シェアハウスの住人は・・・

別れ

千暁がドアを開けると、つまみや酒を持った碧が立っていた。

千暁「どうぞ。」
碧「お邪魔します。」

千暁「紹介します。彼氏の碧です。」
碧「初めまして、碧です。よろしくお願いします。」
碧が見回すと、翠と目が合った。
翠「久しぶり。元気だった？」
緋露「お知り合いですか？」
翠「買い物友達かな。スーパーで会って話す程度だけどね。」

どことなく翠が気まずそうだ。翠が席を立ったタイミングで、琥珀がついて行って、そっと声をかけた。

琥珀「翠さん。」
翠「どうかした？」
琥珀「大丈夫ですか？もしかして、碧さん来たのまずかったですか？」
翠「いや・・・実は・・・」

歯切れが悪く、言葉を濁そうとする。

翠「スーパーでよく女の子といるのを見るから、てっきり彼女かと思ってて・・・腕とか組んでたし・・・まさか千暁君の彼氏だったとは・・・」
琥珀「最悪・・・もしかしてその女の子って、小柄で猫撫で声でした？」
翠「多分その子だと思うけど、声が聞いたことがないから・・・」
琥珀「居酒屋で千暁と呑んでる時にばったり会ってて。これ千暁に言ってもいいですか？」

翠に、せめて碧が帰ってからにと言われ、琥珀は少し不機嫌になった。

夜も更けてきた頃、碧のスマホに連絡が来た。

『今日行ってもいい？』

翠はその画面がチラッと見えてしまった。きっとあの子からだろう。

碧「すみません。ちょっと用事が出来てしまったので、今日は失礼します。呼んでもらってありがとうございました。」
そう言うと、碧はそそくさと帰ってしまった。

琥珀「予定あったんじゃん。」
翠が琥珀に先程見た画面のことを、耳打ちした。

琥珀「は？本当ですか？・・・ふざけんなよ。」
緋露「どうした？」
琥珀「どうもこうも・・・翠さん、言ってもいいですか？」
翠「・・・そうだね。」
琥珀「千暁、碧さんと別れた方がいいよ。この前、居酒屋で会った子と、堂々と浮気してるって。さっきその子から連絡来たから帰ったんだよ。」
千暁「そうだろうなとは思ってたよ。あいつバイだし。よく女の子に会いに帰ったなとは思うけど、そういうやつなんだろうな。」
千暁はため息をつくと、碧にメッセージを入れた。

『別れよう』

碧からすぐに返信があった。

『分かった。今までありがとう』

千暁はそれを読んで、碧をブロックした。

千暁「別れたわ。全然悲しくないんだけど。」
琥珀「お疲れ。飲み直そ！」
全員「かんぱーい」

その日は全員リビングで雑魚寝するほど、泥酔した。