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その後の話
9 満月の夜の散歩
しおりを挟む「ジョゼ、明日から二ヶ月休みをとった」
ぼくのお腹が大きくなって、先生からいつ産まれてもおかしくないって言われた次の日。ロイクさんが言った。
「ロイクさん……ぼく、嬉しいですけど、仕事は大丈夫なんですか?」
「もちろん、大丈夫だ。この為に一生懸命働いて、今まで休まなかった分をまとめて休むから。……本当はもっと休みたかったんだが……すまない」
ロイクさんが申し訳なさそうに言うけど、二ヶ月も一緒にいてもらえるのはすごく心強い。
「ぼく、少し心細かったから、すっごく嬉しい。一人の時に、もし産まれそうになったら、って……でも、ロイクさんがいてくれるから安心しました!」
「そうか……それならよかった。男の俺には気がつかないことも多いだろうから、ジョゼ、して欲しいことは遠慮なく言って欲しい。鈍くて悪いな」
ロイクさんは全然鈍くなんかないのに。
ぼくがお腹が重たくて腰に手を当てただけで、マッサージしよう、って言う。
他にも、ふぅ、ってため息を吐いたら疲れたのか、って抱っこしてくれる。
「えっと、はい。わかりました!」
今のままでいいです、ってぼくが言うと、遠慮しすぎだって言ってもっと甘やかそうとするから、すぐ頷いたほうがいいって覚えた。
「ロイクさんが、一緒にいてくれるだけでぼく、幸せだし嬉しいです。それに、先生が」
「栄養を蓄えろって、言ってたな。ジョゼ、夕食にしようか」
先生はそれも言ってたけど、体も動かすように言ってたけどなぁ。
「はい。じゃあ、夕食を食べたら、ロイクさんとお散歩に行きたいです。先生がいっぱい歩くといいって! それに今夜は満月だから明るいし、綺麗だろうし、子供が生まれる前に見るのは最後だと思うから」
「…………わかった。疲れたらすぐに言うんだぞ」
たっぷり作っておいたお肉たっぷりのシチューを食べて、ひと休みしてから家の周りを歩くことに。
「ジョゼ、寒くないか?」
「大丈夫ですよ。本当は商店街の噴水まで行きたかったけど、遅くなっちゃいますもんね。きっと、満月が水に映ってすごくキレイだろうな」
ロイクさんの大きな手を握る。
毎日昼間に散歩していたけど、昨日は病院に行ってちょっと疲れたし、今日はいつもよりポコポコ蹴るからなんとなく歩く気分じゃなかった。
「……行きたいか?」
ロイクさんの表情が、ぼくの願いを叶えたい気持ちとぼくの体を心配する気持ちで揺れているみたい。
「すごく行きたいし、見たいですけど……夜も遅いですし、ロイクさんも仕事の後で疲れていると思うから」
「わかった、行こう。俺はジョゼの顔を見て疲れなんて吹っ飛んだし、ジョゼが疲れたら抱きかかえるから心配するな」
少し腰がだるかったけど、ロイクさんの言葉にぼくも元気になった。
お腹が重たいからすぐ痛くなっちゃうのは、もうすぐ産まれてくるからしかたないのかな。
すっごく痛くならないと産まれないと聞いているし、まだまだみたい。
先生もたくさん歩いたほうがいいって言ってたし、ぼくも早く会いたいからやれることはしなきゃ。
「嬉しい! ロイクさん、ありがとう。ぼく、ゆっくり歩けば大丈夫です」
「わかった、無理するなよ」
家々の明かりがついて、外を歩く人の姿はまばら。
「はい! あ……っ」
「どうした⁉︎」
ロイクさんの、びっくりするくらい大きな声が夜の街に響く。
「赤ちゃんがお腹を蹴ったから、もしかしたら、散歩が嬉しいのかな、なんて……えへへ」
今日はちょっとよく動いているかも。
もしかしたらぼくと一緒で明日からロイクさんといられるのも嬉しいのかな。
「そうか……活発な子が生まれてきそうだな。すぐにも靴が必要になるかもしれない」
ロイクさんがどこの靴屋に頼もうか、なんて気の早いことを言う。
そんな話をしながらのんびり歩いて、噴水が見えた。
「ここからでも綺麗ですね! 来てよかった」
「そうだな、綺麗だな……ジョゼ、冷えるから噴水の周りをひと回りして帰ろう」
「はい!」
なぜかぼくは無性にお月様が見たかった。
わがまま言って、ここまで歩いてきて脚の付け根がちょっと痛い。
お腹を撫でるとちょっと張ってるかも。
じーっとしてれば大丈夫。
噴水の前で立ち止まると、ロイクさんも止まってぼくを見る。
こうして二人で手をつないで、のんびり散歩なんてしばらくできないと思う。
なんだかこの時間がすごく特別なものに思えた。
「ロイクさん、ありがとう。ここに来れてよかったです」
「いや、俺にとってもこうしてジョゼ過ごす時間が何より大切なんだ」
「あれ、ぼく……」
それは突然起こった。
ぼくの足を伝って流れる。これって……。
「おもらし……じゃないっ」
「……ジョゼっ⁉︎」
ロイクさんが上着を脱いでぼくを包み、がばっと抱き上げる。
「は、破水か⁉︎」
「ロイクさん、家に荷物!」
「先に病院が近い! 行くぞ!」
ロイクさんがぼくを揺らさないように、安全かつものすごい速さで街を駆け抜けた。
「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」
病院に着いてそれほど経たずにぼくは小さな赤ちゃんを産んだ。
痛いってことより、赤ちゃんと会えるのが嬉しくて、あっという間に感じたから。
そう言うと、先生のそばにいた産婆さんが笑った。
「痛みに強いお母さんだねぇ! 多分今日は陣痛もあったんじゃないかしら?」
「うーん……時々腰が痛いなぁって思いましたけど、もっと痛いのかと思ってました!」
ぼくはけろりとしていたけど、入ってきたロイクさんはぼくを見るなり泣き出して、驚いた。
「ロイクさん、男の子だって」
「そうか……ジョゼ、ありがとう。何時間も……よく頑張ったな。とっても可愛い……可愛い、……クマだな」
「うん! ロイクさんに似ているみたい。きっとカッコよくなるね」
人間の赤ちゃんより小さくて頼りなくて、クマというには毛もほとんどない。
でもこの子がぼくのお腹の中にいたんだ!
