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8 恋人から始めました①
しおりを挟む今日は二人で湖にてデート。
元漁師のジュストさんの魚を捕らえる方法が意外だった。
釣竿を使うとか網を使うとか、罠を仕掛けるとかでもなくて、水に入り素手で魚を狙って跳ね飛ばして囲った場所にどんどん放り込む。
「このくらい獲れば十分だな。しばらく泳がせておいて、帰りに持ち帰ろう」
そう言って、キラキラした笑顔を私に向ける。
そう見えるのは、私がどんどんジュストさんのことを好きになっているからかも。
「リル、おいで。一緒に泳ごう」
泳ぎが得意だなんて、本当にネコ科なのかな。
ジャガー獣人は水辺を好むって聞いたことがあるから、ジュストさんも同じ系統かもしれない。
知れば知るほど不思議で、もっともっと知りたくなる。
「ジュストさん、深くない?」
「大丈夫。ちゃんと支えるから」
ちょっと水が冷たく感じたけど、ジュストさんの手を握ってそのまま水の中へ。
彼につかまっていれば、絶対大丈夫って、本当に思えた。
「きゃっ……!」
足元を魚がかすめて泳ぐから、驚いてジュストさんにしがみつく。
水着を着ているけど、素肌で触れ合うのはまだ緊張しちゃう。
「魚? 抱き上げようか?」
「……大丈夫! ありがとう、ジュストさん」
だって私達、結婚して三ヶ月経つけど、夫婦らしいことはしていない。
私が恋人として過ごしたいって言ったから、ジュストさんが私が満足するまでつきあうって言ってくれた。
だから今はハグと唇をくっつけるキスまで。
「もう少し深いところまで入ってみる?」
「うん。私、少しは泳げるよ」
「そっか」
ぐいっと手を引っ張られて湖の中心へと向かう。
「待って、待って! 足がつかないと怖い!」
「絶対、離さないから」
ジュストさんが楽しそうに笑って。
ぐいぐい引っ張るから手を繋ぎながらでは泳げなくて、ジュストさんにしがみつくしかない。
「……わざと?」
「なにが? リル、可愛い」
ジュストさんは、私より八つ年上なのに時々とっても少年ぽくて可愛い。
結婚してすぐに敬語はやめてって言われた後、慣れなくて難しいかもって思ったのに、彼を知るうちに自然と話せるようになっていた。
「ジュストさん、大好き」
年上の恋人に可愛いなんて言えないから、大好きって言う。
すると、ジュストさんが照れてもっと可愛い顔をする。
凛々しくて、強くてかっこいい番の夫にとても似合わないはずの言葉。
「リル、愛しているよ。俺の番、俺の恋人。俺の妻……なんて呼ばれるのがいい?」
「全部。どれも大好き。……ジュストさんの全部が好きだから、どう呼ばれても嬉しい……あ、でも、アンタとかオマエはあまり好きじゃないかな?」
そんなふうに呼ぶ日は永遠に来ない、って。
どうしよう。
嬉しくて、なのに胸が苦しい。
「愛しいリル」
ジュストさんが優しく見つめてくるから、私は先へ進む決意をした。
二人の家に戻って、ジュストさんが大量の魚の下処理をする隣で私は夕食の準備。
メインはジュストさんの魚料理だから、私はつけ合わせのサラダとコーンブレッドを作る。
混ぜて焼くだけで簡単なのに、ジュストさんがおいしいって言ってくれるからもう何度も焼いている。
「よーし、こっちは明日店で出す分で、こっちは今夜のメイン。スパイスをたっぷり入れて辛くてパンチのある味にしようかと思ったけど、野菜と一緒に蒸し煮にしてもさっぱりしていいかな。……どっちがいい?」
「コーンブレッドに合わせるなら、パンチのある方かな?」
ジュストさんが考え込んで、ぱぁっと顔を明るくする。
そういうところが可愛く見えて――。
「ひらめいた。うん、スパイシーにしてチーズ使う! いい?」
「うん。楽しみ」
そうして準備した夕食は、とてもおいしくて楽しい時間を過ごした。
一緒に片づけした後は、順番にお風呂に入って、私達は同じ部屋へと向かう。
最初の一ヶ月、私は片づけた部屋で眠っていたけど、ティボー達が現れたあの夜から私達は、ジュストさんの……今では二人の寝室の同じベッドで眠っている。
そういえば、ティボー達はあれから二回街にやって来たけど本当に何も売ってもらえなくて、怒ってうちのお店にやって来た。
でも、たまたま常連さんの仕立て屋さんが食べに来ていて、うちに寄りなさいって連れ去った。
会長さんもニヤニヤして何も言わなかったんだけど、それから姿を見ていない。
支払いが滞ってたって後から聞いたから、有り金で払ったのかな。
その後、村の人がたまたまお店に食べに来た時、子供達の結婚相手を探すと言って三人が出て行ったと教えてもらった。
でも本当のところ、本性がバレて村の人達に嫌われて住みづらくなったんじゃないかって。
一度家を見においで、誰も住まなくなると家は悪くなるし、みんなも私が元気にしてるか心配してると言われたから、今度ジュストさんと確認してみるつもり。
二度と戻らないつもりだったけど、誰もいないなら誰かに貸し出してもいいし、ジュストさんとお休みの時に過ごす家にしてもいいかも。
そんなことを考えていると、ジュストさんがベッドの脇に立ち、灯りを落とす。
いつもなら、その後ジャグリオンの姿になって、毛並みを撫でながら抱きついて眠る。
私はすごく幸せで、ジュストさんから文句を言われたことは一度もない。
とっても幸せな時間なの。
時々しっぽが私の腕や脚に巻きついていて、寝返りが打てなくてびっくりすることはあったけど。
気づいたジュストさんが、ごめんって言ってすりすりしてきて……いつもそんなふう。
だけど、今夜は――。
「ジュストさん、今夜は……そのままの姿でいてもらえる?」
私は勇気を出してそう言った。
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