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5 母様と恋の話を
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母様から受け取ったサブレを口に運ぶ。
「あのね、父様と初めて出会ったのは王宮のお茶会だったのよ。お菓子を食べていたら、父様が私にサブレを食べさせてくれたの」
父様がどんなに母様が好きかって話はよく聞くけど、二人の出会いの話は知らなかった。
「初めて会った子にそんなことをするなんて、父様ってすごい……」
母様が柔らかく笑う。
「お互い九歳だったの。きっと尋ねたら教えてくれるわ。……その後何年か経って婚約することになったのよ」
「へぇ……私、アーサー様としかおしゃべりしなかったわ」
「そうなのね。私も父様としか話さなかったわね」
「母様も? そのお茶会ってそれからも行った?」
「ええ、何回かは。でも、お菓子目当てだったわね」
「そんなに、美味しいお菓子が並ぶの?」
「そうねぇ。だって、王族の方々も召し上がるのだもの」
ふふって母様が笑う。
今はいつでも父様が美味しいものを手に入れてくださるけど、って。
「でも、行きたくない」
「そうね、行きたくないわよね」
「お菓子は興味あるけど。……それと、アーサー様がいらっしゃるなら、お礼もしたいし一度くらいなら」
「そう」
「すごく素敵な方だったの! 兄様達くらい背が大きくて、でもがっしりしていて、凛々しいお顔だったの! それでね、手が大きくて、あったかくて、なんだか……」
「なんだか?」
「胸がきゅって」
「そう」
そこまで言って、母様の顔を見たらニコニコ笑っていた。
「とっても、素敵な男の子なのね。私もご挨拶したいわ」
「うん! じゃなくて、はい。母様には父様がいらっしゃるから、あんまり優しくしないで下さいね」
「はい、はい」
母様はとっても優しいから好きになってもおかしくないもの。
「父様とアーサー様が母様を取り合いするとか絶対いやだわ。……もしかして、アーサー様が私の父様に⁉︎」
そんなのぜっったいに、いや!
「エヴァ。私が父様を裏切ることなんて全くないし、その男の子が私を本気で好きになることなんて」
「あるかもしれない!」
いつの間にか父様が現れた!
「ですよね、父様‼︎」
「あぁ、アンジーは会わなくていい。会う必要はない。……エヴァ。王子がエヴァと会ってみたいそうだ。すべての歳の近い貴族と顔を合わせることにしているらしい。……仕方ないから、来週の茶会は挨拶だけして帰ってくるといい」
父様がどこから話を聞いていたかわからないけど、私はもう一度お茶会に行くことになった。
こんなにすぐ行くことになると思わなくて、すごく、すごく気が重い。
「多分、多分だが、アーサーも招かれているはずだ。……そちらにもお礼を言ったらすぐに、すぐに帰るのだよ!」
父様?
もしかして、隠れて話を聞いていたの?
気の重い王宮の茶会も、アーサー様に会えるのなら、私は頑張れると思うの!
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