あなたを忘れる、そして。

能登原あめ

文字の大きさ
1 / 6

1 俺は勇者

しおりを挟む

* 勇者は性別関係なく行為に及びます。胸糞、地雷ご注意ください。二話目から読むことも可能です。






******


 最初、WEB小説の読み過ぎて、夢を見ているのだと思った。

 異世界転移したらしい俺は、欲しい能力を持っている相手と寝ると、その相手の能力を奪えるという力を手にしているらしい。

 いつ目が覚めるんだ?
 そう思いながらも、二十歳の俺は欲望に勝てなかった。

 女の子と寝るのは初めてで、今まで知らなくてもったいないことをしたと思う。
 そもそも日本でそんなチャンスはなかったから仕方ない。
 女の子も演技とは思えないくらい喜んでくれたから、多分タガが外れたんだ。
 たくさんの女の子と寝て、色々な能力を得た。

 そうなると欲しい能力を持っている男にも手を出すことをためらわなくなったし、やればやるほど力がみなぎって、自信もつく。
 見た目も変わる。
 向こうからやって来なくても、自分から半ば強制的に行為に及ぶことだって日常茶飯事。

 嫌がった相手も、俺の手によって快楽を得たし、最終的に合意に至った。
 能力が奪われたことも、その能力を持っていたことも忘れてしまうことができたから、罵られることもない。
 これがいわゆるチートなのか、と俺はどんどん強くなって、ますます思い上がっていった。

 そうして数え切れないほど相手にして、俺はこの世界で一番有名で強い男になった。
 だから、百年ぶりに目覚めたという魔王を倒して欲しいと、国王に頼まれた時も不安に思うなんてありえない。

 実際に子供を相手にするくらい簡単に倒してしまった。
 あまりにもあっけなくて、俺はその場で魔王の力も取り込んでいる。

 それに気づいた国王は、俺に爵位を与えて可愛い王女を降嫁させての結婚の話を持ちかけてきた。
 俺を取り込みたいのは分かったけれど、縛られるのは嫌だと言って断った。
 すでに一夫一妻制の国に、俺はハーレムを持っていたし、たった一人に縛られるなんていくらプリンセスで可愛くたって嫌だ。

 だから俺は国を出て旅に出た。
 俺に怖いものなんて何もないし、国王は残念がったけど、それ以上踏み込んでこなかった。
 ただ協力関係だけは保つことになったけど。

 そんな俺はどの国へ行っても勇者として崇められた。
 金も女も何もかも困ることはない。
 順風満帆とはこういうことか。

 日本での生活も、家族のことも忘れた。母が苦労して俺を育ててくれたことも。
 志望していた国公立の大学に落ちて、奨学金をとってバイトと私大をひたすら往復する日々。

 のん気に遊んでいる子達を横目に、資格をとっていい仕事に就いてやると、ストレスを抱えながら過ごしていた日々なんて思い出したくない。
 今のほうがずいぶん楽だ。

 母は俺がいなくなって泣くかもしれないけど、俺にかかる金のことを考えなくて済むんだから生活が楽になるはずだと言い聞かせる。
 俺が生きがいだとも言っていたけど、母は父と別れてからいつも疲れていた。 

 小さくて薄暗いアパートに独り、俺の帰りをもう待たなくていいんだ。
 朝早いんだから、先に寝ていればいいのに。
 母は俺を忘れて幸せになればいいと思う。
 これも一つの親孝行だ。
 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※「なろう」にも重複投稿しています。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

処理中です...