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パターン2 (愛しさと憎しみと傲慢俺様系ヤンデレ)
味方はいない
* どちらかと言うとクズヒーローです。繊細な方、感受性の強い方はご注意下さい。
******
「エリン、私はずっと信じてたのに……もう2度と話しかけないで!」
たった1人の友達、デボラに突然宣言された。
昨日も帰りまで一緒で、冗談を言って笑っていたのに、どうしてそんなことを言われるのかわからない。
「デボラ……? 私、何か、した?」
「白々しい! あなたにしか話してない秘密をベラベラ話すとか信じられない! 信じてたのに……どうしてみんなが知ってるの? 最低、あんたのこと、一生赦さないから」
「私は何も話してないよ。誰から聞いたの? 私は約束やぶってない」
「嘘つき」
デボラの冷たい視線に、私は口ごもる。
本当に言ってないのに。
彼女が小さい頃に叔父から受けた虐待は私の想像を超えるもので、口に出すのも恐ろしい。
家族に発覚して、その叔父はこの街から出て行ってもう2度と会っていないそうだけど、時々思い出してつらいんだって聞いた。特に雨の日は……。
私を信じて、勇気を出して話してくれたそのことを、どうして口に出せると思ったの。
たったひとりの大切な友達だから、私から漏らすなんてありえない。
絶対に私じゃないのに――。
「ブレーカーの気を引きたかったってわけ?」
「ブレーカー? 私は話してない。本当よ」
「信じられないよ。みんなが言うようにクソ女だわ、あんた。裏で私のこと嘲笑っていたんだね……私が間違ってた。大っ嫌い!」
デボラの言葉が何度も私を傷つける。
どうして?
なんで?
私は本当に何も言っていない。
ここにブレーカーの名前が出てくることも意味がわからない。
「ブレーカーが……知ってたの?」
「あんたが教えたんでしょ。……彼に大丈夫なのかとか、なにかできることはないかとか聞かれたよ。他にも色々……すっごく優しかったけど、ものすごく嫌な気持ちだった。あんたにはわかんないだろうけどね。これ以上話しても無駄。とにかく私の前に立たないで、話しかけないで、一生話すつもりもない。軽蔑する」
デボラが吐き捨てて私の前から消えた。
ブレーカーに話したことはないし、どうして知ってるかもわからない。
それにその噂が広まっているってこと?
私は学園でデボラ以外と話すことなんてないから、広まるなんておかしい。
私じゃないのに……。
昔から、私に関する悪意のある噂を流されることはあった。
私がやってないことをやったことにされたり、言ってないことを言ったとされたり。
デボラだけは信じてくれていたのに、私はとうとう1人になってしまった。
「どうして……」
学園の子達は私に蔑むような視線を向けてくる。それからこそこそと何か話して眉をひそめる。
誰一人味方のいない中で卒業まで過ごさなくちゃいけないの?
やめてしまってもいいんじゃない?
だってもう誕生日が来たから18歳だし、卒業資格はもらえないけど成人している。
両親ががっかりすることを考えたら、残り3ヶ月の学園生活を耐えたほうがいいのはわかっているけど。
「もう、いや」
卒業後は女性ものの衣料品店に勤めることが決まっていたけど、学園をやめてしまったらその話も消えてなくなるかもしれない。
それに、その衣料品店はブレーカーの父親の商会と関係するお店だった。
卒業後もわずかにブレーカーとのつながりがあることが嬉しかったけど、今は少しも思わない。
誰も知らないところへ行きたい。
両親のことは好きだし、私が寂しくなるかも。
でも……両親は私の悪い噂を本気にしてよそよそしくもある。信じてもらえていない。
違うって、ちゃんと私を見てって伝えたけど……どうしてだろう。悪いことなんてしてないのに、証拠があるって言う。
人を使ってモノを盗んだとか、そのモノが私の鞄に入っていたこととか……意味がわからない。
私の趣味じゃなかったから、デボラだけがおかしいって言ってくれた。
その時だってデボラしか友達がいなかったし、彼女が悪く言われるのが嫌で、庇わないでいいよってお願いした記憶がある。
ブレーカーのせいかも、って疑ったことは何度もあった。でも証拠はない。
昔はあんなに仲良くしてたのに、どうしてこんなに嫌われてしまったんだろう。
急に身長が伸びて声が低くなった頃から、彼は憎々しげに私を見る。
それでも私は話しかけて、触れようとすると手を払われて……すっかり嫌われたんだと思った。
なのに今は触れてくるし、その時だけは優しく感じることもあって意味がわからない。
ブレーカーと幼馴染じゃなければよかった。
隣同士じゃなかったら、小さい頃の思い出がなければ……。
今すぐ逃げ出したくてたまらない。
「逃げてもいいのかも」
どこか遠くへ。
私がいなくなっても、悲しむ人なんていない。
誰も私のことなんて必要としていないし、好きじゃない。
このまま、ここにいたらブレーカーに貞操を奪われるかも。
今だって、キスだけでは物足りなそうにしているし、以前すべて教えるって言っていた。
そんな日も近いかもしれない。
だけど、お互いに愛する相手とすべきだと思うし、他の女の子とするために練習相手にされるのは、いや。
逃げよう。
どうせ誰も私を必要としないのなら、別の土地に行くのもいいかもしれない。
いつか訪れる死をここで耐えて待つくらいなら、先が短くなったとしても自分の好きにしたい。
その夜、私は荷物をまとめてこっそり家を抜け出した。
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お読みくださりありがとうございます。
ヒロインを孤立させて追いつめ、依存させようとするヤンデレです。
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