ヒロインの要請で悪役令嬢を演じます?

能登原あめ

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番外編

第五王女が悪役令嬢ってありえる? 1

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 私の名前はカロリーナ十歳。
 この国の第五王女で、側妃の母と王宮の片隅で暮らしている。
 つい最近、歳の離れた弟が産まれた。

 これまで母が好き過ぎて毎晩一緒じゃないと眠れない……という設定で母と国王の閨を邪魔してきた。
 とりあえず、弟は予定より五年遅く産まれたから、弟についてはあまり警戒しなくてもいいかもしれない。

 私の行く末は身分剥奪、国外追放。
 さらに数々の苦難が待っている。
 未来が見えるわけじゃなくて、私には産まれた時から前世の記憶がある。
 そしてこの世界は、私が制作に関わった乙女ゲームの世界とそっくりだということ。

 異世界でゲームや小説の世界に転移や転生する話はよくあるけれど、よりによって自分が関わったゲームとか、ありえない。
 なんの罰ゲームなの、これ。
 しかも私は悪役令嬢。

 王女だから悪役王女にするか会議に上がったけど、身分の高い人の娘って意味もあるし、悪役令嬢のほうが一般的だし言いやすいよねって決まった。
 
 私の担当したシナリオルートは騎士団長令息ワイアット。
 ちょっぴり脳筋気味の令息はフラグ管理が簡単で一番落としやすくて王道なテンプレ展開だけど、エンディング後はめくるめくエロを満喫できるルートとなっている。
 これは対処できるだろう。

 問題は王太子ルート、国外追放って言いながら国内の高級娼館に身を堕とされ、ギラギラした中年のぶよんぶよんのおっちゃん王族に変態プレイされるという……私にとっては地獄。
 当時、ライターさんにいいぞもっとやれって煽った自分を殴りたい。

 王太子異母兄とは程よい距離感を取りつつ、婚活を応援することにした。
 ゲーム開始時の彼は二十二歳なのだけど、婚約者がいないのはほぼ私が原因で女嫌いになっているから。

 このルートでは私が禁断の恋でヒロインとの間を邪魔するからね。
 五つ年上の異母兄に夜這いまでして迫る異母妹、そりゃ怖かろう。

 結末を知ってる私が好きになるわけがない。

 隣国の王子に関しては……ただの王女には何もできないけれど、近隣諸国の情勢を仕入れるために王弟のおじ様に懐いて、諸国漫遊記を聞いたものだ。

 たまにうっかりぽろっと有益情報くれたし、今後住むにはどこがいいか参考になった。
 とにかくゲームが始まるまでに身の振り方を考えないと。
 








 十五歳になった私は、控えめに目立たぬよう異母兄とも程よい距離感で過ごした。
 彼は、女嫌いという話もなく南国の公爵令嬢に一目惚れして、あっさり婚約が決まった。

 なかなか素敵な女性で、はた目にも仲睦まじく見えたから私はお祝いとしてこっそり催淫効果のついたチョコレートを彼にプレゼントした。

 催淫効果って言ったって、ちょっと強めのお酒を入れた偽薬なんだけど、一年ほど前から小遣い稼ぎのためにお気に入りのショコラティエと開発して裏で販売している。
 これが口コミで売れること売れること。 

 ちゃんと、効果は個人差がありますって、注意はしているよ?
 でも、チョコレートだし、R18の世界だし?
 おかげさまで貯金が増えてきた。

 異母兄たちにもチョコレート効果があったのかはわからないけど、一年後に二人はめでたく盛大な結婚式を挙げた。
 ゲーム開始まであと一年に迫っていた。
 

 そして、この五年の間に次々に結婚していった姉たち。
 第一王女は東国の国王の元へ嫁いだ。
 第二王女は西国の王太子妃に。
 第三王女は南国の王子妃で。
 私と同い年の第四王女が北国の王子妃になった。

 そして……私に縁談が来ないまま十八歳となって、国内の有力貴族との話が浮上したけれど、中には攻略対象の名前が上がったからなんとか逃れる方法を考える。
 貴族は処女性が求められるから、誰かと経験しちゃおうかと思うくらいに追い詰められた。

 そしたら、高位の貴族じゃなくてもっと中位の……武勲を立てた騎士に褒美の一つとして娶られ……だめだ、ここ最近平和だったわ。
 さすがに後妻ってことはないと思う。

 それか、おじ様に泣きついて、諸国漫遊について行ってゲーム期間をやり過ごそうか。
 こっちの結婚適齢期が過ぎても私は気にしない。
 そうと決まれば、さっそくおじ様との面会を取り付けた。







「……連れて行けない? 次は島国だから船旅で危険? 私はかまいませんのに……、新しい場所はわくわくしますし、ぜひご一緒したいです。……お気持ちは変わりませんの? 国王の許しですか……」

 おじ様は父の許可が出ないとダメだという。
 父かぁ、無理だろうなぁ。
 それなら、誰かとやっちゃうしかないな。
 もしかしたら運良く、おじさまが憐んで連れてってくれるかもしれない……。
 
「恐れながら、姫様は島国に興味がおありなのですか?」

 うなだれていたら、おじ様の後ろに控えていたライアンが口を挟んだ。
 彼はおじ様が諸國漫遊中に出会った青年で、いろいろな経験を積むために秘書のような仕事をしているらしい。

 彼は見目もいいし、おじ様が重用しているところをみると、それなりの身分がある、どこぞの貴族なのだと思う。

「島国って、水が豊富でしょう? 生きていく上で水は大切ですからね。行ってみたいです」
「周りに国がない分閉鎖的ですよ?」
「それはそうですよね、まぁ、わかります」

 日本を思い浮かべながら答える。
 鎖国の時代とか。

「かわりに伝統が守られるでしょうから、それは素晴らしいことだと思いますけど」

 伝統工芸とか思い浮かべちゃう。

「なるほど……そういう考え方もありますね」

 彼はあの島国出身なんだなぁ、でも訛りがないなぁと思いつつ。

「ライアンも私が船に乗るのは反対?」
「……独身の女性は難しいと思いますよ。船というのは、男性が多いので」
「それなら、誰かに夫のフリをしてもらえないかしら?」

 
 

 
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