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六.吉崎碧
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「んっ……くはっ……」ちょっと淫靡で苦しげな声が聞こえた。
何だぁ? 自家発電でもしてるのか? 勘弁してくれよな。
朝っぱらから……まだ何時だと思ってんだ! 時計をみるとまだ五時前だ。エッチな恰好してたらどうしようなどと、ちょっと期待しつつデガラシの方を見たら、ああ、どうやら悪い夢でも見てうなされている様だ。
能天気なこいつでも、怖い夢みるんだ……などと考えながらどうしようかと思っていたら「カズくんっ!!」と大声を出しながら、いきなり飛び起きた。
「ああ、びっくりした。大丈夫かデガラシ?」
声をかけてみるが、デガラシは真っ青な顔で、まだ震えている様にも見えた。
「えっ? 田中? ……あ、そっか。夢か……」どうやら目が覚めた様だ。
「怖い夢だったのか? デガラシらしくもない」
「らしくないは、ご挨拶だね。私だって怖い夢見る事あるよ。それもしょっちゅう……」
「昔の事を思い出すとか?」
「……うん。そうだね……あんまりいい思い出は無いかもね」
「話して気が楽になるんなら、聞くだけ聞いてもいいが……カズくんって誰?」
「!!」俺がその名前を口にしたとたん、デガラシは顔を真っ赤にしてフリーズした。
「ああ、ごめん。プライベートは深く詮索しないわ。ましてや夢だし……」
「うん。ありがと……でも、田中にはいつかポロっと話しちゃうかもね」
「そんときゃそん時だな」
そしてそのまま朝食を取り、デガラシは、ようやく決まったコンビニのバイトに張り切って出かけて行った。
デガラシが本物だったとして、魔法少女が実際にどんな戦いをしてきたのか俺は知らない。アニメで見たまんまという訳はないだろうし、人が傷ついたり死んだりした事だってあるのかも知れない。そんな状況を五年も戦い抜いたのだとしたら、辛い事もたくさんあっただろうし、まあ燃え尽きたとしても周りは何も言えないな。
そんな事を考えながら出社したら、メールが二通来ていた。
一通目は『夢たこ』の足利社長からだった。
先日約束してくれた、マジノ・アルデンヌの情報だ。年賀状からは住所しか判かりませんでしたと書いてある。でもまあ、大進歩だ。それで…‥PS? はは、俺のプレゼン資料ちゃんと見てくれたんだ。本社管理部のPC入替の検討を社内ネットワーク機器の再編成込みで始めるので打ち合わせしたいって……おー、やったじゃん俺!
二通目は……吉崎碧だ。
足利社長からPCの話が行ったでしょ? って、情報早いなあいつ。それで、社長のアポ取りの分、貸しだったので返せと書いてある。あさっての夜、前から気になっていた麻布十番のイタ飯屋を予約済なので七時に来いってか。俺に決定権や拒否権はなさそうだ。
まあ『夢たこ』とはこれからも付き合う事になりそうだし、吉崎と良好な関係を保つのも悪くない。あとはとんでもなく高い店じゃない事だけを祈ろう。
◇◇◇
足利社長に教えてもらった住所を訪ねるつもりなのかデガラシに確認したら、まずは手紙を書くと答えた。ノルマンディの時と同じで、やはりいきなりアルデンヌと直接会う事に抵抗が有る様だ。しかしながら「ああ……私、中卒だし、漢字も苦手なんだよー。ねえ田中、ゴブサタってこの書き方で合ってる?」などどぶちぶち言っていて、やはり面倒くさい。
「なあ。アルデンヌもデガラシの中学の同級生なんだろ? お金持ちって言ってたし、住所もシロガネだし、すんげえ家に住んでたりして……行ってみたほうが早くね?」
「やだ。こしつきは同級生ではあるけど、前も言った様に一ランク上の階層のお嬢様だから、いきなり行って、今の我が身をさらしたくない」
「いやいや、一緒に生死を共にした同志なんだろ? そんな見栄張らなくても会ってくれるだろ。それで何で腰付き?」
「ああ、宮越月代が本名なの。それでその……外見部分の見栄もそうだけど、彼女の一ランク上ってのは、社会的階級だけじゃなくて精神面でもそうでさ。なんかいっつも上から目線で指示するのよ。だから、『自分に足りない何かを探してますー』とか言ったら、いきなり豚目線で睨まれそう」
「はは、なんだよそれ。それなら無理して会いに行かなくてもいいとも思うが……それにしてもその辺の関係性はアニメでもそうだったよな。アルデンヌが参謀で、ノルマンディがディフェンス。そんでもってダンケルクが鉄砲玉!」
「うるさい! 田中の馬鹿……」
そんなこんなで何とか手紙を書きあげ、デガラシは銭湯に行く途中、それを無事投函した。
◇◇◇
「おい吉崎さん。いくらなんでもここは高級すぎないか?」
吉崎碧に借りを返すべく、彼女が予約したイタ飯屋に入ったものの、とっても高級そうな感じでちょっと身の危険を感じている。自慢じゃないが俺の財布の防御力はそれほど高くはない。
「大丈夫よ。ここいらの平均よりちょっと高い位よ!」と吉崎が事もなさげに言うが、いやいや、ここいらの平均がすでにヤバイいでしょ! ワインの種類などもまったく分からないので、吉崎にオーダーを全て任せ切りなのも不安要素だ。
「それにしても田中君。やるじゃない。トップコールでいきなり商談引き寄せるなんて。新人研修の頃は、全く冴えないオタクで……あ、失礼。私、別にオタクを差別している訳じゃないから」
「いいよ別に。オタクは本当の事だし……新人研修の時もよくその話題で同期の連中にイジられてたしな。でも吉崎さんは研修で一度も同じ班にならなかったけど、よくそんな事知ってるね。俺の事なんかOutOf眼中だと思ってた」
「まーねー。今回の足利社長の件で、ちょっと見直したというか……ストアシステム部の別の同期にあなたの事聞いて来たのよ」
なるほど……俺も少しは、吉崎に営業として認められたという事か。
最初は、お互いの周りの同期の近況などをとりとめも無く話していたが、程よく酔いも回ってきたところで、吉崎が切り出した。
「『夢たこ』の本社管理部のPCや社内ネットの商談の件だけどさ……商流、私経由にしてくれないかな? ああ、社内ポイントはもちろん田中君にもちゃんと付けるよ」
ああ、そこが狙いか。うちの会社では複数の営業が一社との大きな商談に関わった時、商流自体を分けてしまうとお客様の決裁や支払が面倒になるので、お客様への販売実績は一人の営業が取りまとめ、あとから他に貢献した営業マンに実績をポイントで社内振り分けする仕組みになっている。人事考課の際はポイントで評価されるのだが、フロントに立った営業は、社内的に大層目立つのだ。仮にだが、社長賞などを貰った時は、この場合、吉崎チームとして表彰される事になる。それで俺の事を調べ直したか……なんとも吉崎らしいな。
「ああ、構わないよ。調達の社内稟議とか回収の確認とか正直苦手だし、まあ君ならお茶の子さいさいだとは思うけど」
「うん、任せて……それで、田中君。正直に答えて。どうやって足利社長口説いたの? まさか築地の料亭の後、お持ち帰りされたとか?」
「いやいやいや。そんな事は……あの社長、百合だし、いやっ、違う! 俺のプレゼンに感動したって言ってた!」
「百合って……あなた侮れないわね。そんな情報どこで……まあ、いいわ。丁度デザートも来たし、この後どうする? 近くに私の行きつけのショットバーがあるんだけど……」
「……お供します」吉崎の眼がNoと言わせないわよと語っていた。
そしてレジに向かいお会計をしようとしたのだが……ははは、全然手持ち現金が足りない。それにしても十五万ってなんだよ! ぼったくりかこの店は!?
