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2章 それは、あなたなんです
第7話 歓迎したいから
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「4等分?」
お兄ちゃんがきょとんとする。保さんも首を傾げ、出口さんはおろおろしている。
「そう。ここにいる4人で4等分。もちろんお兄ちゃんとわたしからはポケットマネーで。私ら3人は出口さんを歓迎したい、でも出口さんは支払わせるんが心苦しい。それやったら、みんなで払ったらええんよ」
出口さんに好感を抱いているのは、那津もなのだ。出口さんは不器用な人なのかも知れない。それでもなんだか放っておけない雰囲気を持っている。出口さん自身は誰かに頼ろうだとかそんなことはきっと考えていない。ただ少し引っ込み思案で、真面目な人なのだ。
「せやな!」
お兄ちゃんがにかっと笑う。
「みんなで払お! なっちゃんさすが、おれの妹」
「へへ」
那津は嬉しくなってはにかんでしまう。お兄ちゃんに認められることが嬉しいのだ。
「でも、それも申し訳ないよ。あたし、自分で」
出口さんは言うが、保さんが「せやな」と頷く。
「4等分ええな。そうしようや、出口さん。それでおれらの気も済むんやから」
「えええ……」
出口さんは戸惑いながら、それでもうんうんと考えて。
「じゃ、じゃあ、この1本だけ、お願いして、ええかな」
「うん」
保さんが柔らかく微笑むと、出口さんはほっとしたように口元をほころばせた。
「松比良くんて、思ってた以上に話しやすいんやね」
「そう? 嬉しいわ。それやったらたまに話し相手になってくれたら助かる。蛍もなっちゃんも、ぼくにばっかり構ってられへんから」
「うん。こちらこそよろしくね」
ふたりの間にほのぼのとした空気が流れる。穏やかな人同士、気が合うのだろうなと思う。お兄ちゃんさえよければ、このふたりのお友だちとしての関係はありなのかも知れない。
「蛍、「バランタイン」で出口さんになんか飲みやすいん作ったげてや。やっぱりハイボールやろか?」
「それよかコークハイかな。出口、コーラは飲めるか?」
「うん、結構好き」
那津は、出口さんを強い人だな、と思っていた。のんびりしているようで、実際もそうなのかも知れないが、先週のことがあって、それでもこうして来てくれているのだから。例えファンクラブのことがあったとしても。
「コークハイは、ウィスキーをコーラで割るねん。せやからめっちゃ飲みやすくなるんやわ。飲んでみるか?」
「うん」
「よっしゃ」
お兄ちゃんはタンブラーを出すと、用意しておいたアイスペールから氷を入れ、「バランタイン」を注ぎ、冷蔵庫から出したコーラで満たしてマドラーで混ぜる。それをコースターを添えて出口さんの前に置いた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
出口さんはコークハイを両手で持ち、ゆっくりと口を付けて傾ける。そして「ん」と目を丸くした。
「めっちゃ美味しい。飲みやすいね、これ」
驚いたように言って、顔を上げた。お兄ちゃんがにやりと口角を上げる。
「せやろ。ジンジャーエールで割るレシピもあるわ、ジンジャーハイっちゅうねん。それもまたな。ま、酒は無理に飲むもんちゃうわ。美味く楽しく。それが鉄則やて、おれは思ってるから」
「うん。あたし、ウィスキーって嫌いやもちろんないんよ。でもちょっと大人な味で、あたしには早いんかなぁって思ってたけど、割るもんでこんなに変わるんやね。ジンジャーハイも今度飲んでみたいわぁ」
出口さんの顔が嬉しそうに輝いている。ああ、楽しそうだ。そう、お酒は楽しく飲んで欲しい。この「ウィスキーバー TOMO」ではよい時間を過ごして欲しいのだ。
「おれももっと早よぅ気付けばよかったわ。出口、ソフトドリンク以外はずっとハイボールやったから、好きなんかと思ってた」
「ぼくも。ソフトドリンク挟むんは、長時間に耐えるためやって思ってたし」
「あんまウィスキーの飲み方を知らんくて。ハイボールやったら大丈夫かと思ったんやけど、やっぱりウィスキーの味がしっかりするから」
「飲み慣れん人にとってはそうやろな。うちはソフトドリンクもいろいろあるし、ウィスキーで作れるカクテルも何個かあるから、いつでも言うてくれ」
「ありがとう」
出口さんと保さんとお兄ちゃん、同級生3人の間に流れる、気安くて和やかな空気感。羨ましいな、なんて、那津は思う。お兄ちゃんたちと同じ高校に行っておけばよかったな、なんて思ってしまう。学年は違うけれども。
同じ高校だったら、お兄ちゃんが保さんと部活に励んでいた姿とか、保さんがファンクラブに応援されたり囲まれたりしているのを見れたのかな、と思うと、惜しかったような、そうでもないような。
お兄ちゃんたちは楽しそうに笑いあっている。那津は微笑ましい気持ちになる。
ふと奥のスイを見ると、片目を出してこっそりとこちらを伺っている。
