上 下
11 / 35

episode 東×海堂

しおりを挟む




「本当に猫飼っているんですね」

 海堂の部屋に通された東はカーテンの影からこちらを窺う灰色の猫をちらりと見た。
 
「……人見知りだから、そのうち出てくるだろう。……こっちにおいで」
「……なんだか……言い方が」

 猫と一緒みたいですけど。
 
「ん? 会社ではほぼ見かけないし、話かけられなかったから、休みくらい甘えたいんだ」

 そう言われて近づけばふんわり包み込むように抱きしめられる。
 
「甘くて、美味しそうな香りがする」
「……実は、ご馳走してくださると言うので、チョコケーキ作ってきたんです。これだけは上手に作れるので」

 本当にこれだけなんだけど、と思って海堂を見上げた。
 満面の笑みでみつめてくる。

「甘いのは君自身だよ。ケーキ、嬉しいな。デザートはアイスだから」
「一緒に食べても良さそうですね」

 初めて夜を共にしたのが月曜の夜で、火曜の早朝家に送ってもらい、水木金と食事をして、迎えた初めての土曜日。
 つき合い出してまだ一週間も経っていない。
 学生でもないのに、こんなに会うことってある?
 一緒にいると落ち着くし、会話が途切れても気にならないから居心地がいい。
 仕事に影響出るのは本当に嫌だから、会社では挨拶程度のおつき合いでよかったなって思う。
 
「朝ごはんはしっかり食べてきた?」
「はい。実家なのでしっかり和食を食べました」
「……今夜泊まるのは大丈夫なの? 挨拶しとこうか?」
「いえっ、母と姉と暮らしていますが、社会人だから自己責任って言われてます。姉が奔放だったから母も慣れたのかもしれません」

 大丈夫ですよ、と続けて、今にも電話をかけそうな海堂を止める。
 
「……そう。近々ご挨拶に伺おう。お姉さんも似てるなら美人だろうね」
「みんな、母似ですね……姉の方がキレイだし海堂さんと年が近いですよ」
「俺はお前がいい」

 さっきは君だったのに、と視線を上げると口づけが落とされる。
 優しかったのは最初のキスだけで、その後は呼吸を奪われるほど激しく口内を蹂躙される。

「さっそく俺を捨てようとするなよ。……俺にはお前だけだよ」

 こういう時温度差を感じる。
 執着心も独占欲も嬉しいのは本当。
 海堂以外に触れられるのは嫌と思うくらいには気持ちはあるけど、同じ熱量を返せるわけでもない。
 複雑な胸の内を隠して今精一杯の愛情で抱きついた。

「普段は、お前って、使うんですか?……呼ばれるの、嫌じゃない、です……」

 海堂さん、限定ですよと続けた。
 縦に抱かれて奥の部屋へ進む。
 まだ午前十時を回ったところだけど、反対する気持ちにもならなかった。

「カーテン……閉めてくださいね?」
「見られるの恥ずかしい?」

 前回も明るいの嫌がったねと言われて頷く。
 全部綺麗なのに、とキスの合間に言うから、コンプレックスがあるんですよと息を切らしながら答える。
 お互いに脱がし合いながらも時々唇を合わせる。

「キス……好きだね……」
「んっ……海堂さんの……キス、好き、……です…」

 唇が腫れそう。
 週末だしそれでもいいかな。
 海堂の大きな温かい手が身体を撫でる。

 「気持ち、いい……」

 ごつごつと節の目立つ指が皮膚をなぞる感覚に心拍数が上がる。
 二度目のセックス。
 と言うと語弊があるかも。前回の回数なんてわからない。
 五日ぶりのセックス。
 思い出して期待値も上がる。

「……ようやく触れられる……」

 さっきから触れてますよね?
 でも、気持ちもわからなくはない。

「もっと、触れてください」

 海堂の指が秘裂を撫でて、潤んだそこにぐいっと三本の指を挿入してきた。

「んんっ!……」

 いきなりの圧迫感に身体が震える。
 それでも身体は馴染むよう内壁が動く。

「キスだけでも感じやすい? それとも期待してくれた?」

 遠慮なく指を動かしながら続ける。

「少し強引なくらいが好き?」

 答えないでいると、海堂がふっ、と笑ってそっとベッドに押し倒した。
 もう一本指を増やされて、くちゅくちゅと水音が大きく響く。
 耳からも犯されて頭がおかしくなりそう。

「……っ……ペースが……早い、です……っ」
「早く繋がりたくてたまらないんだ」

 笑った顔がセクシーだ。
 見惚れていると親指で陰核を撫でられて腰が跳ねた。

「見つめられるのも嬉しいけど、クールビューティが俺の前でだけ乱れる姿がみたい」

 クールビューティってどうなの、とは思うけど海堂が綺麗と思ってくれているなら、まあ、いいのかなと考えごとができたのはここまでで。
 軽く唇を合わせた後、海堂は身を起こして太ももの間に挟まると、四本の指を動かしながら陰核に舌を伸ばした。
 一気に心拍数が上がる。

「やっ、待っ、て……っ….あぁーっ……」

 頭が真っ白になってあっけなくイってしまう。
 海堂が指を曲げてざらっとした内壁をゆっくりこすった。

「あああーーっ……」

 やばい。
 せっかく治った喉がこの週明けに笑えないことになっているかも。
 浅く息を吐いて海堂を睨んだ。
 
「その顔……煽るなよ」

 ずるりと指を抜かれて、びくんと反応してしまう。
 かわいいと言われたけど、いきなり四本もの指が抜かれたら誰だってそうなると思う。
 海堂は濡れた指をシーツで拭ってから避妊具をつけ東の身体を抱き起こした。
 代わりに海堂が仰向けに寝転んで、東を跨がらせて言った。

