ヒロインの要請で悪役令嬢を演じます?

能登原あめ

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番外編

第五王女が悪役令嬢ってありえる? 2

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 おじ様が思案顔で立ち上がった。
 そこまでして行きたいなら父と相談してくれると言う。

 あともう一押しが欲しい。
 せっかくだから、その場に留まったライアンに相談する。
 彼と話すのは楽しいし、一緒にいて居心地もいいから。

 どうせならライアンに初めての相手をお願いできないかな。
 やっぱりだめ……その後恥ずかしくて顔が合わせられなくなる。

「ライアンは独身なの? 私の夫のふりをしてもらえない?」
「独身ですが、フリは嫌です」

 キッパリ言われると案外ショックだ。
 初めての相手とか、到底無理な話。
 
「島国へ行ったらここに戻ってくることは一生ないかもしれません。それでも行きたいのですか?」

「戻るつもりは元々ないわ。忍び込んででも乗りたいと思う」
「そもそも、どうしてこの国を出たいのですか?」

 私のバッドエンドを回避したいから、とは言いにくい。

「……この国は父や兄がしっかりと守って行くと思うから、私は他の国へ行きたい。この国に私の居場所はないと思うの」

 それっぽいことが言えた、かな……?

「そうですか……一つ、方法がありますが」
「どんな? 教えてくれる?」
「あなたが私と結婚することです」

 私と結婚?
 ここにきて結婚の選択肢はなかった。

「本気で言ってるの? 私、こんなよ?」
「私はあなたのその柔軟な発想を好ましく思います。窮屈に感じていたあの国も、あなたがいたら楽しめそうです」
「そんなに住みにくいの?」

 そうだとしたら、ちょっと考え直したい。

「いえ、みんな真面目な気質で勤勉なので潤沢な国ですし、住みやすいです。国王が生真面目で頑固なのを窮屈に感じましたが、老齢なので数年で代替わりしますし、国の雰囲気も変わるでしょうね」

 なんだか日本人みたい。 
 ライアンの髪も黒髪だし、ますます親近感しかわかない。

「……ライアンの家は私が嫁いでも大丈夫なの?」
「はい。あなたさえ良ければ、ぜひ」

 にっこり笑った顔が優しかったから、私は決めた。

「お願いします、私を早急にもらって……父に反対される前に」

 やることをやってしまえば、最悪結婚できなくても傷モノになるから、私にとって悪いことはない、はず。

「それはつまり……」

 彼が赤くなって口元を押さえる。
 勢いのあるうちに私は言った。

「今夜、会えない? その……」
「あなたの部屋に迎えに行きます。……あなたの気が変わらなければ窓辺に灯りを灯しておいて下さい。……捕まえたら……離しませんから」
「……はい、待っているね」
 
 手の甲に口づけされて、きゅんとする。
 なにこれ、私たち恋人同士だったっけ?
 まるで駆け落ちの約束みたい。

 
 
 





 部屋に戻った後は、忙しかった。
 今夜着る服選び……脱ぎ着しやすくエロいもの?
 肌や髪の手入れは念入りに。
 早めの時間に部屋で夕食を取り、侍女を下がらせた。
 いったん寝間着を着たけれど、シンプルなドレスに着替えて待つ。
 準備万端。
 だけどそわそわして落ち着かない。
 窓辺に灯したろうそくを何度も見やる。

 よく考えたら早い時間は目立つから来ないよね。
 室内の灯りを落とし、窓辺で読書することにした。
 椅子に腰かけて本を開く。
 内容が頭に入ってこない。

 馬鹿なことしてる?
 ライアンと勢いでそういう事をしようとしてることが。
 ヒロインの狙いが、対処できる範囲の騎士団長令息か異母兄か弟かもしれないのに?
 
 今は全く対処できていない隣国の第二王子のルートが恐ろしい。
 彼女が彼を選んだら?
 だけど、ヒロインが攻略しない可能性だってある……ここに来て迷い出した。

 国内の攻略対象とも結婚したくない。
 あいつら、みんな巨根の絶倫設定だったと思うから。

「要は棒でつついて穴を開けて貰えばいいのよね」

 日本じゃ、みんな気軽にデートのついでにスポーツ感覚でえっちしてたし……多分。
 多分ね? 知らないけど。
 これはたいしたことじゃない。
 そう自分に言い聞かせながら、怖気づいていることに気づいた。

「やっぱり、ちょっと怖いかも」

 痛いだろうし。
 とはいえ、隣国の王子のルートでは国外追放っていうか、隣国に連れ去られて凌辱、調教、奴隷落ちだったかな……。
 それなら。

「ライアンのほうがいいよね……」

 そう呟いたところで耳元に笑い声が響いた。
 いつのまにか私の後ろにライアンが立っていて。
 冷たい風がすーっと入ってくる。
 部屋の隅の窓が開いたことに全く気づかなかった。

「……姫様、お迎えに参りました」
「……どこから、聞いてたの?」
「最後のところだけです」

 ライアンが持っていたマントで私を包んだ。

「このまま連れて行きますよ? いいですか?」
「はい、お願いします」

 私は抱き抱えられて窓から脱出した。


 
 人目につかないよう中庭を突っ切り、用意されていた馬車に乗り込む。

「王城の中では目立ちますので、他の場所を用意させていただきました。……もう逃せませんけど、後悔してませんか?」
「はい、全く……ありがとう」

 彼も本気なんだ。
 向かい合って座っているけど、ずっとみつめてくるから、ドキドキする。

「あんまりみつめられると恥ずかしい……」
「……そんなに見つめていましたか?」

 みつめてたよ!
 
「ライアンもお嫁さんを探していたの?」
「……ええ、まぁ、そうですね。国ではせっつかれていますが、自分で決めたかったので」

「じゃあ、ライアンも反対される可能性があるのね……本当にいいの? 私みたいな名ばかりの王女で」
「今夜、あなたが私のものになってくれたら、問題ないでしょう」

 そんな話をしているうちに見知らぬ邸宅に連れてこられた。
 
「ここ?」
「はい、どうぞ」

 明かりもついているし暖かい雰囲気があるから、どこかに人はいるのだろうけど顔を合わせないように配慮してくれているらしい。
 王城に負けないくらい立派な装飾が施された室内を、驚いた様子もなく迷わず歩くライアンはやっぱり身分が高いんだなぁと、実感する。
 もし商人でもついて行ったけどね。
 
 考えている間に寝室に案内された。
 扉が閉まり、鍵のかかる音に心臓が跳ねる。

「姫様、覚悟はよろしいですか?」


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