犬も歩けば何とやら

えりんぎ

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おぼろげな記憶

おんぶにだっこ

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 時刻は夕方5時。夕日がぼろアパートまでの帰り道を照らす。ママの自転車の後ろに乗って、私はスーパーで買ってもらったお菓子のチョコを早く食べたいな、とか考えていた。
 どこからともなく漂ってくる夕飯の香り。味噌汁かな、焼き魚かな。団地の中は何となく、みんながみんな家族団欒してるんだろうなと思わせる雰囲気が漂っていた。
 「まま、今日ごはんなに?」
「んー何がいいかな…」
自転車を漕ぎながら母親が呟く。
ーーガチャン。
ぼろアパートの駐輪場に自転車を止める。
「ほらっ」
私はヒョイと抱えられて地面に立たされる。
「登るよー」
「えぇ…」
スーパーで買い物を終え、歩き疲れた4歳児に、5階まで階段で上がるのはなかなか厳しいものであった。
「ままーやだー、登れない」
「え!頑張ってよ、ちょっとだけ!」
妹の茜は今2歳。おんぶ紐でママの背中にくっついている。ママは両手にスーパーで買った牛乳やら野菜やらたくさん詰め込まれた袋を四つくらい持っている。
「やーだやーだ、つかれた…」
4歳児は地べたに座り込む。
「あーわかったわかった」
母は唇をキュッと引き締めたあと私の前にしゃがんでこう言った。
「抱っこするから絶対捕まってるんだよ」
「うん」
私はママの首の後ろに手を回した。コアラの子供のように手と足でママの体にしがみつく。今考えたらそれより歩いた方が楽なんじゃないかと思うが、きっとそうでもなかったんだろう。対するママはというと、両手に大荷物、背中に妹、胸には私というまさに文字通りおんぶに抱っこ、加えて両手に大荷物である。
「よいしょ、よいしょ」
ママはすごい。途中で休憩こそあったが、私に一段も階段を上らせずに5回に着いた。
達成感で満ち溢れたママの顔を見て何だか私も自慢げな気持ちになったのを覚えている。


…今日の夕飯は何だろうな。




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