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夫婦編
5 下町散策
しおりを挟むダンスの練習の後の、激しい運動で起き上がることができなかった私は、宿屋でごろごろ過ごしていた。
その間みんなが査察に出かけていて、残ったジェリーが私の世話を甲斐甲斐しくしてくれる。
「……ジェリー、私も外出たい」
眉毛を下げた彼がちょっと悲しそうに謝る。
「すまない。……明日動けるようなら好きなところに連れて行くぞ?」
「好きなところ……? そもそもここはどんな特色があるの?」
「そうだな……のんびりおっとりした気質の人々で……雨が降ったら学校や仕事を休むほどの人達だと聞く。店も開かない。朝は早く夜には真っ暗になるから、朝市が賑わっている。ほかには、きれいな砂浜と海がある。泳ぎたいか?」
「…………泳ぐのもいいけど、朝市! 朝市に行ってみたい‼︎」
「うむ、明日は夜明けと共に動くぞ? オレが抱っこしてもいい。うむ、そうしよう!」
新鮮な魚や野菜。
肉に牛乳に卵まであるけれど!
朝市で漂うおいしそうな肉の匂い‼︎
「ジェリー! 朝ごはんにしよう?」
寝ぼけた私を抱えて連れ出したジェリーに、食堂のようなところを指差す。
「うむ。いいだろう」
離れたところにピートをはじめ護衛の二人もいる。
とりあえず、豚の丸焼きっぽい肉とヤシの実ジュースを手に入れて食べる。
ヤシの実ジュース……憧れていたけど、うん、ぬるいからかな?
想像と違った。
まぁ、いいけど。
「ジェリー、肉はおいしいね。あとで冷た~いのが飲みたいな」
「うむ、いいだろう。なんでも食べるがよい」
お粥っぽいのとか、揚げたポテトとか、焼き魚とか、ライスヌードルっぽいのとか端から食べた後で、チェーっぽいココナツ風味のデザートを食べた。
「あっちにかき氷もある! ジェリー、ここ楽しい! 連れてきてくれてありがとう。……大好き‼︎」
「うむ。クミンが喜んでくれて嬉しい。……少しは機嫌が直ったか?」
「うん! ありがとう……それにそこまで怒ってないよ?」
外に出られなくて拗ねてたけど。
「うむ……それでも、オレはいつでもクミンにはご機嫌でいてほしいのだ」
「……ジェリーは優しすぎる! こんなの、私、つけ上がっちゃうからっ」
「いいぞ。たくさん甘やかしたい。オレだけの最愛の妻だから」
「あー、どうしよ。ジェリーに骨抜きにされる~‼︎」
「ぜひ、そうなってほしいのだ」
腹一杯なのに、ぎゅうっと抱きしめられて喉から変な音が出た。
「すまんっ、クミン。……このまま戻るのももったいないから浜辺のほうへ行ってみようか」
「うん、その前にかき氷買って?」
ジェリーの膝に抱っこされたまま、マンゴーみたいなソースがたっぷりかかった甘いかき氷を一口ずつ交互に食べる。
南の国には昔々に火山が噴火した後にできたという氷穴があって、そこから氷を運んでくるらしい。
そういえば、日本一高い山の麓にも氷穴があったなぁ。
年中涼しいの。
「冷たくておいしい。はい、どうぞ」
二人で食べながら、なぜかキスを挟む。
「んっ♡」
唇も舌も、冷たくてちょっと不思議。
「ジェリー? どうしてキスするの?」
「そんなの、クミンがかわいすぎるのだ。いやか?」
「ううん、冷たくて気持ちいい♡ んっ♡」
かき氷がなくなる頃には、ここがどこだか忘れそうになっていて。
「あー、あー、ごほん、ごほん。…………ジェリー様、クミン様、部屋に戻りましょうか」
「うむ……少し落ち着いたら戻る」
遠慮がちにピートの声が聞こえて、ジュリーの答えにおちんちん様に目がいく。
まぁ、しかたないよね。
すーはー深呼吸しているから、私も気をそらすことを言わないとかな!
「ジェリー、部屋に戻ったら、お茶にしましょうか!」
今後ろで誰かが咳払いした?
ジュリーが眉毛を下げて、食べ足りなかったのか、と言うから何か間違ったらしい。
いや、あってた!
おちんちん様の存在感がなくなってるし!
なぜかジェリーが落ち込んでるように見えなくもないけど。
「……じゃあ、戻るか」
ジェリー、続きを期待してたの?
まぁ、いいけど。
部屋に戻ってもしゅんとしてるジェリー。
ソファに下された私に、ピートがなんか目配せしてくる。
ん?
お茶はあとで?
先に向こうへ行け?
どこ?
あー。
寝室ね、オケ。
「ジェリー? 来て」
「…………うむ。どうした、クミン」
「抱っこして?」
「うむ」
ぎゅーって、めいっぱい抱きしめてくれる。
これって、やっぱり我慢してくれてるのかな。
「ジェリー、あっち行こ?」
「……しかし」
ぴたりと固まって私の顔をまじまじと見る。
どういうつもりか判断に迷ってるのかな。
一昨日のジェリー激しかったし、長かったし、私は起き上がれなかったし。
「ジェリー、さっきの続き、しよ?」
「…………いいのか?」
あ、なんか鼻息荒くなった。
「うん、一度だけね。一度。一度だけなら……いいよ」
「クミン‼︎ 好きだっ!」
首がガクってなるくらいの勢いでベッドに運ばれて倒れ込んだ。
「無理はさせない。丁寧に、優しく抱くから」
「ええっと……?」
それって長時間にならないかな?
「心配しなくていい。……いつも、気が急いてしまうが……今回は反省しているのだ。うむ」
「あの、あのっ、……私、早くジェリーのが、欲しいな」
「……しかし」
「だって、その、早く……ジェリーを感じたい」
長時間は無理だし。
ある意味さっきの海辺で前戯してるし。
「クミン……」
眉毛を下げた彼が困った顔をしてみつめてくる。
ここは、あれを言えばいいのかな?
前に失敗してるけど……。
恥ずかしがるな、私!
今回は多分大丈夫、なはず!
「ジェリーのおちんちん様を私にちょうだい?」
「……ぐ……愛してるッ、クミン!」
ほら!
むき出しのおちんちん様が私の脚の間を突いてくる。
「好き……あ、愛してる……ジェリー」
下着を引き抜かれてお互いがぬちゅりと触れ合う。
そのままずぶずぶと私の中へおさまって、もどかしいくらいゆっくりと動く。
こうゆうのも悪くない。
「ジェリー♡ いいっ♡♡ 気持ち、いいよぉ♡ はぁ♡あぁ♡ああぁ♡♡」
「クミンっ、そんなに締めると……っ‼︎」
奥にあっついのを感じて私もつられてイった。
「……クミンも、欲しかったのだな」
言葉にされると恥ずかしい!
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