ヤンデレ勇者と二度目の召喚

能登原あめ

文字の大きさ
7 / 10

魔王城にて

しおりを挟む




 まさかまたこの街に来ることになるとは思わなかった。
 魔王城に一番近い街だけど、平和な今ならもっと活気があってもいいのに。
 ひと気が少ない。
 
「ジュード……ずいぶん、街の雰囲気変わったよね?」
「ああ、魔王がいなくなったからな。俺の臣下になるという以外の魔族はすべて焼き払ったんだ」

 臣下?
 焼き払った?
 なんか色々突っ込んじゃだめなやつかな、これ。

 しかも、谷に落としてまとめて……とかなんとか呟いている。

「へぇ……」
「だから、この街に住んでいるのは俺の城で働く人間の家族以外は皆、魔族だ」
「ほほぉ……」

 いや、だから。
 ツッコミたくなるけども。
 元々いた街の人は逃げ出したのかな。

「聖女のラヴィを花嫁にしたと広まれば、もっと活気が出るだろう」

 それはどうかな?
 
「私のことなんてみんな覚えてないんじゃない」

 勇者の魔王(化)伝説でかき消えてると思うよ。
 ここまで来るまでも、それはそれはジュードのことを恐れていたからね。

「清らかなる聖女セラヴィが降臨したんだ。恐れ多くてみんな近づかないだけだよ……守護者たる俺がいるしね♡」

 うん。
 どこから突っ込んでいいのかな。
 いや、これもダメだ。
 
 あの当時一緒に旅していたみんなみたいなスルースキルで乗り切るしかない!
 別にあの当時は今ほどおかしくなかったけども。
 今考えたら、彼らは大人だったんだな……。

「そう……そう、いえば。シエンナたちは今どうしてるの?」

 男の名前は出しちゃダメなことは再会してからわかった。
 あのおじいちゃんの神官長でさえも睨むくらいだし。
 まぁ、私を帰したからってのもあるだろうけど。
  
 他にも旅の途中で六歳くらいの男の子が『花買いませんか~?』ってやってきて、聖女の報奨金の一部としてもらったお金から少し多めに支払ったら、ジュードがそれはそれは恐ろしい顔で、男の子を威嚇していた。

『あの子だって、十年もすればラヴィを口説きに来るに違いない。今から潰しておかないと……』
『…………』

 ないな。
 それはない。
 
『あの時鼻を打ったのは俺です、ひとめぼれ(米)ですって会いに来られたら』
『ふふっ……あるはずないから』

 あー、なんか今脳内で変換おかしかった。
 思わず笑顔になっちゃったから、ごまかしつつジュードの頬に口づけた。
 あれで和んだんだよねぇ。

『ヒッ!』
『さすがっ……聖女様』
『あの魔王様に‼︎』

 だけど周りがざわざわしたなぁ、なんて回想しつつ、ジュードが旅仲間の近況を話すのを待った。 

「アレッサンドロが結婚した」
「シエンナと?」

 へぇ~、万能なアレックスはおねぇ言葉なだけでおねぇではなかったんだな。
 おめでたい。

「いや、ドリューと」
「……へぇ~。こっちは同性婚が認められているんだね」

 魔法使いのドリューが。

「アレッサンドロが好きだというから協力した。……だいぶ説得に時間がかかったが、ドリューも最終的には納得して神官長の前で結婚を誓ったよ」

 んん?
 
「ドリューって女の子が好きじゃなかったっけ?」

 よく宿屋で女の子とお酒飲んでた記憶がある。
 それで翌朝、女の子の部屋から出てきてた。

「……あんな奴ラヴィの近くには置けないし、去勢したかったが、アレッサンドロがモノにしたいと言ったからな」

 え?
 まさかね。
 そんなことって、あり?
 
「…………仲良くしてるの?」
「ああ、仲良しだぞ。会いたければ、この街にいるから俺がいる時なら案内する」
「……会いたい」

 幸せなら私が口出すことはないし。
 そうじゃなかったら……その時考えよう。

「シエンナはラヴィがいなくなった後、すぐ消えたからわからない。多分、国を出たんだろう」
「あぁ、そう……」

 あー、うん、賢者だしね、彼女が一番先が読めたんだろうな。

「会いたいなら、魔族に探させるが?」
「いえ、結構。……私が一番興味があるのはジュードのことだけだから」
「そう」

 ニコニコ笑う彼の手を握る。

「はい、ここがこれから俺たちが住む愛の城だよ」
「……ワー、ステキ!」

 これはあれかな。
 お姫様が百年眠っちゃった城かな?
 
「うん、本当に。誰も寄せつけない感じが二人きりで籠れていい雰囲気だと思う。……まぁ、困ることがないように城で働く奴らは出入りできるようになっているよ」
「ソウ、ナンダ……」

 こりゃ、本格的に魔王と思われるわけだ。
 私も一生暮らせるだけの報奨金をもらったし、ジュードも魔王城だけじゃなく、私の数倍の報奨金をもらったらしい。

 私に対する金額が少ないと騒ぎそうな気配があったから、早く二人きりになりたいって、急いでやって来た。

「……ラヴィのために色々用意したんだ」

 私専用の部屋……はなさそうだな、新しい服とかかな?

「そうなの? 嬉しい」
「じゃあ。こっち来て」

 腰を抱かれて城の中を案内される。
 もうちょっと明るくてもいいのになって思いながらピタリとジュードにくっついて歩く。
 私が怖がってくっつくのが狙い?
 ……嬉しそうにしてるし。

「さぁ、開けてみて」

 派手な装飾の扉の前で立ち止まる。
 いかにもな魔王の執務室?
 主寝室に繋がる部屋かな?

「これから二人で使う部屋だよ」

 変なSM部屋だったらどうしよう。
 ドキドキしながら開けると、大きなソファが置いてある落ち着いた居間で安心した。

「居心地良さそうで素敵だね」
「気に入ってもらえてよかった。色々みて」

 衣装部屋も、ジュードのもの以外に私のかなって思う女物の服が並んでいるし、可愛らしいドレッサーがちょこんと置かれていた。
 部屋についた浴室は明るくて清潔で、大きな浴槽があるしシャワーもついているし、のんびりできそう。
 
「くつろげるね~」
「……あぁ、一緒に入ろう」
「…………ウン」

 まぁ、そうなるよね。
 とにかく、これからの生活が楽しみになってきた。
 
「そこ、寝室ね」
「…………」

 鏡張りか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

処理中です...