100 / 190
#100 鰹節を作ろう。その2
しおりを挟む
「そんな構える必要はないぞい」
魚を捌くのに使っているシンクが別にある。生きていて血抜きをしていない魚を捌くには、大量の水が必要だ。まな板をシンクに置き、洗いながら捌いて行くのだ。
「まず、まだ元気に動いておるからの、気絶させるんじゃ。包丁の背で頭を叩いての」
壱は鰹を、頭を右にしてまな板に置き、鰓の辺りを左手でしっかり抑えて、震える様に動く頭に包丁を軽く振り下ろした。
すると鰹は見事にぐったりと動かなくなる。
「出来たの。では次に頭を落とすぞい。血が出るから気を付けての。胸びれの下に包丁を入れて、下に向かってしっかりと力を入れて落とすんじゃ。うむ、そうじゃそうじゃ」
鰹の頭を左向きに置き換え、言われた通りに作業を進める。壱の手際を見て、茂造が頷く。見事に頭が落ち、血が流れ出て来た。
「うわ、結構出るんだ」
「生きておるからの。水道で血を洗い流しての。そのまま内臓を取るぞい。喉から腹に向かって斜めに包丁を入れての、腹を開いて行くぞい」
その通りに包丁を動かして行く。切り落とした部分を引き抜くと、大まかな内臓が付いて出て来た。なかなかグロい。
当然排水溝には流せないので、ボウルに入れて置く。細かい血合いなどは包丁の刃先で掻き出して行く。中も外も、血が出なくなるまで流水で綺麗に洗うと、次はまな板を上に上げて、3枚に卸して行く。
「腹身から行くぞい。中骨に刃先を当てる様な感覚で、背骨に向かって開いて行くんじゃ。そうじゃそうじゃ、巧いぞい」
そうして、包丁が背骨に到達した。
「ふ~」
息を詰めて熱中していたので、壱は大きく息を吐いた。
「どうかな。やっぱりじいちゃんやカリルみたいに綺麗には出来ないなぁ」
言いながら、開いた腹身を捲る。初めてなので、所々変に包丁が入ってささくれてしまっている所もあるが、微々たるもの。茂造は満足そうに頷いた。
「いやいや、巧く出来ておるぞい。やっぱり器用なのかのう」
「そうかな」
茂造が褒めてくれるものだから、壱は照れてしまう。
「さ、次は背身じゃぞ」
「うん」
まずは背びれを切り落とし、次に背中から包丁を入れて行く。腹からと同様、中骨に当てる様に。少し慣れて来たか。背骨に当たるまで、腹身の時よりスムーズに感じた。
捲って見ると、腹身よりも綺麗に出来ている気がする。
「うむうむ。では骨を外すぞい。頭の方から包丁を入れての、背骨に沿って当てる様に包丁を動かしての。うむうむ」
ここまで来るとスムーズだった。見事、まずは2枚卸しが出来上がる。
「やった!」
壱が歓喜の声を上げると、片付けに入っていたカリルが見に来てくれる。
「お、イチ、巧いじゃん。綺麗に出来てんじゃん」
「じゃろ? 壱はやっぱり器用なんじゃな」
「だったら嬉しいんだけど」
壱はまた照れて、はにかんだ笑顔を浮かべた。
「もう半身も同じ様にして、3枚にするぞい」
鰹の身をひっくり返し、包丁を入れて骨を外して行く。そして見事な3枚卸しが出来上がる。腹身に着いたままの腹骨もすき取ってやる。
「最後に皮を剥ぐぞい。このままじゃと大きいからの、背身と半身を切り分けるんじゃ。5枚卸しになるの。皮の剥ぎ方は、皮を下にしての、少し包丁を入れたら、皮を引っ張りながらの。そうじゃそうじゃ」
言われた通りに5枚卸しにして、続けて皮を剥いで行く。すると良くスーパーなどでも見る、鰹のさくが出来上がった。
「出来たー」
壱は大きく息を吐きながら声を上げた。なかなかの達成感を感じる。
「で、この鰹はどうすんだ?」
カリルが訊いて来る。