「この子は少しお父さんの血が濃いかもしれないけれど、すぐにヒトの姿になるから驚かないように。大丈夫ですよ」
先生の力強い言葉にぼくは頷く。
ロイクさんの血が濃いなら、きっと大きくて凛々しい男の子になるのかな。今はふにゃふにゃしていて、ぼく達が守らなきゃって思う。
「初めて姿が変わるところは見逃したくないな……ジョゼ、この子の名前はアーティがいい」
「アーティ?」
「あぁ、勇敢と言う意味がある」
「うん! ピッタリ!」
こうしてぼく達に新しい家族が増えた。
いつの間にか夜が明けていて、ぼくが思ったより長い時間が経っていたみたい。
ぼくの神経も高ぶっていたのかな。
ロイクさんはぼくが落ち着くまで髪を撫でてくれて、その後は先生に連れ出された。
「アーティ、ようこそ」
両手のひらにのるほど小さいけど、温かい。
頼りない命を抱っこしていると愛しさがわき上がった。
アーティがクマの姿でいたのはたったの一週間だけで、姿が変わるところをじっと見つめていたロイクさんが、ぼくにすごく似てるって嬉しそうに笑った。
それからぼく達をまるごと抱きしめた。
小さなアーティをあやして、泣いたらとんでいくロイクさんのことをもっともっと好きになったし、ロイクさんもお母さんになったぼくのことも好きだと言ってくれる。
もちろんぼくもお父さんになったロイクさんが大好きって答える。
アーティが笑うだけで、ぼく達はますます幸せになった。
******
お読みくださりありがとうございます。
アーティには熊という意味もあります。
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幸せなお話をありがとうございます💖
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ロイクさん、連れ出されるまでジョゼを撫でていたんですねー!
(。 >艸<)<ब<ब♡
子育てにも熱心で、満点パパって感じかしら?
ほっこり幸せー。こんなに胸がほわほわして温かくなるお話をありがとうございました!
キラキラのお祝い✨
まぶしい✨˚* ♡︎(*゚O゚*))))スゴイ
ロイクさんはジョゼのためにできることはなんでもしたいという感じですね😆
シロクマ獣人としては珍しく子育ても自ら進んでやるタイプです( ◍︎•㉦•◍︎ )♡︎
|ノo・)ヒソ{子育ては雌クマ任せなんですって🐻}
ほっこり幸せと言ってもらえて嬉しいです!
書き始めたら全然違うところに着地しました〜( ˃ ⌑︎ ˂ )💦
鍋さま、コメントありがとうございました🤗
おー!おめでとう!ジョゼ!
おめでとう!ロイクさん!
🌟ⓗⓐⓟⓟⓨ🎈
🎈ⓑⓘⓡⓣⓗⓓⓐⓨ🌟
。🌹🌹🌹.
。:🌹・🌷゚🌹*🌸🌷
・🌷🌻★゚.🌹☆。:🌷🌺
゚🌻.🌹🌸.:*🌹🌺🌷🌸
🌹🌸🌹🌺🌻🌼。_🌹*
\ξ \ ζ /
/),, /)\ /
(๑´ ∀ ` ๑)/🎈
/ つ🎀o
しーJ
安産で良かったです⸜(๑'ᵕ'๑)⸝*
陣痛がきてたはずなのに、ご飯食べて散歩して…逞しいお母さんです。
生まれたときはクマで、ヒトに変わる…ロイクさんはヒトに変わる瞬間を見られたのかな。
つきっきりだったみたいだから、きっと見られましたね!
幸せな家族にカンパ〜イ🥂
素敵な花束嬉しいです〜♪
‧˚₊*̥(∗︎*⁰͈꒨⁰͈)‧˚₊*̥おぉぅ✨💐✨
無事に産まれました〜ପ(⑅︎ˊᵕˋ⑅︎)ଓ
陣痛に気づかないってジョゼらしいかな〜と思います(๑˃̵ᴗ˂̵)
ロイクさんはもちろんそばで人の姿になるのを見ていたんですが、カメラを回す……とかどこの世界🙄ってなって、そのまま書き忘れました🥲
エピソード追加するか一文増やすかもしれません〜(´>∀︎<`)ゝ))エヘヘ
幸せな家族にかんぱーい🥂✨
みりあむさま、コメントありがとうございました🤗
アーティくん、ハッピーバースデー(⋈◍>◡<◍)。✧♡🎉🍰 更新ありがとうございました
わ〜本当だ、ハッピーバースデーですね🎉
(๑•ڡ•)🎂(•ڡ•๑)✨
無事に産まれて、家族が増えました♡
筋肉は正義さま、コメントありがとうございました🤗