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2章 碧、あやかしと触れ合う
第2話 フードファイターという過去
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そういうわけで、碧は人間とあやかしのハーフなのである。大食いなのは見事に二口女の性質を受け継いでいるからだ。だが碧はお母さんと違って、ちゃんと天井がある。重さにして3キロほどだろうか。飲食店の大食いチャレンジなら対応可能だと思う。
お母さんがフードファイターとしてメディアに出ていたのは、お父さんと結婚してからの数年間だ。まだ碧がお腹に宿る前、お母さんはお父さんを支えるためにお仕事を時短パートにしたのだが、同僚に大食い番組のオーディションを勧められたそうなのだ。
お母さんのお仕事場だったカフェでは、まかないとして通常メニューを4割引で食べることができる。どのお食事メニューももともとお手頃価格だったことがあって、お母さんは自分の中で「1時間の時給の範囲内ならどれだけ食べても良い」という縛りを作った。
当時の時給は約1,000円。となると、2~3品は食べることができる。毎日だと飽きが出てしまうので、たまにコンビニのおむすびを大量にだとか、いろいろ挟んでいたが、そのカフェではフードメニューもそれなりに豊富だったので、かなりの頻度で利用していた。
一般的な女性ひとりなら持て余す量をぺろりと平らげ、まだまだ食べれるで、なんて余裕の笑顔で口走るお母さんだったそうだから、スタッフさんの間でお母さんの大食いは知られていたのだ。
「大食い番組かぁ……」
「いやさ? 都倉さんがどんだけ食べられるんかは知らんねんけどね? 今結構それで芸能活動とかしてはる人もいてはるし、都倉さんべっぴんやから、いけるんちゃう?」
お母さんはそんな甘い世界では無いのではとは思ったが、自分がどれだけ食べられるのかは興味があったそうだ。食べるためにはお金がいる。お父さんもお母さんも生きるために働いてはいるが、食だけに掛けてはいられない。それはそうだろう。
オーディションなら、その番組の予算でたくさん食べられるのでは無いか、そんな打算が生まれてしまったのだそうだ。
お母さんは自分の天井がかなり高いことを知っている。何せ二口女なのだから。テレビに出たりすることには特に興味は無い。だが思いっきり制限無しに食べたい。そんな思いに駆られたのだ。
お仕事を終えてお家に帰り、お母さんはお父さんに大食い番組のことを相談した。すると。
「へぇ、それもおもしろそうやなぁ。ほんまはぼくが凪ちゃんにお腹いっぱい食べさしてあげられたらええんやけど、ぼくの給料、普通のサラリーマン並みやしなぁ」
お父さんは申し訳なさげな表情になった。お母さんは焦ったそうだ。
「何言うてんの。わたしがあやかしで規格外なんやから。わたし、あやかしのわたしと結婚してくれた泰三さんにほんまに感謝してる。わたしもお仕事時短にしてるんやし、それはきっとお互いさまっていうんやと思う。せやからそんなこと言わんといて」
「ありがとうなぁ、凪ちゃん」
仲が良くて、大変良いことである。それはともかく。
お母さんがネットで検索を掛けると、東京キー局の大食い番組で大食い女子を募集していた。そこで提出に必要なものをピックアップする。
お母さんはお父さんにスマートフォンで顔写真を撮ってもらい、食べる量の調査に、ホテルのビュッフェに行き、食べるために取ってきたものを同じくスマートフォンのカメラ機能で撮った。もちろんそれらはぺろりとお母さんのお腹の中に収まった。
パソコンから募集フォームに必要事項を入力し、写真を添付して送ると、数日後にお返事があった。そしてお母さんはお仕事のお休みをもらい、東京で行われたオーディションへ。そして見事、テレビ出場権をもぎ取ったのだった。
「オーディションのとき、どんだけ食べたん?」
碧が聞くと。
「カレーやったんやけどね、えっと、カレーって確か1人前が350グラムぐらいで、それをとりあえず15皿食べたから、5キロぐらいかな。周りみんな結構驚いてはった。わたしはまだ余裕やったんやけど」
「そりゃあびっくりされるわ、むしろ引くわ」
けろりというお母さんに、碧は思わず苦笑してしまった。
そして、お母さんは並みのフードファイターより食べる美貌の女子ということで、番組に準レギュラーの扱いで出ることになった。そして「美人すぎるフードファイター」の二つ名が付けられ、人気を博したのだ。
それからお母さんはパートを続けながら、碧を妊娠するまでフードファイターを続けた。存分に食べられることは本当に嬉しかったそうだ。お父さんをひとりにしたくなかったお母さんは、基本東京へは日帰りにしていたそうだが、若かったこともあり、苦にならなかった。
お母さんはパート先ではフロア仕事だったので、ファンに見つけられ、握手やサインを求められたこともあったそうだ。
「しゃしゃって書くサインなんかもちろんあれへんから、名前を横書きしただけやけどね。まぁええ思い出やわ」
お母さんはそう言って、楽しそうに笑っていた。
お母さんの活躍は両親それぞれの実家も応援してくれていた様で、特にお父さん方のお祖母ちゃんがミーハーで、撮影時のお話などを聞きたがったそうだ。
お母さん方の祖父母は「その手があったか」と悔しがっていたそうだ。ちなみにお母さん方のお祖父ちゃんは山男、お祖母ちゃんが二口女で、お母さんは純度100パーセントのあやかしである。お母さんは女性なので、二口女の特性をそのまま受け継いだ。碧と同じだ。
「そんな長い間や無かったけど、結構楽しかったよ。たくさん食べたらみんなが喜んでくれるから。天職やったとも言える。でもわたしのほんまの天職は、お父さんの奥さん」
