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三.日曜の朝は
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翌朝。
夕べ飲み過ぎたせいで頭が痛い。日曜なのでまあ問題はないが……鬱々としていたら、デガラシが大声で騒ぎだした。
「田中! 時間だよ!! テレビ、テレビ……」
「はあ? あの、朝から頭に響くんですけど、何騒いでんの?」
「何って……日曜朝といえば、女児向け変身魔法少女アニメに決まってんじゃん!!」
ああー、そうか。そう言やそうだ。だが、確かに自分はマジノ・リベルテの信者ではあるが、さすがに成人して就職してから最近は、とんとご無沙汰だった。今は何て言うのをやってんだ? デガラシに引っ張られてTVの前に座る。
「ほら! 『魔法少女戦隊クワトロ・カクテル』。先月からやってんの。四人組なんだよ。みんな可愛いよねー」
デガラシが眼をキラキラさせながら、子供の様に熱心に見入っていた。
俺も、さすがにこの歳で没入はキツイかなと思ったのだが、どうしてどうして。キャラデザも作画もクオリティが高く、CGも昔より格段に自然で……何より、ちゃんと男目線も意識した構図や演出も感じとれ、二十代男性がハマると言うのもあながち嘘ではないのだろう。
Aパートが終わってCMになった時、デガラシに聞いてみた。
「さすがにこれは実話じゃないよな」
「えっ!? 何言ってんの? 日朝は、全シリーズ実話に決まってんじゃん!」
しまった。あっちの世界の人の地雷を踏んだか?
「いや……でも、これって毎年一年でタイトル替わるし、それが全部実話って言われても……魔王って一年ものなのか?」
「違う、違う。あー、全く分かってない。アニメは一年単位だけど、魔王って突然現れるし、脈絡なく次々出てくる事もあって一人じゃないのよ。そしてそれぞれに、魔法少女チームが対処してるの。魔王との戦いは同時並行なのよ! リベルテも結成してから魔王倒すまで五年かかったし……それで、その複数ある魔法少女チームのうち、一番戦いが苦しそうなチームがアニメに取り上げられるの!」
「なんでアニメ化? それに王って言う位だから一人なんじゃねーのかよ。」
「だーかーらー。TVの前でみんなが応援してくれると、その分、魔法少女の力が向上するんだって! それに魔王が何人もいるの私も不思議だったんだけど、アルデが言うには昔のヨーロッパとか中国でも王は群雄割拠していたって……」
「そんな……それじゃ、俺と姉ちゃんが一生懸命TVで応援していたのが、ダンケちゃん達の力になってたって事?」
「そういう事! だからあんたも、クワトロのBパート、一生懸命応援しなさい!!」
そう言われちゃ仕方ない。俺は、童心に帰ってクワトロ・カクテルの魔法少女たちを懸命に応援した。クワトロ・モスコミュールちゃん……萌え!
クワトロを観終わったら、腹も減ってきたし、買い物もしたい。
デガラシに俺のジーパンとTシャツと着せ、蒲田まで電車で向かい、とりあえず駅ビルでデガラシの着るもの一式を揃え、昼食にしようと駅の東口を出た。
「あー。なんか田中とデートみたいだねえ」
「やめて。俺、年上趣味じゃないから。
だいたいデガラシは二十八だっけ? 俺の姉ちゃんと同い年じゃん」
「別にいいじゃん。田中は二十四だっけ?」
「よく覚えてんな。まあ五月で二十五だけどね」
「へえ。私は九月生まれ……お昼、どこで食べるの?」
「ああ、この辺うまい店結構あるんだが……日曜だとやってねえとこあるな」
「詳しいね」
「ああ、おれの会社すぐそこ。パロマスクエアっていうビル」
「えー。田中の会社見たい!」
「ええ、いいよ別に。だいたい今日は日曜で休みだよ」
「でも外からだけでも見たいーー」
デガラシがしつこくせがむので、ビルの近くまでいった。
「おお! おっきいビルだね。ところで田中はどんな仕事してんの?」
「ああ、普通の営業。企業相手でコピー機とかパソコンとか売ってる」
「そっか……て、ねえ、田中。あれは何!」デガラシが通りの向こう側を指さす。