「……挿れて」

 目の前の剛直に一瞬気持ちが挫けそうになる。
 
「大きい……キスしてもいいですか?」

 自分からとなるとそれなりに準備が必要。
 これが入ったならできるはず、と海堂の返事を聞く前に、両手でしっかり包んで避妊具越しに唇を寄せる。
 サイズ的にも外国製なのかわずかなゴム臭と香料がついている。
 チェリー味?
 やだ、似合わなくておかしい。
 そう思いながら竿の方まで音を立ててキスした。
 大きく口を開けて先端から飲み込めるだけ口に含んでみたけど半分もいかない。
 歯も当たりそうになるし。
 うん、これは大変かも。

「……っ……!」

 眉間にしわを寄せ悶える海堂をみて、先端に唾液を垂らして……これが目的だったのだけど、身体を移動して秘裂にこすりつける。
 引き延ばすとろくなことにならないと本能が言う。
 早く、早くと。
 蜜口に当て息を吐きながら丸くて弾力のある先端を飲み込む。

「……海堂、さん……も、少し……待って、ください、ね……」

 腰を上げ下げしながら少しずつ受け入れる。
 
 限界まで蜜口が広げられる中、うっかり途中で力を入れると快感を拾ってしまって身悶える。
 じっと見つめる海堂の顔がどんどん強張っていった。

「この……間、も……全部、入ったん、ですか……?」
「入った、よ……」

 内臓が押し上げられ、口から飛び出すんじゃないかと思いながらもなんとかすべて受け入れた。

「はぁ、はぁ、はぁ……かい、どう、さん……お腹に……」

 傍目にわかるくらい下腹部に存在感がある。
 下腹に大きな手が添えられた。
 形を確かめるように撫でる。
 もどかしくて下から突き上げたかっただろうにずっと我慢して待っていてくれた。
 そんな海堂の様子に、不思議と胸の中が温かい気持ちになる。
 最中にこんな気持ちになったこと、いままでないかも。

「動いても……いい、ですよ……?」

 海堂は無言で腰を掴み、下から馴染ませるようにぐりぐりと押しつける。
 強い刺激にぐったりと身体を預けるとぎゅっと抱きしめられた。
 さっきからむずむずしていたものの正体がわかった。
 今までにないくらい大事にされているということ。

「好きだ……もう、絶対、離さない……」
「ちょっと……重い、です……」
「お前の分も、俺が愛すから……大丈夫だ」
「ふふ……いいですね……私が、追い、つくまで、しばらく……そうで、いて、ください……」

 舌を絡める熱いキスをして、東は海堂の首に腕を回す。
 上も下もつながって安心感を感じるなんて、初めて。
 海堂が上半身を起こすと、にやっと笑って東が仰向けに倒れた。
 
「許可が出たから動くぞ」

 抽挿されると内臓が引っ張られるような気さえするのに、あますところなくえぐられるから知らなかった場所にも身体が反応する。
 
「やっ、そこ……おかし、く、なるっ」
「ここ? かわいい。もっと、何も考えられなく、なるまで……突いてやる」
「やだっ、よすぎ、るの!」

 身をよじって快楽から逃れようとすると脚を押さえ込まれてがつがつ奥を突かれる。
 
「楽しいな……やりたいことがありすぎて困る」

 心底楽しそうに笑うから、嬌声とともに涙がこぼれた。
 口の中で鬼畜、と呟く。

「快楽も過ぎれば苦しいか?」

 そうですね。
 いえ、そうではなくて、つきあい切れる気がしません。

「いつでも優先するのはお前だけだ。愛してる」

 キスをされるとさらに蕩けて、なんとかやっていけるかな、と丸め込まれる。
 この人のキスは本当に癖になる。
 そのままがんがん突かれて絶頂を迎えた。

「くっ……」

 引き込もうとする内壁の動きに、海堂が白濁を吐き出した。
 






 圧力鍋にはビーフシチューがあって、冷蔵庫にはミートローフに冷製オムレツ、ラタトゥイユやマリネなど色々仕込んであった。
 週末二人でゆっくりするために海堂が用意したとのこと。
 連日夕食を共にしていたから好みも把握していて胃袋も掴む勢いだ。
 お腹は空いていたけど、食欲の落ちていた東は海堂の腿の上でラタトゥイユとオムレツを食べさせてもらっていた。
 気力も体力も無くなって羞恥心まで湧いてこない。
 海堂はにこにこしていて満足そう。

「……おいしいです」
「このくらいいつでも作る。早く一緒に暮らそう。毎日抱きしめて眠りたい」
「……そしたら、こんなにくたくたにならないで済みますか?」

 食い気味に、もちろん、と即答される。
 目が輝いてるから頷いたら今週末にでも実行されてしまいそう。
 それに、抱かれてしまえば休めると思えない……。
 
「……もう少し、待って下さいね」
「わかった、なるべく毎日会おう」

 そう言われてかすれた声で笑った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貧乏子爵令息のオメガは王弟殿下に溺愛されているようです

BL / 連載中 24h.ポイント:7,490pt お気に入り:3,307

腹黒狼侯爵は、兎のお嬢様を甘々と愛したい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:151

妻が遺した三つの手紙

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,655pt お気に入り:46

【R18】大学生の頃の思い出

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:9

冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,093pt お気に入り:177

処理中です...