お嫁さんを探しに来たぼくは、シロクマ獣人の隊長さんと暮らすことになりました!

能登原あめ

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 ロイクさんは三日仕事に行ったら一日休み、また三日行ったら二日休みらしい。
 休みの日は一緒に出かけて、夜は一緒に眠る。
 ぼくの寝相が悪すぎて、毎朝ロイクさんに抱きしめられているのは蹴られないようにだって。

 ちょっと恥ずかしいけど、くっついているとよく眠れる。
 ロイクさんの休みの日はちょっと寝坊するんだ。

 ロイクさんのローテーションを覚えた頃、ぼくは家の中を一通り掃除し終わった。

「ジョゼ、ありがとう。おかげですごく快適に過ごせているよ」
「どういたしまして。ぼく、家の中で過ごすのは嫌いじゃないです」

 ロイクさんがぼくに刺繍をやるかと訊いてきたけど、細かいことは苦手で断ったらすごく残念そうな顔をした。

 ただ服を繕うのは得意だったから、彼の服のお直しをしたら喜んでくれたし、どうしてこんなに派手に破けたんだろうというものまで渡された。
 最近乱闘騒ぎでもあったのかな。
 仕事柄大変なのかもしれない。
 
「……同じ色の糸がもうなくなりそう」

 どうしよう、買いに行こうかな。
 考えてみたらロイクさんと一緒の時しか外出していない。

「まっすぐだし、昼間だし。ついでに布も見てこようかな」

 そう遠くもない。
 ぼくは鍵をしっかりかけて、家を出た。

「そこのあなた! 待ちなさい!」

 家を出て十歩も歩かないうちに声をかけられて、ゆっくり振り向く。
 ぼくより少し歳上で黒髪の色っぽい女の人がこっちをにらんで立っていた。

「……なんだ、子どもじゃない。彼が保護して面倒みていただけね……彼は私の恋人なの。早く出ていってくれないかしら?」

 大きな胸を見せつけるように寄せて腕を組む姿にびっくりする。
 たしかにぼくって子どもかも。

「あの……ロイクさんは恋人はいないって言ってましたけど……」

 ぼくだって邪魔だったら早く出て行くけど。

「彼は恥ずかしがり屋だから隠しているのよ! あなたが家にいるから私を呼べないし、一緒に過ごせないの。わかる?」

 お風呂で目をそらしていたし……恥ずかしがり屋かも。
 恋人ならロイクさんのこと知ってるよね。

「ぼく、街に来たばかりなので慣れたら出て行きます」
「それならいいわ……それにしても『ぼく』だなんて変わっているわね」

 その女の人に鼻で笑われてショックを受けた。
 街の人はぼくって言わない?

「田舎者なら仕方ないわ。一日も早く出て行くのよ!」

 そう言って大きなお尻を揺らしながら去って行く。
 気持ちがしょんぼりして楽しく出かける気持ちがなくなってしまった。
 ぼく一人のお出かけはその日は取りやめて家に戻る。

 手仕事をする気も起きなくて、読書……というか本は開いたけどぼんやり過ごしてしまった。
 夕方仕事から帰ってきたロイクさんが、落ち込んでいたぼくに話しかける。

「どうした? 何かあったのか?」

 顔をのぞきこまれて、思わず視線をそらした。

「ジョゼ?」
「今日外へ出たんです」
「……それで?」
「ロイクさんの恋人が、ぼくがいるから一緒に過ごせないって……ぼくなるべく早く仕事と住まいを決めます、ごめんなさい」

 ちらりと見るとこわばった顔で何度も瞬きをしている。

「……それで落ち込んでいたのか?」

 もしかしてヤキモチか、とかロイクさんがつぶやいた気がしたけどよくわからない。
 モチは焼くより揚げる方が好きだけど……。

「女の子がぼくって言うの、おかしいんですか?」
「……ジョゼが言うのは可愛い。あまり一般的ではないが」
「やっぱりおかしいんですね……ぼくすごくショックを受けました」
「気にしているのはそこか……?」

 ロイクさんのつぶやきに首をかしげる。
 ぼくの周りは優しい人達ばかりだったから、あの女の人の態度はすごく嫌だった。

「いつか出て行くことになるのはわかっていました……だからそれはいいんですけど」
「…………いいのか?」

 その声が絞り出すようで、真剣な顔でみつめられていて驚く。

「だって、恋人なんですよね? すっごく女らしい人でした。ぼくだって独り立ちしないといけませんから」
「恋人なんていない。それはその女が勝手に言っているだけだ。俺は番がいればいい」

 勝手に恋人宣言する人がいるの?
 よくわからないけどロイクさんが嘘をつくわけない。

「ロイクさん、番を探しているって言ってましたもんね……。ぼく、やっぱり騙されやすいのかな」
「ジョゼは素直なんだ。もっとここでいろんなことを覚えたほうがいい」

 ちょっと外へ出ただけで騙されそうになるなんて。
 あんまりにもロイクさんが優しい顔で言うから、ぼくはちょっとだけ泣きそうになった。
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