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友達と同じ人を好きになったけど、協力してと言われたから恋心を封印した(おまけ) *微?
しおりを挟む* Rはほんのり、回想メインです。
彼は初めてではありません。その辺りが書かれているので、気になる方はご注意ください。
******
シュウヤside
高校に入学して、すぐ彼女に気づいた。
中学の時は同じクラスになったことはなかったけど、彼女は図書委員で貸し出しカウンターに座っているところをよく見かけた。
話してみるとよく笑うし、小動物みたいに小さくてよく動くところが可愛いし、趣味も合う。
リカって呼んだ時のちょっとくすぐったそうな顔が好きだって思った。
春休みから野球部に通っていたから入学後もそれほど大変ということもなかったし、週末に練習や試合がない時はみんなと遊びに行ったり勉強したりして、高校生活は充実して楽しかった。
だけどあの子が近くにいると、リカが遠慮する。
クリパの前にバッタリ会った、リカの友達。
プレゼントを選ぶ間ずっとそばにいられて困った。
結局俺が選んだものは、野球部のキャッチャーをしてる友人に当たり、彼女の選んだものは、俺の別の友達の手に渡った。
運がないと思ったけれど。
『……お前のやつ、リカに渡しといた』
『リカのプレゼント、おまえにやる』
彼らは俺がムッとすることをわかっていて、『リカ』と呼ぶけれど、俺の気持ちは彼らにわかっていて、最終的に友達に恵まれたクリパになった。
俺が当たったプレゼントはプロテインだったから、かわりに彼らに半分ずつ渡した。
勉強会の時も、みんなでご飯食べる時も俺の隣にリカの友達が座ることが増えた。
リカと話し足りなくて、裏アカを教えたのに表でしか絡んでこない。
リカにとって、俺はただの友達で。
冬休みが終わると、体調を崩していた野球部のコーチが替わり、練習メニューが増えてきつくなった。
くたくたになって布団に入る日々。
みんながバレンタインに浮かれていたその日、あの子から告白されて野球を理由に断った。
リカからもらったチョコは、みんなに配られたものと一緒で、ただの友達だと宣言された気分だったし、落ち込んで家に帰ると母親が高級チョコあるわよって肩を叩いてきた。
母以外にチョコがもらえなくて落ち込んでいたわけじゃないんだけど。
野球に集中する俺に、イベント前になるとあの子を含め告白してくる子がいたけれど、好きな子以外とつき合いたくない。
告白してリカと気まずくなるくらいなら友達のままでいいと自分に言い聞かせ、俺達はそのまま卒業した。
初体験を武勇伝のように語る奴が増えていく中、俺はそういう時、口を閉ざしていた。
大学に慣れた頃、野球部の二つ年上のマネージャーが悪酔いした。
彼氏と半同棲しているとかで、過去に送り届けた奴が絡まれて大変な目に遭ったというから、ジャンケンで負けた俺が家まで送ることになった。
彼女は、彼氏と別れたばかりだと玄関前で泣き出し、そのまま部屋に引っ張り込まれた。
手荒なこともできず、お互いに好きという気持ちがあるわけでもなく、ただ流された。
それは非常に濃く長い夜で、翌朝お互いに忘れようって気まずく別れた。
俺の経験はその一度きり。
リカと付き合うことになった翌日、早朝に幸せな気分で目覚めた。
自分自身が生まれ変わったような、満たされた気持ち。ものすごい幸福感。
俺の身体はもう一度リカと繋がりたかったけれど、彼女に優しくしたい気持ちの方が強くて、ちょうど目覚めた彼女と起きることにした。
恥ずかしがる彼女が落ち着くまで、ずっと抱きしめていようとしたら、困ったようにシュウヤって呼ばれて渋々腕を緩めて身支度を整えた。
コンビニで朝ごはんを買った後、手をつないで歩く。
昨日より歩くのが遅いのは、もしかして痛いのを我慢してる?
彼女は昨日まで処女だったから。
「抱き上げて歩きてぇ……」
「…………はい⁉︎ 絶対やめてね!」
俺を仰ぎ見る顔が赤い。
可愛い。
「俺がおんぶして走ったら、トレーニングしてるように見える?」
「……絶対、見えない! 多分、すごく目立つと思う……大丈夫だから。もうすぐ、着くから」
可愛い。
本当は今すぐ抱きしめたい。
部屋に入ったら、すぐ抱っこする。
「リカの匂いがする」
玄関に入るなり、俺は呟いた。
「……え? やだ! なんか恥ずかしいから、嗅がないで」
「リカっぽい。いい匂いだよ」
「もう…………部屋、狭いよ? シュウヤが入ったらいっぱいかも」
シュウヤが入ったらいっぱいかも⁉︎
昨夜のリカを思い出す。
小さな彼女の身体を拓いてギチギチにおさまった俺自身。
きつくて俺でいっぱいで、痛みに震えながらしがみついてきた。
初めての彼女。
それから俺の下で喘いで……。
やべぇ。半勃ち。
監督の顔を思い浮かべてなんとか耐える。
リカが言ったのはそういう意味じゃないってわかっているけど。
「どうぞ……きゃっ‼︎」
靴を脱いだ後、彼女を抱き上げた。
「お邪魔します……部屋に入ったら絶対抱っこするって決めてた」
「なに、それ……」
「リカに触りたいし、歩かせたくなかったから……痛くない?」
真っ赤になってうろたえる様子をながめる。
痛いって答えたら俺が気にするだろうと思って、痛くないと答えたら俺に襲われるんじゃないかって葛藤してるのかも?
「……少し、違和感がある、かな…。まだシュウヤが入ってるみたいで……」
「……リカの天然煽りがひどい」
「なに、それ……?」
「リカが可愛いすぎて困るってこと。……俺以外の男の前で、そんなに素直な態度とって欲しくないな」
「……意外と独占欲、強い?」
「うん、そうかも。……リカ限定」
確かにリカにぴったりの小さな部屋。
でもベッドがあれば十分。
「座っていい?」
「おん……⁉︎」
「なに、それ……緊張してる?」
リカがコクリとうなずく。
「初めて男の人、入れたから……しかも、好きな人だし……」
初めて男の人、挿れたから。
リカの言葉が全部、煽りに聞こえて困る。
俺、中学生かよ。
ギシリと音を立ててベッドに座り、リカを横座りさせた。
今、離したくないって思っている。
「俺、浮かれすぎてる?」
「……多分? でも、私も、浮かれてる。……今離れたくないって思ってるよ。シュウヤ、好き」
可愛すぎだろ。
思わず抱きしめたままベッドに倒れ込んだ。
「わっ‼︎」
戸惑うリカの乱れた髪を撫でる。
「キスしていい?」
「…………今日は訊くの?」
昨日は勝手にしたのにって呟くのが可愛い。
「キス、したい」
「……いいよ」
「リカ、好きだ」
彼女の柔らかい唇を何度も啄む。
「シュウ、ヤっ……朝ごはん……」
「もうちょっと、……キスの後で」
ぎゅってしがみつく柔らかな身体を抱きしめる。
今日は慰めるだけ。
まだ、俺が入っているみたいに感じてるリカに無理はさせたくない。
しない。
まだ、しない。
「…………しないの?」
「今も俺が入ってるんじゃないの?」
ちょっといじわるだったかな。
「そう、だけど……」
潤んだ瞳で見つめられるとたまらない。
「したいけど、しない……今は。……今から三年分甘やかすって決めたから」
「三年分……」
戸惑う彼女の早い鼓動を身体に感じながらもう一度キスした。
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