「ああ、あれは……最近出来たたこ焼き屋かな。値段が安い割に結構うまいって会社の連中が言ってた様な気がするけど……」
「それじゃ、お昼はあれにしようよ!」
「えー……まあいいけど。ビールはだめだかんな」
そして二人は、その『夢たこ』というたこ焼き屋に入った。日曜のビジネス街という事もあって、お昼時ではあったがそれほど混んではおらず、イートインの座席に陣取った。
「まあまあじゃないか? 値段も手ごろだし」ハフハフとたこ焼きを頬張りながら、俺がそう言ったが、デガラシが違う方向を見ていた。その方向をみると、どうやら開店の御挨拶が壁に張ってある様だ。
「なんだ? あれが気になるのか?」
「うん。ちょっとよく見てくるね」そう言ってデガラシがそのポスターの側に行き、まじまじとそれを眺めている。何が書いてあるのか気になって、たこ焼きを食べ終わった後、俺もポスターの側に行って眺めた。何の事はない、開店のご挨拶と社長の写真のポスターだ。
「田中……これ……」デガラシが指さしたところに、その社長の名前が書いてある。
「足利ルナ……チェーンの社長の名前だよな。知り合いとか?」
「うん間違いない。これ、あしがる。中学の時の同級生」
「へえ。そうなんだ。足軽って、変なあだ名つけてんな」
「そして……マジノ・ノルマンディ……」
「はい?」
◇◇◇
デガラシは昔の仲間に会うために上京したと言っていたが、実際に今、彼女達と連絡が取れている訳ではなく、どこにいるのかも把握していなかった。
夜のツマミ用にテイクアウトで買ったたこ焼きをぶら下げて歩きながらデガラシに聞いた。
「それで何でこっちにいるって思ったのさ」
「それはハンザキが……」
「なんかそのハンザキとよく話はしているみたいだけど、そいつは他のメンバーの事知らないのかよ」
「いや、多分把握しているんだとは思う。でも前からなんだけど、何でも漠然としか教えてくんないんだよ。だいたい現役だった頃はハンザキもいっつも足元ウロウロしてたけど、今は魔力も衰えちゃったから、夢でしか会えないし……会話もちょっとしか出来ない」
「はあ……それでよくこっちに出て来ようとか……一番怪しそうなのそいつじゃね?」
「そうかも知れない。でも足りないものを探したいのは私の本心だし……藁にもすがってじゃないけどさ」
なんか、ちょっとデガラシが哀れに思えて来てしまった。
「でもさ。いきなりノルマンディの手掛かり掴んだんだ。やっぱりお前、何か持ってんだよ」
「うん。そうだよね! やっぱ私はリベルテのセンターだからねー」
励ましたつもりだったのが、当人はもともとそんなに気にしていなかった様だ。
いったんアパートに戻り、荷物を置いて二人で銭湯に行った。大田区は東京二十三区でも有数の銭湯天国で、数は減ったとはいえまだかなりの銭湯が現役で頑張っている。俺は昨日入れなかっただけだが、デガラシは普段は沖縄の海で行水してからホースの水で全身をすすいでいたとかで、ちゃんとした風呂に入るのがいつ以来なのか思い出せないと言っていた。女捨ててるな、こいつ。
「いやー。銭湯最高!! なんかお湯も真っ黒だったけど、肌にいいのかすべすべだし、シャンプーで洗ったら髪が全然ごわごわしないよ! 田中も触ってみる?」
そう言いながらデガラシが長い髪の先を俺の顔に近づけると、ふわっと石鹸のいい匂いがした。
「ああ、いや。いいよ別に。黒いお湯はここいら特有の鉱泉なんだ。身体にも良いらしい。それじゃアパート帰ったら、これからの作戦会議するぞ」
「おー!!」
◇◇◇
「え? マジノ・リベルタの三人って仲良くないの? ずっと戦友だったんでしょ?」
「いやー。別に仲が悪い訳じゃないんだけど……いろいろあって、直接私からノルマに連絡は入れづらいというか……」
テイクアウトのたこ焼きと缶ビールで、作戦会議をしている時の事だ。
元魔法少女マジノ・ノルマンディだった『夢たこ』の社長、足利ルナに面会のアポを入れようと話をしたのだが、デガラシが二の足を踏んでいる。居場所が分かったんなら、手紙でも書けば一発じゃんと思ったのだが、どうもそうではないらしい。
「でもわざわざ沖縄から密航してまで会いに来たんだよね? 何をためらってんの?
あ、そうか。実は莫大な借金があるとか?」
「いや……借金とかじゃなくて……あの田中。正直に話したら、協力してくれる?」
「まあ、話の内容によっては」
「わかった。じゃ正直に言うわ。私ね。あいつを振っちゃったんだよ」
「はいっ!? あの、それって所謂……百合ってやつ?」
「そう。あいつそういう系のマイノリティで、リベルテ卒業後、これからどうしようかって話してた時、ガチで告白されちゃった。でも、私は『ごめん』って」
「で、その後は?」
「いや、別にそのまんま。あいつも納得してくれたんだけど、やっぱその後話づらくなって。そのあと私、風俗勤めちゃったし」
「はいーっ。それで今更会って何を言えばって事かよ? でもまあ、あっちは社長だし、遅まきながら愛人にでもしてもらえば、余生は安泰かもよ」
「いや、そっちの話は置いといても、マジノではあいつと本当に生死を共にした仲だし、今の私の悩みに何かアドバイスはくれそうだなっとは思ってるのよ」
「…………めんどくせえな、おまえ」
「頼むよ田中―。私の処女あげる以外の事なら何でも田中のいう事聞くからさー。あしがるのアポ取ってよー」
「処女はNGなんだ……ま、いらんけど。下手に関係もったら後でヤバそうだし。でもわかった。そこまで言うなら、俺ももう一端の営業マンだ。どこぞの会社のCEOのアポぐらい取って見せるさ。実際、俺の仕事にも役立つかもしれんしな。だからお前は明日、バイト先決めてこい! これ命令な。出来なければ、この協力は致しかねる」
「……わかった。それでお願いします」
「それで……マジノ・アルデンヌとは何も遺恨はないんだよな?」
「あー。特には無いと思うんだけど……そもそも、彼女とは社会的な身分が違うというか、とっつきずらいというか……私が忘れられていなければいいんだけど。アルデンヌの消息は、多分ノルマンディが知ってるんじゃないかな」
「わかった。とりあえず、順番に攻略しような」
夕べ飲み過ぎたせいで頭が痛い。日曜なのでまあ問題はないが……鬱々としていたら、デガラシが大声で騒ぎだした。
「田中! 時間だよ!! テレビ、テレビ……」
「はあ? あの、朝から頭に響くんですけど、何騒いでんの?」
「何って……日曜朝といえば、女児向け変身魔法少女アニメに決まってんじゃん!!」
ああー、そうか。そう言やそうだ。だが、確かに自分はマジノ・リベルテの信者ではあるが、さすがに成人して就職してから最近は、とんとご無沙汰だった。今は何て言うのをやってんだ? デガラシに引っ張られてTVの前に座る。
「ほら! 『魔法少女戦隊クワトロ・カクテル』。先月からやってんの。四人組なんだよ。みんな可愛いよねー」
デガラシが眼をキラキラさせながら、子供の様に熱心に見入っていた。
俺も、さすがにこの歳で没入はキツイかなと思ったのだが、どうしてどうして。キャラデザも作画もクオリティが高く、CGも昔より格段に自然で……何より、ちゃんと男目線も意識した構図や演出も感じとれ、二十代男性がハマると言うのもあながち嘘ではないのだろう。
Aパートが終わってCMになった時、デガラシに聞いてみた。
「さすがにこれは実話じゃないよな」
「えっ!? 何言ってんの? 日朝は、全シリーズ実話に決まってんじゃん!」
しまった。あっちの世界の人の地雷を踏んだか?
「いや……でも、これって毎年一年でタイトル替わるし、それが全部実話って言われても……魔王って一年ものなのか?」
「違う、違う。あー、全く分かってない。アニメは一年単位だけど、魔王って突然現れるし、脈絡なく次々出てくる事もあって一人じゃないのよ。そしてそれぞれに、魔法少女チームが対処してるの。魔王との戦いは同時並行なのよ! リベルテも結成してから魔王倒すまで五年かかったし……それで、その複数ある魔法少女チームのうち、一番戦いが苦しそうなチームがアニメに取り上げられるの!」
「なんでアニメ化? それに王って言う位だから一人なんじゃねーのかよ。」
「だーかーらー。TVの前でみんなが応援してくれると、その分、魔法少女の力が向上するんだって! それに魔王が何人もいるの私も不思議だったんだけど、アルデが言うには昔のヨーロッパとか中国でも王は群雄割拠していたって……」
「そんな……それじゃ、俺と姉ちゃんが一生懸命TVで応援していたのが、ダンケちゃん達の力になってたって事?」
「そういう事! だからあんたも、クワトロのBパート、一生懸命応援しなさい!!」
そう言われちゃ仕方ない。俺は、童心に帰ってクワトロ・カクテルの魔法少女たちを懸命に応援した。クワトロ・モスコミュールちゃん……萌え!
クワトロを観終わったら、腹も減ってきたし、買い物もしたい。
デガラシに俺のジーパンとTシャツと着せ、蒲田まで電車で向かい、とりあえず駅ビルでデガラシの着るもの一式を揃え、昼食にしようと駅の東口を出た。
「あー。なんか田中とデートみたいだねえ」
「やめて。俺、年上趣味じゃないから。
だいたいデガラシは二十八だっけ? 俺の姉ちゃんと同い年じゃん」
「別にいいじゃん。田中は二十四だっけ?」
「よく覚えてんな。まあ五月で二十五だけどね」
「へえ。私は九月生まれ……お昼、どこで食べるの?」
「ああ、この辺うまい店結構あるんだが……日曜だとやってねえとこあるな」
「詳しいね」
「ああ、おれの会社すぐそこ。パロマスクエアっていうビル」
「えー。田中の会社見たい!」
「ええ、いいよ別に。だいたい今日は日曜で休みだよ」
「でも外からだけでも見たいーー」
デガラシがしつこくせがむので、ビルの近くまでいった。
「おお! おっきいビルだね。ところで田中はどんな仕事してんの?」
「ああ、普通の営業。企業相手でコピー機とかパソコンとか売ってる」
「そっか……て、ねえ、田中。あれは何!」デガラシが通りの向こう側を指さす。
「ああ、あれは……最近出来たたこ焼き屋かな。値段が安い割に結構うまいって会社の連中が言ってた様な気がするけど……」
「それじゃ、お昼はあれにしようよ!」
「えー……まあいいけど。ビールはだめだかんな」
そして二人は、その『夢たこ』というたこ焼き屋に入った。日曜のビジネス街という事もあって、お昼時ではあったがそれほど混んではおらず、イートインの座席に陣取った。
「まあまあじゃないか? 値段も手ごろだし」ハフハフとたこ焼きを頬張りながら、俺がそう言ったが、デガラシが違う方向を見ていた。その方向をみると、どうやら開店の御挨拶が壁に張ってある様だ。
「なんだ? あれが気になるのか?」
「うん。ちょっとよく見てくるね」そう言ってデガラシがそのポスターの側に行き、まじまじとそれを眺めている。何が書いてあるのか気になって、たこ焼きを食べ終わった後、俺もポスターの側に行って眺めた。何の事はない、開店のご挨拶と社長の写真のポスターだ。
「田中……これ……」デガラシが指さしたところに、その社長の名前が書いてある。
「足利ルナ……チェーンの社長の名前だよな。知り合いとか?」
「うん間違いない。これ、あしがる。中学の時の同級生」
「へえ。そうなんだ。足軽って、変なあだ名つけてんな」
「そして……マジノ・ノルマンディ……」
「はい?」
◇◇◇
デガラシは昔の仲間に会うために上京したと言っていたが、実際に今、彼女達と連絡が取れている訳ではなく、どこにいるのかも把握していなかった。
夜のツマミ用にテイクアウトで買ったたこ焼きをぶら下げて歩きながらデガラシに聞いた。
「それで何でこっちにいるって思ったのさ」
「それはハンザキが……」
「なんかそのハンザキとよく話はしているみたいだけど、そいつは他のメンバーの事知らないのかよ」