そんな風にのろけられて、碧は「はいはい」と呆れた返事をしたものだった。
そんな幸せそうなお母さんの左手の薬指には、小さなダイヤモンドがはめ込まれたプラチナリングと、ダイヤモンドとさらに赤い石が埋め込まれたプラチナリングが連なっていた。
お母さんがフードファイターとしてメディアに出ていたのは、お父さんと結婚してからの数年間だ。まだ碧がお腹に宿る前、お母さんはお父さんを支えるためにお仕事を時短パートにしたのだが、同僚に大食い番組のオーディションを勧められたそうなのだ。
お母さんのお仕事場だったカフェでは、まかないとして通常メニューを4割引で食べることができる。どのお食事メニューももともとお手頃価格だったことがあって、お母さんは自分の中で「1時間の時給の範囲内ならどれだけ食べても良い」という縛りを作った。
当時の時給は約1,000円。となると、2~3品は食べることができる。毎日だと飽きが出てしまうので、たまにコンビニのおむすびを大量にだとか、いろいろ挟んでいたが、そのカフェではフードメニューもそれなりに豊富だったので、かなりの頻度で利用していた。
一般的な女性ひとりなら持て余す量をぺろりと平らげ、まだまだ食べれるで、なんて余裕の笑顔で口走るお母さんだったそうだから、スタッフさんの間でお母さんの大食いは知られていたのだ。
「大食い番組かぁ……」
「いやさ? 都倉さんがどんだけ食べられるんかは知らんねんけどね? 今結構それで芸能活動とかしてはる人もいてはるし、都倉さんべっぴんやから、いけるんちゃう?」
お母さんはそんな甘い世界では無いのではとは思ったが、自分がどれだけ食べられるのかは興味があったそうだ。食べるためにはお金がいる。お父さんもお母さんも生きるために働いてはいるが、食だけに掛けてはいられない。それはそうだろう。
オーディションなら、その番組の予算でたくさん食べられるのでは無いか、そんな打算が生まれてしまったのだそうだ。
お母さんは自分の天井がかなり高いことを知っている。何せ二口女なのだから。テレビに出たりすることには特に興味は無い。だが思いっきり制限無しに食べたい。そんな思いに駆られたのだ。
お仕事を終えてお家に帰り、お母さんはお父さんに大食い番組のことを相談した。すると。
「へぇ、それもおもしろそうやなぁ。ほんまはぼくが凪ちゃんにお腹いっぱい食べさしてあげられたらええんやけど、ぼくの給料、普通のサラリーマン並みやしなぁ」
お父さんは申し訳なさげな表情になった。お母さんは焦ったそうだ。
「何言うてんの。わたしがあやかしで規格外なんやから。わたし、あやかしのわたしと結婚してくれた泰三さんにほんまに感謝してる。わたしもお仕事時短にしてるんやし、それはきっとお互いさまっていうんやと思う。せやからそんなこと言わんといて」
「ありがとうなぁ、凪ちゃん」
仲が良くて、大変良いことである。それはともかく。
お母さんがネットで検索を掛けると、東京キー局の大食い番組で大食い女子を募集していた。そこで提出に必要なものをピックアップする。
お母さんはお父さんにスマートフォンで顔写真を撮ってもらい、食べる量の調査に、ホテルのビュッフェに行き、食べるために取ってきたものを同じくスマートフォンのカメラ機能で撮った。もちろんそれらはぺろりとお母さんのお腹の中に収まった。
パソコンから募集フォームに必要事項を入力し、写真を添付して送ると、数日後にお返事があった。そしてお母さんはお仕事のお休みをもらい、東京で行われたオーディションへ。そして見事、テレビ出場権をもぎ取ったのだった。
「オーディションのとき、どんだけ食べたん?」
碧が聞くと。
「カレーやったんやけどね、えっと、カレーって確か1人前が350グラムぐらいで、それをとりあえず15皿食べたから、5キロぐらいかな。周りみんな結構驚いてはった。わたしはまだ余裕やったんやけど」
「そりゃあびっくりされるわ、むしろ引くわ」
けろりというお母さんに、碧は思わず苦笑してしまった。
そして、お母さんは並みのフードファイターより食べる美貌の女子ということで、番組に準レギュラーの扱いで出ることになった。そして「美人すぎるフードファイター」の二つ名が付けられ、人気を博したのだ。
それからお母さんはパートを続けながら、碧を妊娠するまでフードファイターを続けた。存分に食べられることは本当に嬉しかったそうだ。お父さんをひとりにしたくなかったお母さんは、基本東京へは日帰りにしていたそうだが、若かったこともあり、苦にならなかった。
お母さんはパート先ではフロア仕事だったので、ファンに見つけられ、握手やサインを求められたこともあったそうだ。
「しゃしゃって書くサインなんかもちろんあれへんから、名前を横書きしただけやけどね。まぁええ思い出やわ」
お母さんはそう言って、楽しそうに笑っていた。
お母さんの活躍は両親それぞれの実家も応援してくれていた様で、特にお父さん方のお祖母ちゃんがミーハーで、撮影時のお話などを聞きたがったそうだ。
お母さん方の祖父母は「その手があったか」と悔しがっていたそうだ。ちなみにお母さん方のお祖父ちゃんは山男、お祖母ちゃんが二口女で、お母さんは純度100パーセントのあやかしである。お母さんは女性なので、二口女の特性をそのまま受け継いだ。碧と同じだ。
「そんな長い間や無かったけど、結構楽しかったよ。たくさん食べたらみんなが喜んでくれるから。天職やったとも言える。でもわたしのほんまの天職は、お父さんの奥さん」
そんな風にのろけられて、碧は「はいはい」と呆れた返事をしたものだった。
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