「にゃあ」『これでよかったんか?』
もちろん。那津は小さく頷いたのだった。
お兄ちゃんがきょとんとする。保さんも首を傾げ、出口さんはおろおろしている。
「そう。ここにいる4人で4等分。もちろんお兄ちゃんとわたしからはポケットマネーで。私ら3人は出口さんを歓迎したい、でも出口さんは支払わせるんが心苦しい。それやったら、みんなで払ったらええんよ」
出口さんに好感を抱いているのは、那津もなのだ。出口さんは不器用な人なのかも知れない。それでもなんだか放っておけない雰囲気を持っている。出口さん自身は誰かに頼ろうだとかそんなことはきっと考えていない。ただ少し引っ込み思案で、真面目な人なのだ。
「せやな!」
お兄ちゃんがにかっと笑う。
「みんなで払お! なっちゃんさすが、おれの妹」
「へへ」
那津は嬉しくなってはにかんでしまう。お兄ちゃんに認められることが嬉しいのだ。
「でも、それも申し訳ないよ。あたし、自分で」
出口さんは言うが、保さんが「せやな」と頷く。
「4等分ええな。そうしようや、出口さん。それでおれらの気も済むんやから」
「えええ……」
出口さんは戸惑いながら、それでもうんうんと考えて。
「じゃ、じゃあ、この1本だけ、お願いして、ええかな」
「うん」
保さんが柔らかく微笑むと、出口さんはほっとしたように口元をほころばせた。
「松比良くんて、思ってた以上に話しやすいんやね」
「そう? 嬉しいわ。それやったらたまに話し相手になってくれたら助かる。蛍もなっちゃんも、ぼくにばっかり構ってられへんから」
「うん。こちらこそよろしくね」
ふたりの間にほのぼのとした空気が流れる。穏やかな人同士、気が合うのだろうなと思う。お兄ちゃんさえよければ、このふたりのお友だちとしての関係はありなのかも知れない。
「蛍、「バランタイン」で出口さんになんか飲みやすいん作ったげてや。やっぱりハイボールやろか?」
「それよかコークハイかな。出口、コーラは飲めるか?」
「うん、結構好き」
那津は、出口さんを強い人だな、と思っていた。のんびりしているようで、実際もそうなのかも知れないが、先週のことがあって、それでもこうして来てくれているのだから。例えファンクラブのことがあったとしても。
「コークハイは、ウィスキーをコーラで割るねん。せやからめっちゃ飲みやすくなるんやわ。飲んでみるか?」
「うん」
「よっしゃ」
お兄ちゃんはタンブラーを出すと、用意しておいたアイスペールから氷を入れ、「バランタイン」を注ぎ、冷蔵庫から出したコーラで満たしてマドラーで混ぜる。それをコースターを添えて出口さんの前に置いた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
出口さんはコークハイを両手で持ち、ゆっくりと口を付けて傾ける。そして「ん」と目を丸くした。
「めっちゃ美味しい。飲みやすいね、これ」
驚いたように言って、顔を上げた。お兄ちゃんがにやりと口角を上げる。
「せやろ。ジンジャーエールで割るレシピもあるわ、ジンジャーハイっちゅうねん。それもまたな。ま、酒は無理に飲むもんちゃうわ。美味く楽しく。それが鉄則やて、おれは思ってるから」
「うん。あたし、ウィスキーって嫌いやもちろんないんよ。でもちょっと大人な味で、あたしには早いんかなぁって思ってたけど、割るもんでこんなに変わるんやね。ジンジャーハイも今度飲んでみたいわぁ」
出口さんの顔が嬉しそうに輝いている。ああ、楽しそうだ。そう、お酒は楽しく飲んで欲しい。この「ウィスキーバー TOMO」ではよい時間を過ごして欲しいのだ。
「おれももっと早よぅ気付けばよかったわ。出口、ソフトドリンク以外はずっとハイボールやったから、好きなんかと思ってた」
「ぼくも。ソフトドリンク挟むんは、長時間に耐えるためやって思ってたし」
「あんまウィスキーの飲み方を知らんくて。ハイボールやったら大丈夫かと思ったんやけど、やっぱりウィスキーの味がしっかりするから」
「飲み慣れん人にとってはそうやろな。うちはソフトドリンクもいろいろあるし、ウィスキーで作れるカクテルも何個かあるから、いつでも言うてくれ」
「ありがとう」
出口さんと保さんとお兄ちゃん、同級生3人の間に流れる、気安くて和やかな空気感。羨ましいな、なんて、那津は思う。お兄ちゃんたちと同じ高校に行っておけばよかったな、なんて思ってしまう。学年は違うけれども。
同じ高校だったら、お兄ちゃんが保さんと部活に励んでいた姿とか、保さんがファンクラブに応援されたり囲まれたりしているのを見れたのかな、と思うと、惜しかったような、そうでもないような。
お兄ちゃんたちは楽しそうに笑いあっている。那津は微笑ましい気持ちになる。
ふと奥のスイを見ると、片目を出してこっそりとこちらを伺っている。
「にゃあ」『これでよかったんか?』
もちろん。那津は小さく頷いたのだった。
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