「いや、多分把握しているんだとは思う。でも前からなんだけど、何でも漠然としか教えてくんないんだよ。だいたい現役だった頃はハンザキもいっつも足元ウロウロしてたけど、今は魔力も衰えちゃったから、夢でしか会えないし……会話もちょっとしか出来ない」
「はあ……それでよくこっちに出て来ようとか……一番怪しそうなのそいつじゃね?」
「そうかも知れない。でも足りないものを探したいのは私の本心だし……藁にもすがってじゃないけどさ」
なんか、ちょっとデガラシが哀れに思えて来てしまった。
「でもさ。いきなりノルマンディの手掛かり掴んだんだ。やっぱりお前、何か持ってんだよ」
「うん。そうだよね! やっぱ私はリベルテのセンターだからねー」
励ましたつもりだったのが、当人はもともとそんなに気にしていなかった様だ。
いったんアパートに戻り、荷物を置いて二人で銭湯に行った。大田区は東京二十三区でも有数の銭湯天国で、数は減ったとはいえまだかなりの銭湯が現役で頑張っている。俺は昨日入れなかっただけだが、デガラシは普段は沖縄の海で行水してからホースの水で全身をすすいでいたとかで、ちゃんとした風呂に入るのがいつ以来なのか思い出せないと言っていた。女捨ててるな、こいつ。
「いやー。銭湯最高!! なんかお湯も真っ黒だったけど、肌にいいのかすべすべだし、シャンプーで洗ったら髪が全然ごわごわしないよ! 田中も触ってみる?」
そう言いながらデガラシが長い髪の先を俺の顔に近づけると、ふわっと石鹸のいい匂いがした。
「ああ、いや。いいよ別に。黒いお湯はここいら特有の鉱泉なんだ。身体にも良いらしい。それじゃアパート帰ったら、これからの作戦会議するぞ」
「おー!!」
◇◇◇
「え? マジノ・リベルタの三人って仲良くないの? ずっと戦友だったんでしょ?」
「いやー。別に仲が悪い訳じゃないんだけど……いろいろあって、直接私からノルマに連絡は入れづらいというか……」
テイクアウトのたこ焼きと缶ビールで、作戦会議をしている時の事だ。
元魔法少女マジノ・ノルマンディだった『夢たこ』の社長、足利ルナに面会のアポを入れようと話をしたのだが、デガラシが二の足を踏んでいる。居場所が分かったんなら、手紙でも書けば一発じゃんと思ったのだが、どうもそうではないらしい。
「でもわざわざ沖縄から密航してまで会いに来たんだよね? 何をためらってんの?
あ、そうか。実は莫大な借金があるとか?」
「いや……借金とかじゃなくて……あの田中。正直に話したら、協力してくれる?」
「まあ、話の内容によっては」
「わかった。じゃ正直に言うわ。私ね。あいつを振っちゃったんだよ」
「はいっ!? あの、それって所謂……百合ってやつ?」
「そう。あいつそういう系のマイノリティで、リベルテ卒業後、これからどうしようかって話してた時、ガチで告白されちゃった。でも、私は『ごめん』って」
「で、その後は?」
「いや、別にそのまんま。あいつも納得してくれたんだけど、やっぱその後話づらくなって。そのあと私、風俗勤めちゃったし」
「はいーっ。それで今更会って何を言えばって事かよ? でもまあ、あっちは社長だし、遅まきながら愛人にでもしてもらえば、余生は安泰かもよ」
「いや、そっちの話は置いといても、マジノではあいつと本当に生死を共にした仲だし、今の私の悩みに何かアドバイスはくれそうだなっとは思ってるのよ」
「…………めんどくせえな、おまえ」
「頼むよ田中―。私の処女あげる以外の事なら何でも田中のいう事聞くからさー。あしがるのアポ取ってよー」
「処女はNGなんだ……ま、いらんけど。下手に関係もったら後でヤバそうだし。でもわかった。そこまで言うなら、俺ももう一端の営業マンだ。どこぞの会社のCEOのアポぐらい取って見せるさ。実際、俺の仕事にも役立つかもしれんしな。だからお前は明日、バイト先決めてこい! これ命令な。出来なければ、この協力は致しかねる」
「……わかった。それでお願いします」
「それで……マジノ・アルデンヌとは何も遺恨はないんだよな?」
「あー。特には無いと思うんだけど……そもそも、彼女とは社会的な身分が違うというか、とっつきずらいというか……私が忘れられていなければいいんだけど。アルデンヌの消息は、多分ノルマンディが知ってるんじゃないかな」
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