倒くさいって言ってた。
 電子レンジはなくて、トースターはある。
 
 だから二人きりの夜はたいてい甘いパンかしょっぱいパン……ウィンナーとかコロッケがのってるのをトースターで温める。
 ピザパンの時はごちそう。
 初めは焦がしたり火傷しそうになったけど、私たちが使えるのはそれだけ。
 
「あみちゃん、明日の給食楽しみだね」
「うん、きな粉揚げパンなんだよね~、それとハンガリアンシチュー」

 私たちは家庭料理を知らない。
 出て行ったお母さんも料理はしなかったから給食がすべて。
 週に一日しかお父さんは休めないから土曜の昼は食べないことも多い。
 
 そんなだから私とあみちゃんは昼を過ぎても二人で公園で遊んで、暑くなったのと喉が乾いて家に戻った。

「こんにちはー!」
「こんにちは。これからごはん?」

 私たちの住む部屋はアパートの一階で、隣の部屋に住んでいるのが七十代くらいのおばあちゃん。
 
「ねえ、よかったらこれ食べない? 好き嫌いある?」

 このおばあちゃんは一人暮らしで、アパートの庭で野菜を育てている。
 取れ過ぎたからとナスを差し出されて私たちは困った。

「あの……料理できないのでもらっても食べれないんです……」

 あみちゃんがおばあちゃんに言った。

「お父さんは料理しないの?」
「ラーメンは作れるよ!」

 私が言うと、じゃあちょっと部屋においでと家にあげてくれた。
 
「昼は何を食べようとしていたんだい?」

 そう聞かれて答えられない私たちに、さっと塩むすびを握ってくれた。
 それから大きなタッパに入ったナスの揚げ浸しを皿にとり、きゅうりに味噌を添えて私たちの目の前に置く。   
 食べ切れないから遠慮しないで手伝ってと笑った。

「……いただきます!」

 土鍋で炊いたというご飯で作った塩むすびはこれまで食べたご飯の中で一番美味しかった。

「おいしい!」
「おいしい……」

 座っているのにぴょんと小さく跳ねた私におばあちゃんは目を細めて笑う。
 あみちゃんも感動して固まっているみたい。

「若い人の料理はわからないんだけど、こんなものだったらいつでもうちにあるからね。食べて手伝ってくれると嬉しいわ」

 少し甘めのナスの揚げ浸しも、ぱりっとした小さなきゅうりに味噌をつけるのもおいしかった。
 味噌もおばあちゃんが毎年手作りしてるというから、あみちゃんがいいなぁって呟くと、寒くなったら仕込むから今度声をかけるねと約束してくれた。

 それから私たちは少しずつ話すようになって、料理を教えてもらえることになった。

 お父さんは相変わらずで、おばあちゃんのことを話したら大家さんだから迷惑かけるなよと言っただけ。

 仲良くなるうちに、おばあちゃんはお嫁さんと同居したけど食べ物が合わなくて、アパートで一人暮らしを始めたと聞いた。

 このアパートはおばあちゃんのものでお金に困っていないし、庭で野菜も作っているんだから遠慮しないで遊びにおいでって笑う。
 かわりにおしゃべりの相手になってくれると嬉しいって。



 私たちは学年が上がって、あみちゃんはもう学童に行けなくなった分、おばあちゃんを手伝いながら料理を教えてもらっているみたい。

 洗濯機の使い方も干し方もみんなおばあちゃんが教えてくれた。
 それと、学校から雑巾を持ってきてと言われたらこれまでお父さんに買ってきてもらっていたけど、おばあちゃんに縫い方を教えてもらったし、運動会のゼッケンは安全ピンじゃなくて自分たちでつけることができた。
 それからきれいに身支度を整えることも。
 これで学校でからかわれなくてすむ。

 お父さんはパンを買う代わりに電子レンジを買ってくれて、お金を置いていくようになった。
 取り扱い説明書に電子レンジで作れるレシピがついていて、その通りに作った肉じゃがはそれなりにおいしくできた。
 おばあちゃんが土鍋で作る方が美味しいけど、いつでも温かいものが食べれて幸せ。
 料理って楽しい。

 お父さんはまだガスコンロはダメだと言うけど、炊飯器は使っていいことになったから、お父さんの分のおかずを置いておくと、空のお皿がシンクに置いてある。

 あみちゃんは食べてくれて嬉しいって笑うけど私はお皿を洗ってくれたらもっといいのになって心の中で思った。

 私たちが家事をこなせるようになるにつれ、お父さんはだんだんと家に帰らなくなった。
 
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