26 / 28
その後の二人
甘いデザート①
しおりを挟むお読みくださりありがとうございます。全三話です。
皆さまにとって素敵な一年になりますように!
*****
どうしてもっと早く渡してくれなかったのかな?
父様が隠していたの?
ひどい!
「私、知っていたら、あんなこと言わなかったのに!」
母様から渡された『甘いデザート』というタイトルの貴婦人の為の閨事指南書。
『一人で読むのよ。これは大人の女性の為の本だから、殿方に見せてはいけないの。もちろん、旦那様にも内緒なのよ』
結婚して三ヶ月ほど経って、母様がこっそり渡してくれた。
どんな美味しいお菓子が載っているのかしらって、夫婦になったらベッドの上で子供には許されない特別なデザートが食べられるのね、って思ったのだけど!
「アーサー様、ひどい! 聖剣なんて、言葉書いてない‼︎ 鞘、とか……えっと、医学的にそう呼ぶのね。私……何も知らなくて、恥ずかしい」
ページをめくって身悶える。
今日のアーサー様はお義父様と二人で領地を回っているから夕食まで戻ってこない。
じっくり読む時間がある。
一度、性交したら、えっと、抜いて身を清める……?
そんなことしたことない!
いつもいつも、月のものがやってきた時以外は、朝までアーサー様の……を受け入れて眠っていたわ!
そういうものだって、そういうものだって……。
それで、朝、一緒にお風呂に入るの。
アーサー様はそういうものだって!
お風呂での愉しみ方も書いてあった。
書いてあったけど、書いてあったけど……ほとんど試していたみたい。
でもでも、アーサー様の……で、私の……を洗うなんて書いてない!
アーサー様はそう言っていたけど!
「アーサー様……嘘つき!」
こんな日に限って、領地でトラブルがあったらしく、アーサー様の帰りが遅くなるって、連絡があった。
先に一人で食事を取り、風呂も寝支度も済ませた。
お義母様とお義姉様は、新しい館でのんびりゆったり過ごしているから、今夜はお義父様だけ泊まって早朝には館に戻ると聞いている。
お義父様は慌ただしく行ったり来たりされてるけど、いつも笑顔で楽しそう。
新しい環境がすごく合うみたい。
それと、伯爵という地位は結構負担に思っているのかな。
ちゃんと手助けするからと、今にもアーサー様に爵位を譲ろうとするのだもの。
それだけ、アーサー様は優秀なのだと思うけど。
伯爵は七人兄弟の長男で、大変だったのかもしれない。
その兄弟達も数年前に他国で一攫千金を狙って出て行ってからほとんど連絡がないらしい。
一応気をつけるように言われているけど、もしかしたら本当にお金持ちになっているのかも。
だって、あの甘くて苦いここあの栽培をしているって聞いたから。
今だって貴族の間で人気だし、王都にここあのお店までできて予約しないと入れないと聞いた。
それに、伯爵家には常にここあが飲めるようになっているの。
もしかしたら、送ってくれているのかな?
アーサー様はなぜかいつも、ココアを飲むと顔が赤くなる。
きっと、発汗作用があるのね!
私も、ここあを飲むと温まるもの。
「ただいま、エヴァ。……起きて待っていてくれたのか?」
ちょっと嬉しそうな穏やかで優しい声。
きっと疲れていると思うけど。
顔を見るだけで好きって思うけど。
私は駆け寄って、飛びついた。
アーサー様がぎゅって抱きしめてくれる。
やっぱり好き。
でも、でもね!
言いたいことがあるの!
思い出してじわっと涙が浮かんだ。
「アーサー様の嘘つき!」
アーサー様が目を見開いて固まった。
「エヴァ……?」
「だって、だって……」
アーサー様を受け入れたまま、抱えられて歩くなんて書いてなかったわ!
月を見ながらバルコニーに立ってそういうことをするなんてことも!
アーサー様を受け入れたまま、お夜食をとるなんてことも‼︎
果汁がたれて全身なめられてしまったのに……。
『甘いデザート』には、そんなこと……一言も書いてなかったわ。
「なんの話だ? ひとつひとつ教えてほしい」
私を抱きしめて、真摯な態度で見つめてくるけど、言いにくいの!
「アーサー様が教えてくださった、こと……ベッドで……」
そう言ったらピンときたのか赤くなった。
「何を、誰から、訊いたんだ?」
口に出すなんて恥ずかしい。
でも言わないと伝わらなくて、涙があふれそう。
「泣くな、エヴァ。おかしなことは教えてないよ。……エヴァがいい生徒だから、もしかしたら上級者向けのこともしたかもしれない……」
「私がいい生徒だから……?」
もしかして、三ヶ月で『甘いデザート』を超えてしまったの?
1
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。
いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。
「僕には想い合う相手いる!」
初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。
小説家になろうさまにも登録しています。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
どんなあなたでも愛してる。
piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー
騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。
どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか?
※全四話+後日談一話。
※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。
※なろうにも投稿しています。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
【完結】美しい家庭教師を女主人にはしません、私は短剣をその女に向けたわ。
BBやっこ
恋愛
私は結婚している。子供は息子と娘がいる。
夫は、軍の上層部で高級取りだ。こう羅列すると幸せの自慢のようだ。実際、恋愛結婚で情熱的に始まった結婚生活。幸せだった。もう過去形。
家では、子供たちが家庭教師から勉強を習っている。夫はその若い美しい家庭教師に心を奪われている。
私は、もうここでは無価値になっていた。
どうぞお好きになさってください
はなまる
恋愛
ミュリアンナ・ベネットは20歳。母は隣国のフューデン辺境伯の娘でミュリアンナは私生児。母は再婚してシガレス国のベネット辺境伯に嫁いだ。
兄がふたりいてとてもかわいがってくれた。そのベネット辺境伯の窮地を救うための婚約、結婚だった。相手はアッシュ・レーヴェン。女遊びの激しい男だった。レーヴェン公爵は結婚相手のいない息子の相手にミュリアンナを選んだのだ。
結婚生活は2年目で最悪。でも、白い結婚の約束は取り付けたし、まだ令息なので大した仕事もない。1年目は社交もしたが2年目からは年の半分はベネット辺境伯領に帰っていた。
だが王女リベラが国に帰って来て夫アッシュの状況は変わって行くことに。
そんな時ミュリアンナはルカが好きだと再認識するが過去に取り返しのつかない失態をしている事を思い出して。
なのにやたらに兄の友人であるルカ・マクファーレン公爵令息が自分に構って来て。
どうして?
個人の勝手な創作の世界です。誤字脱字あると思います、お見苦しい点もありますがどうぞご理解お願いします。必ず最終話まで書きますので最期までよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる