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魔王城にて
しおりを挟むまさかまたこの街に来ることになるとは思わなかった。
魔王城に一番近い街だけど、平和な今ならもっと活気があってもいいのに。
ひと気が少ない。
「ジュード……ずいぶん、街の雰囲気変わったよね?」
「ああ、魔王がいなくなったからな。俺の臣下になるという以外の魔族はすべて焼き払ったんだ」
臣下?
焼き払った?
なんか色々突っ込んじゃだめなやつかな、これ。
しかも、谷に落としてまとめて……とかなんとか呟いている。
「へぇ……」
「だから、この街に住んでいるのは俺の城で働く人間の家族以外は皆、魔族だ」
「ほほぉ……」
いや、だから。
ツッコミたくなるけども。
元々いた街の人は逃げ出したのかな。
「聖女のラヴィを花嫁にしたと広まれば、もっと活気が出るだろう」
それはどうかな?
「私のことなんてみんな覚えてないんじゃない」
勇者の魔王(化)伝説でかき消えてると思うよ。
ここまで来るまでも、それはそれはジュードのことを恐れていたからね。
「清らかなる聖女セラヴィが降臨したんだ。恐れ多くてみんな近づかないだけだよ……守護者たる俺がいるしね♡」
うん。
どこから突っ込んでいいのかな。
いや、これもダメだ。
あの当時一緒に旅していたみんなみたいなスルースキルで乗り切るしかない!
別にあの当時は今ほどおかしくなかったけども。
今考えたら、彼らは大人だったんだな……。
「そう……そう、いえば。シエンナたちは今どうしてるの?」
男の名前は出しちゃダメなことは再会してからわかった。
あのおじいちゃんの神官長でさえも睨むくらいだし。
まぁ、私を帰したからってのもあるだろうけど。
他にも旅の途中で六歳くらいの男の子が『花買いませんか~?』ってやってきて、聖女の報奨金の一部としてもらったお金から少し多めに支払ったら、ジュードがそれはそれは恐ろしい顔で、男の子を威嚇していた。
『あの子だって、十年もすればラヴィを口説きに来るに違いない。今から潰しておかないと……』
『…………』
ないな。
それはない。
『あの時鼻を打ったのは俺です、ひとめぼれ(米)ですって会いに来られたら』
『ふふっ……あるはずないから』
あー、なんか今脳内で変換おかしかった。
思わず笑顔になっちゃったから、ごまかしつつジュードの頬に口づけた。
あれで和んだんだよねぇ。
『ヒッ!』
『さすがっ……聖女様』
『あの魔王様に‼︎』
だけど周りがざわざわしたなぁ、なんて回想しつつ、ジュードが旅仲間の近況を話すのを待った。
「アレッサンドロが結婚した」
「シエンナと?」
へぇ~、万能なアレックスはおねぇ言葉なだけでおねぇではなかったんだな。
おめでたい。
「いや、ドリューと」
「……へぇ~。こっちは同性婚が認められているんだね」
魔法使いのドリューが。
「アレッサンドロが好きだというから協力した。……だいぶ説得に時間がかかったが、ドリューも最終的には納得して神官長の前で結婚を誓ったよ」
んん?
「ドリューって女の子が好きじゃなかったっけ?」
よく宿屋で女の子とお酒飲んでた記憶がある。
それで翌朝、女の子の部屋から出てきてた。
「……あんな奴ラヴィの近くには置けないし、去勢したかったが、アレッサンドロがモノにしたいと言ったからな」
え?
まさかね。
そんなことって、あり?
「…………仲良くしてるの?」
「ああ、仲良しだぞ。会いたければ、この街にいるから俺がいる時なら案内する」
「……会いたい」
幸せなら私が口出すことはないし。
そうじゃなかったら……その時考えよう。
「シエンナはラヴィがいなくなった後、すぐ消えたからわからない。多分、国を出たんだろう」
「あぁ、そう……」
あー、うん、賢者だしね、彼女が一番先が読めたんだろうな。
「会いたいなら、魔族に探させるが?」
「いえ、結構。……私が一番興味があるのはジュードのことだけだから」
「そう」
ニコニコ笑う彼の手を握る。
「はい、ここがこれから俺たちが住む愛の城だよ」
「……ワー、ステキ!」
これはあれかな。
お姫様が百年眠っちゃった城かな?
「うん、本当に。誰も寄せつけない感じが二人きりで籠れていい雰囲気だと思う。……まぁ、困ることがないように城で働く奴らは出入りできるようになっているよ」
「ソウ、ナンダ……」
こりゃ、本格的に魔王と思われるわけだ。
私も一生暮らせるだけの報奨金をもらったし、ジュードも魔王城だけじゃなく、私の数倍の報奨金をもらったらしい。
私に対する金額が少ないと騒ぎそうな気配があったから、早く二人きりになりたいって、急いでやって来た。
「……ラヴィのために色々用意したんだ」
私専用の部屋……はなさそうだな、新しい服とかかな?
「そうなの? 嬉しい」
「じゃあ。こっち来て」
腰を抱かれて城の中を案内される。
もうちょっと明るくてもいいのになって思いながらピタリとジュードにくっついて歩く。
私が怖がってくっつくのが狙い?
……嬉しそうにしてるし。
「さぁ、開けてみて」
派手な装飾の扉の前で立ち止まる。
いかにもな魔王の執務室?
主寝室に繋がる部屋かな?
「これから二人で使う部屋だよ」
変なSM部屋だったらどうしよう。
ドキドキしながら開けると、大きなソファが置いてある落ち着いた居間で安心した。
「居心地良さそうで素敵だね」
「気に入ってもらえてよかった。色々みて」
衣装部屋も、ジュードのもの以外に私のかなって思う女物の服が並んでいるし、可愛らしいドレッサーがちょこんと置かれていた。
部屋についた浴室は明るくて清潔で、大きな浴槽があるしシャワーもついているし、のんびりできそう。
「くつろげるね~」
「……あぁ、一緒に入ろう」
「…………ウン」
まぁ、そうなるよね。
とにかく、これからの生活が楽しみになってきた。
「そこ、寝室ね」
「…………」
鏡張りか。
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