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4章 琥珀色の真実
第8話 琥珀色の真実
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お兄ちゃんはこわばった顔でスイを見る。
「スイはなにを知ってるんや?」
「……にゃあ、にゃあ」『……蛍の気持ちなんて、だだ漏れだにゃ。まどかも啓太も分かってたにゃ。気づいてないのは、鈍感な那津ぐらいなものにゃ。なにせ、那津は自分の気持ちにすら気づいていないのにゃ』
「え、わたしって鈍感?」
急に名指しされた那津がぎょっとすると、スイは「やれやれ」と言うように首を振った。
「にゃあ、にゃあん」『まぁ、こういう環境にいるから、仕方がないのかも知れないのにゃ。でも、そろそろ気づかないといけないと思うのにゃ』
「わたしの、気持ち……」
分からない、なんだろうか。那津は首を傾げるしかない。だが、お兄ちゃんは察したのだろう。
「なるほどな」
と、腑に落ちたような顔で頷いている。
「なっちゃん」
お兄ちゃんは真剣な顔になって、那津を見据えた。那津は思わず緊張する。
「おれ、なっちゃんが好きやねん。妹としてやなくて、ひとりの女性として」
そうはっきりと言われ、那津は一瞬混乱する。しかし次第に言葉の意味を理解して。
「えっ!」
そう声を上げたとたん、那津の心ががつんと殴られ、がむしゃらに揺さぶられたような気がした。
そうか、那津は、那津も、お兄ちゃんが好きだったのだ、男性として。だが那津はお兄ちゃんの妹だから、そして、お兄ちゃんの心は女性で保さんだっているのだからと、ずっと本心を心の奥底に閉じ込めていたのだ。
顔がかぁっと赤くなるのが分かる。自覚をして、あらためてお兄ちゃんを見ようとするのだが、恥ずかしくてまっすぐ見ることができなかった。思わず顔をそらしてしまう。
「にゃ、にゃあん」『蛍、やっと言ったのにゃ。那津も、気づいたみたいなのにゃ』
「え、まさか、なっちゃん」
お兄ちゃんが那津を覗き込む。那津はますますうつむいてしまった。
「ごめん、恥ずかしくて、お兄ちゃんを見られへん。ごめん、時間ちょうだい」
「うん」
お兄ちゃんの声は柔らかい。どこまでも、那津のために。那津だけのために。
頭が、心がふわふわする。そうか、那津がこれまで誰に対しても恋愛で本気になれなかったのは、お兄ちゃんがいたからだ。那津のなかではお兄ちゃんが最上で、至高で、なにものにも代え難くて。
那津はいったいいつから「こう」だったのか。それは那津にも分からない。スイになら分かるのだろうか。お母さんやお父さんは?
ううん、もうそんなことはどうでもよい。那津はお兄ちゃんが好きで、お兄ちゃんもそうだと言ってくれた。それだけで那津は幸せに溢れてしまって。いっぱいいっぱいで。
お兄ちゃんが、那津を正面で待っててくれている。その優しい眼差しが、那津をふんわりと包む。ああ、那津はいつも、こうしてお兄ちゃんに守られてきたのだ。
本当に、那津は恵まれていたのだな、としみじみ感じるのだ。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
そのたった一言ですら、甘く感じて。那津が顔を上げると、お兄ちゃんの慈しみが溢れた顔、そして、すまし顔のスイ。ああ、本当に、こんなに幸福でよいのだろうか。
「ありがとう」
泣きそうになりながら、そう言うだけで精一杯だった。それでも、お兄ちゃんは。
「おう」
朗らかにそう言って、那津の震える手を、その角ばった大きな両手で、そっと包んでくれたのだった。
「スイはなにを知ってるんや?」
「……にゃあ、にゃあ」『……蛍の気持ちなんて、だだ漏れだにゃ。まどかも啓太も分かってたにゃ。気づいてないのは、鈍感な那津ぐらいなものにゃ。なにせ、那津は自分の気持ちにすら気づいていないのにゃ』
「え、わたしって鈍感?」
急に名指しされた那津がぎょっとすると、スイは「やれやれ」と言うように首を振った。
「にゃあ、にゃあん」『まぁ、こういう環境にいるから、仕方がないのかも知れないのにゃ。でも、そろそろ気づかないといけないと思うのにゃ』
「わたしの、気持ち……」
分からない、なんだろうか。那津は首を傾げるしかない。だが、お兄ちゃんは察したのだろう。
「なるほどな」
と、腑に落ちたような顔で頷いている。
「なっちゃん」
お兄ちゃんは真剣な顔になって、那津を見据えた。那津は思わず緊張する。
「おれ、なっちゃんが好きやねん。妹としてやなくて、ひとりの女性として」
そうはっきりと言われ、那津は一瞬混乱する。しかし次第に言葉の意味を理解して。
「えっ!」
そう声を上げたとたん、那津の心ががつんと殴られ、がむしゃらに揺さぶられたような気がした。
そうか、那津は、那津も、お兄ちゃんが好きだったのだ、男性として。だが那津はお兄ちゃんの妹だから、そして、お兄ちゃんの心は女性で保さんだっているのだからと、ずっと本心を心の奥底に閉じ込めていたのだ。
顔がかぁっと赤くなるのが分かる。自覚をして、あらためてお兄ちゃんを見ようとするのだが、恥ずかしくてまっすぐ見ることができなかった。思わず顔をそらしてしまう。
「にゃ、にゃあん」『蛍、やっと言ったのにゃ。那津も、気づいたみたいなのにゃ』
「え、まさか、なっちゃん」
お兄ちゃんが那津を覗き込む。那津はますますうつむいてしまった。
「ごめん、恥ずかしくて、お兄ちゃんを見られへん。ごめん、時間ちょうだい」
「うん」
お兄ちゃんの声は柔らかい。どこまでも、那津のために。那津だけのために。
頭が、心がふわふわする。そうか、那津がこれまで誰に対しても恋愛で本気になれなかったのは、お兄ちゃんがいたからだ。那津のなかではお兄ちゃんが最上で、至高で、なにものにも代え難くて。
那津はいったいいつから「こう」だったのか。それは那津にも分からない。スイになら分かるのだろうか。お母さんやお父さんは?
ううん、もうそんなことはどうでもよい。那津はお兄ちゃんが好きで、お兄ちゃんもそうだと言ってくれた。それだけで那津は幸せに溢れてしまって。いっぱいいっぱいで。
お兄ちゃんが、那津を正面で待っててくれている。その優しい眼差しが、那津をふんわりと包む。ああ、那津はいつも、こうしてお兄ちゃんに守られてきたのだ。
本当に、那津は恵まれていたのだな、としみじみ感じるのだ。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
そのたった一言ですら、甘く感じて。那津が顔を上げると、お兄ちゃんの慈しみが溢れた顔、そして、すまし顔のスイ。ああ、本当に、こんなに幸福でよいのだろうか。
「ありがとう」
泣きそうになりながら、そう言うだけで精一杯だった。それでも、お兄ちゃんは。
「おう」
朗らかにそう言って、那津の震える手を、その角ばった大きな両手で、そっと包んでくれたのだった。
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