「背中の身は鰹節って出汁の素にして、腹身はまたタタキにしようかな。あ、今日の夜の賄いで少し作ってみようか。にんにくもあるし」
「オレら鰹ってあんま食わねーぜ。あ、この前の、何だっけ、ツナ? あれは旨かったけどな」
「知ってる。みんなが苦手な生臭さが少しましになる調理法がまだあってさ。少しだけ作るから、味見してみてよ」
「そっか。じゃあ楽しみにしてるぜ!」
カリルは言うと、また片付けに戻って行った。
腹身はトレイに乗せて冷蔵庫へ。背身は鰹節にするので、まずは残った小骨を取る。
骨抜き用のピンセットを使って、指の腹で確認しながら1本1本丁寧に抜いて行く。
終わると、ささくれてしまった部分の身を薄く削ぎ切って形を整え、別のトレイに乗せて、これも冷蔵庫に。
「後で鰹節の作り方調べなきゃ。あ、俺も片付けやる。カリル、サント、ありがとう」
「おー」
カリルが返事をし、サントは頷く。
壱はまず使った包丁とまな板を洗い始めた。
さて、休憩時間である。鰹節の作り方を調べた壱は、厨房の冷蔵庫から鰹の背身を出すと、2階のキッチンへ。
まずは鰹を茹でるのだが、鍋底に付かない様に網に置く様だ。ここには網が無いので、金属のマドラーを格子になる様に底に置く。
そこにそっと水を入れて火に掛け、沸いて来たら鰹の背身を静かに入れる。
沸く寸前の状態を保ち、1時間茹でる、のだが。
「サユリ、この鍋に時間魔法1時間、お願いしても良いかな」
「良いカピよ」
テーブルの上のサユリは鼻を鳴らすと、右前足をくるりと回す。
「終わったカピ」
「ありがとう」
熱いので素手では触れない。フライ返しを2本使って引き上げる。そのまま茹で上がった鰹を水のボウルへ。
すぐに温くなるので、水を入れ替えながら、冷まして行く。
傷も殆ど無く、綺麗に出来た。
これでまずは鰹節の手前、なまり節の出来上がりである。
魚を捌くのに使っているシンクが別にある。生きていて血抜きをしていない魚を捌くには、大量の水が必要だ。まな板をシンクに置き、洗いながら捌いて行くのだ。
「まず、まだ元気に動いておるからの、気絶させるんじゃ。包丁の背で頭を叩いての」
壱は鰹を、頭を右にしてまな板に置き、鰓の辺りを左手でしっかり抑えて、震える様に動く頭に包丁を軽く振り下ろした。
すると鰹は見事にぐったりと動かなくなる。
「出来たの。では次に頭を落とすぞい。血が出るから気を付けての。胸びれの下に包丁を入れて、下に向かってしっかりと力を入れて落とすんじゃ。うむ、そうじゃそうじゃ」
鰹の頭を左向きに置き換え、言われた通りに作業を進める。壱の手際を見て、茂造が頷く。見事に頭が落ち、血が流れ出て来た。
「うわ、結構出るんだ」
「生きておるからの。水道で血を洗い流しての。そのまま内臓を取るぞい。喉から腹に向かって斜めに包丁を入れての、腹を開いて行くぞい」
その通りに包丁を動かして行く。切り落とした部分を引き抜くと、大まかな内臓が付いて出て来た。なかなかグロい。
当然排水溝には流せないので、ボウルに入れて置く。細かい血合いなどは包丁の刃先で掻き出して行く。中も外も、血が出なくなるまで流水で綺麗に洗うと、次はまな板を上に上げて、3枚に卸して行く。
「腹身から行くぞい。中骨に刃先を当てる様な感覚で、背骨に向かって開いて行くんじゃ。そうじゃそうじゃ、巧いぞい」
そうして、包丁が背骨に到達した。
「ふ~」
息を詰めて熱中していたので、壱は大きく息を吐いた。
「どうかな。やっぱりじいちゃんやカリルみたいに綺麗には出来ないなぁ」
言いながら、開いた腹身を捲る。初めてなので、所々変に包丁が入ってささくれてしまっている所もあるが、微々たるもの。茂造は満足そうに頷いた。
「いやいや、巧く出来ておるぞい。やっぱり器用なのかのう」
「そうかな」
茂造が褒めてくれるものだから、壱は照れてしまう。
「さ、次は背身じゃぞ」
「うん」
まずは背びれを切り落とし、次に背中から包丁を入れて行く。腹からと同様、中骨に当てる様に。少し慣れて来たか。背骨に当たるまで、腹身の時よりスムーズに感じた。
捲って見ると、腹身よりも綺麗に出来ている気がする。
「うむうむ。では骨を外すぞい。頭の方から包丁を入れての、背骨に沿って当てる様に包丁を動かしての。うむうむ」
ここまで来るとスムーズだった。見事、まずは2枚卸しが出来上がる。
「やった!」
壱が歓喜の声を上げると、片付けに入っていたカリルが見に来てくれる。
「お、イチ、巧いじゃん。綺麗に出来てんじゃん」
「じゃろ? 壱はやっぱり器用なんじゃな」
「だったら嬉しいんだけど」
壱はまた照れて、はにかんだ笑顔を浮かべた。
「もう半身も同じ様にして、3枚にするぞい」
鰹の身をひっくり返し、包丁を入れて骨を外して行く。そして見事な3枚卸しが出来上がる。腹身に着いたままの腹骨もすき取ってやる。
「最後に皮を剥ぐぞい。このままじゃと大きいからの、背身と半身を切り分けるんじゃ。5枚卸しになるの。皮の剥ぎ方は、皮を下にしての、少し包丁を入れたら、皮を引っ張りながらの。そうじゃそうじゃ」
言われた通りに5枚卸しにして、続けて皮を剥いで行く。すると良くスーパーなどでも見る、鰹のさくが出来上がった。
「出来たー」
壱は大きく息を吐きながら声を上げた。なかなかの達成感を感じる。
「で、この鰹はどうすんだ?」
カリルが訊いて来る。
「背中の身は鰹節って出汁の素にして、腹身はまたタタキにしようかな。あ、今日の夜の賄いで少し作ってみようか。にんにくもあるし」
「オレら鰹ってあんま食わねーぜ。あ、この前の、何だっけ、ツナ? あれは旨かったけどな」
「知ってる。みんなが苦手な生臭さが少しましになる調理法がまだあってさ。少しだけ作るから、味見してみてよ」
「そっか。じゃあ楽しみにしてるぜ!」
カリルは言うと、また片付けに戻って行った。
腹身はトレイに乗せて冷蔵庫へ。背身は鰹節にするので、まずは残った小骨を取る。
骨抜き用のピンセットを使って、指の腹で確認しながら1本1本丁寧に抜いて行く。
終わると、ささくれてしまった部分の身を薄く削ぎ切って形を整え、別のトレイに乗せて、これも冷蔵庫に。
「後で鰹節の作り方調べなきゃ。あ、俺も片付けやる。カリル、サント、ありがとう」
「おー」
カリルが返事をし、サントは頷く。
壱はまず使った包丁とまな板を洗い始めた。
さて、休憩時間である。鰹節の作り方を調べた壱は、厨房の冷蔵庫から鰹の背身を出すと、2階のキッチンへ。
まずは鰹を茹でるのだが、鍋底に付かない様に網に置く様だ。ここには網が無いので、金属のマドラーを格子になる様に底に置く。
そこにそっと水を入れて火に掛け、沸いて来たら鰹の背身を静かに入れる。
沸く寸前の状態を保ち、1時間茹でる、のだが。
「サユリ、この鍋に時間魔法1時間、お願いしても良いかな」
「良いカピよ」
テーブルの上のサユリは鼻を鳴らすと、右前足をくるりと回す。
「終わったカピ」
「ありがとう」
熱いので素手では触れない。フライ返しを2本使って引き上げる。そのまま茹で上がった鰹を水のボウルへ。
すぐに温くなるので、水を入れ替えながら、冷まして行く。
傷も殆ど無く、綺麗に出来た。
これでまずは鰹節の手前、なまり節の出来上がりである。
10
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる