ヤンデレ勇者と二度目の召喚

能登原あめ

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 デジャヴ?

 ここは知っている。

「あぁ、セラヴィ殿。お待ちしておりました。……再び、お呼び立て申し訳ありません……」

 まさかの魔王復活?
 たった五年で?

「……はい、いえ、違うのです……危うい状況ではあるのですが……あちらの世界は五年も経っているのですか?」

 神官長がみるみる青い顔になっていく。

「まさか、ご結婚は……?」
「してないですよ。それで……どうしたんですか?」

 ほっとした様子に首をかしげる。

「あの……今回も勇者を癒していただきたいのです」
「あぁ、はい、いいですよ」

 仕事決まってないんで。
 あ、でも。

「聖女としては働けないかもしれません。……その、聖女って……、その……処女、じゃないとだめ、ですよね?」

 さすがに言いにくかった。
 神官長の顔がさっきより蒼白になり、大きな体がふらついた。

 もともとお年寄りだけど、久しぶりに会ったらだいぶおじいちゃんに感じるわ。

「神官長、座ります? 誰か呼んできましょうか?」
「いや、……いや、大丈夫、じゃないけど、大丈夫です。……多分……」
「やっぱり聖女として働けないですよね、わざわざ呼んでいただいたのにすみません」
「実は……もう、あなたを戻すことは出来ないのです……何度も界を渡ることに干渉できないので……」

 うわぁ、私を呼んじゃったから本物の聖女が呼べなくなったのか。
 悪いことしちゃったな。

 いや、勝手に呼び出したのはそっちか。
 悪いのは私じゃないな。

「……どうしましょ? どこか働き口あります?」

 あっちには未練はないけれど。
 こっちでも就職できなかったら泣ける。

「……とりあえず、もうすぐ勇者がやってくるので、話はそれからでもよろしいですかな? それから……」

 神官長が続きを話そうとしたところで、扉が勢いよく開いた。

「ラヴィ‼︎ ラヴィーー‼︎」

 ジュードの声に振り向いたわたしは驚いてぽかんと口を開けた。 

「全然変わってない……」

 すると神官長が小声でささやく。

「こちらでは、セラヴィ殿が帰ってから一年しか経っていません」
「一年⁉︎」

 目の前に立ったジュードに勢いよく抱きしめられた。

「ようやく会えた……。ずいぶん……大人っぽくなったね。きれいだ」
「……ジュードは、相変わらずかっこいいね……」

 年下だと思うと、自然といつも通りの言葉遣いになっちゃう。
 そんな私の顔を片眉を上げてまじまじと見る。

「なんだか……本当に、変わったね……?」

 確かに五年前ならそんなこと言えなかったかも。
 もっと純情だったし、多分。

「しかたないよ……だって私の世界では五年も経ってるから。……ジュードの方が年下だね」

 後ろで神官長がヒッと奇声を上げるのが聞こえた。

「…………結婚は?」

 また聞かれた。
 ほんの少し低い声に私は首を傾げる。
 目が笑ってない。
 ん? 

「……するわけないよ」

 大学行ってたし。

「そう、だよね。俺がいるし」

 いや、そう言うことでもないけどね?
 俺がいるし、ってナニ。

「……今のラヴィもきれいでかわいい。……十七歳からの五年間を無駄にしたのが、ものすごく……ものすごく……フゥ……残念だけど」

 後ろで唸るような苦しそうな変な声が聞こえる。
 神官長、持病でもあるのかな?

 振り返ろうと思ったけれど、ジュードに後頭部を押さえられて、まぶたの上にキスされた。

「俺以外の男を見るな」

 えーと?

「ジュード? あの、私が今回呼ばれたのって……」
「あぁ、俺の……」
「そのことなんだけどね! 私、聖女としては……能力がないと」
「セラヴィ、どのっ‼︎」

 神官長の悲鳴のような甲高い声が響く。

「……能力が、ない?」
「……えーと、その……癒すのに力が必要でしょ?」

 あれ?
 なんだか部屋の温度が下がったような気がする。

「……神官長。先に式をしようと思っていたが、後日改めて頼む。……少々残念なこともあるが、概ね成功と言えるだろう。では失礼する」
「……お二人のこれからに幸多からんことを」

 え? なんか逆に不穏?





 私はジュードに連れられて神殿の貴賓室へと入った。
 カチリとかかる鍵の音がなんだか恐ろしい。

「ラヴィ。……嘘つかないで本当のこと教えて」
「はい」

 居室を通り抜け寝室へと向かう。
 これ、やばいやつ。
 私の本能が逃げろ、逃げろ、と頭の中で叫んでいる。
 いや、でも、どこへ?

「ラヴィは恋人がいる?」
「いないよ」
「そう、よかった。……これまでに恋人がいた?」

 いないって答えたい。
 あまりにじっとみつめてくるから背筋がぞーっとする。

「いたけど、それは……ジュードと会えなくて……だから……」

 思わず口ごもる。
 あなたを忘れたかった、なんて言えない!

「……俺の代わりに? やっぱり神官長を消してしまうか……」

 今聞き捨てならない言葉が聞こえたような⁉︎

「あの……ジュードのこと、忘れたことなかったよ」
「俺だって……あの夜まさか帰ってしまうなんて思わなかった」

 そりゃそうだ。
 今なら、わかるよ。
 初めて二人が結ばれる夜になるはずだったわけだし。

「うん……ごめんね……今しか帰れないって聞いて、家族にお別れも言ってなかったし……その……」

 ベッドに腰かけたジュードの膝の上にのせられる。
 うん。近い。

「ジュード……二度と会えないと思っていたから、……嬉しいよ……」

 私の言葉にようやく笑顔を見せた。
 軌道修正できそうかな。

「ラヴィ、ようやく会えた。……もう離さないから」

 ギュッと強く抱きしめられる。
 あれ? 色々詰んでる?
 修正不可能?

「ちゃんと、俺が塗り替えてあげる」
 
 おおぅ。





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