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6 カエルの子はカエル
しおりを挟む「君が前回会えなかった子だね。残念だったよ。じゃあ……これから、よろしくね」
私が挨拶をすると、絵本の中から飛び出してきたようなキラキラしたフィンレー殿下がそう言った。
満面の笑みも、なんだか作り物みたいで、やっぱりアーサー様の方が素敵だわ。
そんなことを考えていると、私の手を取り指先に口づけのフリをする。
え⁉︎
周りで着飾った女の子達がきゃあっと、高い声を上げた。
固まる私に、殿下がクスッと笑った。
「フィンレーと。これからは呼んでくれ」
その一言にますます大きな悲鳴が上がる。
なんで?
殿下の名前なんて呼びたくない。
ちょっと眉をひそめそうになる。
「エヴァと呼んでも?」
「……あの……」
嫌だって、言いたい!
周りの視線が突き刺さる。
気のせいかな?
やだ、この間の女の子達に睨まれている。
殿下、あっちの女の子達の方へ行ってくれないかな?
多分喜んで名前を呼ぶと思うの。
とにかくどうやって断ろうかと頭の中でぐるぐる考える。
「殿下。そろそろ……」
後ろからアーサー様の声がして私は振り向いた。
助け船だわ! しかもアーサー様から。
格好いい‼︎
やっぱり私の記憶は間違っていなかった!
「邪魔するなよ、アーサー」
私は王子に慌ただしく、というよりもちょっと雑な会釈をして、アーサー様の方を向いた。
「アーサー様。この間は、ありがとうございました。ずっと、ずっと会いたかったです!」
私は格好いいアーサー様をうっとりと見つめた。
「いや、たいしたことはしてない」
さりげないわ。
気取ってなくてすごく格好いい。
そのまま無言で見つめ合う。
幸せ。
アーサー様はなんだかそわそわしているように見えるけど、そこもなんだかかわいく見える。
好き。
そう思って私は口を開いた。
「ほら、アーサーもエヴァも、座って一緒にお茶にしよう」
挨拶してすぐに帰るつもりだったけれど、アーサー様と一緒にお茶が飲めるなんて!
殿下も一緒だけど。
名前呼ばれちゃったけど。
もしもアーサー様に名前を呼ばれたら、心臓が止まっちゃうかもしれない!
殿下は邪魔だけど、殿下のおかげなのかな。
ずっと会いたいと思っていた人と、触れられるくらい近くにいる。
あとで、手を握ってもいいかな?
それって、お行儀が悪いよね。
どうしよう。
一度会って、お礼が言えればいいって思ったけど、会ってしまったらそれだけじゃ全っ然足りない。
アーサー様が好き。
見てるだけで幸せだもの。
アーサー様の一口は私の三口くらいある。
パイもきれいにこぼさず、美味しそうに食べるのね。
「エヴァも食べて」
殿下に言われて、しぶしぶアーサー様から視線をはずしてお菓子に手を伸ばした。
小さなクッキーを口に運ぶ。
少しナッツの味がして、すぐに口の中で溶けた。
「おいしい、ですわ」
母様が言った通り、おいしい!
だから私はもう一つ手にとって、アーサー様の口元に差し出した。
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