異世界で再会した姉はおばあちゃんで、私はそこで恋に落ちた

能登原あめ

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 その夜、私はフランシスの部屋を訪れた。
 さすがに朝の朝食時に『日本というこの世界にない国からやってきました』なんて言えなくて。

「フランシス、寝てる?」

 かさこそと衣ずれの音が聞こえた後、たたっと床を歩く音が聞こえて扉が開いた。

「どうしたの、ユミ?」
「もしかして寝てた?」
「布団に入ったところだった」

 少しかすれた声が、眠りについたところを起こしちゃったのかなと思う。
 申し訳なく思って、あらためて出直そうとしたところで、フランシスに手を握られた。

「話があったんでしょ?……ユミ何か羽織って。……少し、外出よう?」

 パジャマはフランシスと暮らす前まであみちゃんの古着を着ていたけど、なぜか新しいものが数枚届いて、今はそれを着ていた。
 袖がないから外は寒いかもしれない。
 
「俺のでごめん。夜は冷えるから。……それと、可愛すぎるから目の毒」

 フランシスのシャツを肩にかけられて、静かに外に出る。
 森が近いからなのか、風が通り抜けるとほんのり涼しい。
 真っ暗だし、高い建物もないから星がよく見える。
 フランシスに導かれてベンチに並んで座った。

 私はフランシスの手をぎゅっと握り、あみちゃんと私が姉妹で、日本という別の世界に住んでいたけど、多分ブライアンさんの日記が原因でこの世界にやってきたこと、なぜか二人の時間が五十年ずれてることを淡々と話した。
 その間、フランシスは静かに聞いてくれて、時々私がつかえそうになると、励ますように手を握ってくれる。

「信じられないかもしれないけど……嘘はついてない。私のこと、頭がおかしいと思う?」
「思わない」

 即答されて、彼の顔をまじまじと見る。

「ブライアンさんは有名な魔術師だって聞いてるし、よくお弟子さんが訪ねてきてたから。みんなうちでお土産買ったり、馬車の手配を頼んだりしていたからね」
「そう、なんだ……」
「だから、ブライアンさんなら召喚術が使えてもおかしくないと思う……日記がなんでアミさんに渡ったかはわからないけど……縁があったんだろうね。すごく仲のいい夫婦だったから」
「私はあみちゃんの妹だから、寂しくないように呼ばれたのかな……?」

 おばあちゃんって呼ばない理由はそれだったんだね、って言ってから私の頬を撫でる。

「寂しくないように呼ばれたのかもしれない。……けど、俺と結ばれるためだっていう理由のほうが……嬉しい」
「……フランシスは、こんな、素性のわからない私でもいいの?」
「素性は今わかったよね?」

 フランシスが大好き。
 私は大きく深呼吸してから告げた。

「……こんな私でよかったら、結婚してください」
「……っ!……その言葉、撤回しないでよ?……もちろん、喜んで。……俺、一日も早く結婚したい」
「うん、いつでもいいよ。……フランシスが、好き。大好き」

 思わずすべり出た私の言葉に、抱きしめられて唇が重なる。

「どうしよう、好きすぎてつらい。幸せすぎて、夢みたいだ」
「……私も。フランシスとなら、想像できる。ずっと一緒にいて、お互い歳をとっていく姿が。あみちゃんだってブライアンさんと幸せな結婚をして添い遂げた……だから、父とは違うってもうわかってる。……フランシスを信じてる。すごく……大好きなの」

 私の後頭部に指が差し入れられて、なんだかむずむずして、彼を見上げる。

「ユミ、大事にする。大好きだよ……俺をユミの家族にして」
「うん……フランシス、待ってくれてありがとう」
「触れて、いい?」
「うん……」

 抱きしめられて、髪にも触れて。
 その先を求められて、恥ずかしいのに嬉しい。
 フランシスを見つめていると、軽く唇が触れた。
 至近距離で見つめられて、かあっと体温が上がる。
 いつもと違う表情にどうしていいかわからない。

「かわいい……」
「……ぁ……」

 上唇を啄まれて驚いた私は、思わず声を漏らした。
 そのまま唇の裏側を舐められて、フランシスの服をぎゅっと握る。
 頭の後ろを支えられているから、彼にされることを受け入れるだけ。

「フランシス……?」
「キスだけ、させて」
「……ん」

 何度も啄まれて、心地よさに吐息を漏らした時、彼の舌が私の口内を探索した。
 知識はあったし初めてそんなキスがあることを知った時は気持ち悪いと思ったのに、今感じているのはその逆で。
 フランシスにされることは全部好きだと、私は思って。
 無意識に腕を背中に回して熱くなった身体を彼に押しつける。
 
「ユミ」
「フランシス……気持ちいい……」
「……そういうこと言われると、止まらなくなっちゃうよ……」
「いいよ……フランシス、大好き」
「……あぁっ、もう!!」

 彼にきつく抱きしめられて、なんだか笑いがこみ上げてきた。

「……ふふっ……、苦しいけど、幸せ。私、フランシスに出会えて本当に嬉しい。私のこと好きになってくれてありがとう……だからね、フランシスになら、何をされてもいいよ」
「…………明日の朝、アミさんに一日も早く結婚するって言うから」
「うん」

 夏の暑くて暗い夜も、フランシスがいればこんなに明るく感じるのだと私は知った。
 

 






 ***

「今夜、一緒に眠ってもいい?」
「…………」
「ぎゅってして眠って、朝フランシスにおはようって言いたい」
「……手を出さない自信がない」
「……いいよ?」
「…………」
 
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