愛は重くてもろくて、こじれてる〜私の幼馴染はヤンデレらしい

能登原あめ

文字の大きさ
8 / 23
パターン2 (愛しさと憎しみと傲慢俺様系ヤンデレ)

味方はいない


* どちらかと言うとクズヒーローです。繊細な方、感受性の強い方はご注意下さい。






******


「エリン、私はずっと信じてたのに……もう2度と話しかけないで!」

 たった1人の友達、デボラに突然宣言された。
 昨日も帰りまで一緒で、冗談を言って笑っていたのに、どうしてそんなことを言われるのかわからない。

「デボラ……? 私、何か、した?」
「白々しい! あなたにしか話してない秘密をベラベラ話すとか信じられない! 信じてたのに……どうしてみんなが知ってるの? 最低、あんたのこと、一生赦さないから」

「私は何も話してないよ。誰から聞いたの? 私は約束やぶってない」
「嘘つき」

 デボラの冷たい視線に、私は口ごもる。
 本当に言ってないのに。
 彼女が小さい頃に叔父から受けた虐待は私の想像を超えるもので、口に出すのも恐ろしい。

 家族に発覚して、その叔父はこの街から出て行ってもう2度と会っていないそうだけど、時々思い出してつらいんだって聞いた。特に雨の日は……。
 
 私を信じて、勇気を出して話してくれたそのことを、どうして口に出せると思ったの。
 たったひとりの大切な友達だから、私から漏らすなんてありえない。
 絶対に私じゃないのに――。

「ブレーカーの気を引きたかったってわけ?」
「ブレーカー? 私は話してない。本当よ」
「信じられないよ。みんなが言うようにクソ女だわ、あんた。裏で私のこと嘲笑あざわらっていたんだね……私が間違ってた。大っ嫌い!」

 デボラの言葉が何度も私を傷つける。
 どうして?
 なんで?
 私は本当に何も言っていない。
 ここにブレーカーの名前が出てくることも意味がわからない。

「ブレーカーが……知ってたの?」
「あんたが教えたんでしょ。……彼に大丈夫なのかとか、なにかできることはないかとか聞かれたよ。他にも色々……すっごく優しかったけど、ものすごく嫌な気持ちだった。あんたにはわかんないだろうけどね。これ以上話しても無駄。とにかく私の前に立たないで、話しかけないで、一生話すつもりもない。軽蔑する」

 デボラが吐き捨てて私の前から消えた。
 ブレーカーに話したことはないし、どうして知ってるかもわからない。

 それにその噂が広まっているってこと?
 私は学園でデボラ以外と話すことなんてないから、広まるなんておかしい。
 私じゃないのに……。

 昔から、私に関する悪意のある噂を流されることはあった。
 私がやってないことをやったことにされたり、言ってないことを言ったとされたり。
 デボラだけは信じてくれていたのに、私はとうとう1人になってしまった。

「どうして……」

 学園の子達は私にさげすむような視線を向けてくる。それからこそこそと何か話して眉をひそめる。
 誰一人味方のいない中で卒業まで過ごさなくちゃいけないの?
 やめてしまってもいいんじゃない?

 だってもう誕生日が来たから18歳だし、卒業資格はもらえないけど成人している。
 両親ががっかりすることを考えたら、残り3ヶ月の学園生活を耐えたほうがいいのはわかっているけど。

「もう、いや」

 卒業後は女性ものの衣料品店に勤めることが決まっていたけど、学園をやめてしまったらその話も消えてなくなるかもしれない。
 それに、その衣料品店はブレーカーの父親の商会と関係するお店だった。

 卒業後もわずかにブレーカーとのつながりがあることが嬉しかったけど、今は少しも思わない。
 誰も知らないところへ行きたい。

 両親のことは好きだし、私が寂しくなるかも。
 でも……両親は私の悪い噂を本気にしてよそよそしくもある。信じてもらえていない。

 違うって、ちゃんと私を見てって伝えたけど……どうしてだろう。悪いことなんてしてないのに、証拠があるって言う。

 人を使ってモノを盗んだとか、そのモノが私の鞄に入っていたこととか……意味がわからない。
 私の趣味じゃなかったから、デボラだけがおかしいって言ってくれた。

 その時だってデボラしか友達がいなかったし、彼女が悪く言われるのが嫌で、庇わないでいいよってお願いした記憶がある。

 ブレーカーのせいかも、って疑ったことは何度もあった。でも証拠はない。

 昔はあんなに仲良くしてたのに、どうしてこんなに嫌われてしまったんだろう。
 急に身長が伸びて声が低くなった頃から、彼は憎々しげに私を見る。
 
 それでも私は話しかけて、触れようとすると手を払われて……すっかり嫌われたんだと思った。
 なのに今は触れてくるし、その時だけは優しく感じることもあって意味がわからない。

 ブレーカーと幼馴染じゃなければよかった。
 隣同士じゃなかったら、小さい頃の思い出がなければ……。
 今すぐ逃げ出したくてたまらない。

「逃げてもいいのかも」

 どこか遠くへ。
 私がいなくなっても、悲しむ人なんていない。
 誰も私のことなんて必要としていないし、好きじゃない。
 
 このまま、ここにいたらブレーカーに貞操を奪われるかも。
 今だって、キスだけでは物足りなそうにしているし、以前すべて教えるって言っていた。

 そんな日も近いかもしれない。
 だけど、お互いに愛する相手とすべきだと思うし、他の女の子とするために練習相手にされるのは、いや。

 逃げよう。
 どうせ誰も私を必要としないのなら、別の土地に行くのもいいかもしれない。
 いつか訪れる死をここで耐えて待つくらいなら、先が短くなったとしても自分の好きにしたい。
 
 その夜、私は荷物をまとめてこっそり家を抜け出した。






******


 お読みくださりありがとうございます。
 ヒロインを孤立させて追いつめ、依存させようとするヤンデレです。
感想 32

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。 婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。 しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。 儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで—— 「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」 「……そんなことにはならない」 また始まった二人の世界。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?