カードで払おうか……でも月末足りるかな……そんな感じでおどおどしていたら、吉崎が会計明細を見ながら言った。
「あらー、ごめん田中君。私頼むワイン間違えたー。一桁多かったわ……」
うう、わざとか? わざとじゃないよな……だが、ぼったくりでないと判かった以上、致し方ない。泣く泣くカードで決済した。
「ごめんごめん田中君。次の店は私が奢るからさー」吉崎も結構いい感じで酔っ払っている。そりゃそうだ。あんな超高級ワイン一本空けてしらふだったら世の男達は泣くぞ!
吉崎行きつけのショットバーを出た時は、すでに十一時を回っていた。
あー、まだ電車あるかな? などと考えてたら吉崎がいきなり腕を組んできた。
「田中ぁー。この後どこ連れてってくれるのー?」
はい? えっ、ちょっとそれって……確かにショットバーのカウンターで並んで飲んでる時も、やたら距離が近かった様に思うが……吉崎はやっぱ肉食系?
俺が逡巡していると、吉崎がますますギューッと腕に胸を押し当ててくる。
くー、こいつ本当にいい女だよなーーー。でも酒クセー。相当酔ってるよこれ。
「ふふん。田中って、童貞? いいよ。私が教えてあげるから……」
「いや、その。ちょっと待って! 俺、早く家に帰らないと……」
「ああん? 家帰ってもどうせ一人でしょ? 一人でスコるくらいなら、私と……ね!?」
「違うの……家には一人……」
「はあ!? あんた女いるの? 信じらんない!! オタクのクセに生意気だぞ!
……で、どんな奴?」
「どんな奴って……マジノ・ダンケルク……みたいな……」
「マジノ・ダンケルク? ぷはっ! ファッファッファッ!! なにそれ、ウケるー。いや、いくらオタクだからって、それはちょっと……マジ引くわー。でも私も大好きだったなー……マジノ・リベルテ。小学生位の時か」
「ははは……」なんだよ、オタクを差別しないんじゃなかったのかよ?
「ああ、萎えた。分かった。今日はここまでにしよ。田中はついてこなくていいよ。駅はあっち。まったく……サッサと家に帰って、フィギュアにでもぶっかけてろ。このヘタレ!!」
そう捨てゼリフを吐いて、吉崎は近くのタクシ―乗り場に向かって歩きだした。
何だぁ? 自家発電でもしてるのか? 勘弁してくれよな。
朝っぱらから……まだ何時だと思ってんだ! 時計をみるとまだ五時前だ。エッチな恰好してたらどうしようなどと、ちょっと期待しつつデガラシの方を見たら、ああ、どうやら悪い夢でも見てうなされている様だ。
能天気なこいつでも、怖い夢みるんだ……などと考えながらどうしようかと思っていたら「カズくんっ!!」と大声を出しながら、いきなり飛び起きた。
「ああ、びっくりした。大丈夫かデガラシ?」
声をかけてみるが、デガラシは真っ青な顔で、まだ震えている様にも見えた。
「えっ? 田中? ……あ、そっか。夢か……」どうやら目が覚めた様だ。
「怖い夢だったのか? デガラシらしくもない」
「らしくないは、ご挨拶だね。私だって怖い夢見る事あるよ。それもしょっちゅう……」
「昔の事を思い出すとか?」
「……うん。そうだね……あんまりいい思い出は無いかもね」
「話して気が楽になるんなら、聞くだけ聞いてもいいが……カズくんって誰?」
「!!」俺がその名前を口にしたとたん、デガラシは顔を真っ赤にしてフリーズした。
「ああ、ごめん。プライベートは深く詮索しないわ。ましてや夢だし……」
「うん。ありがと……でも、田中にはいつかポロっと話しちゃうかもね」
「そんときゃそん時だな」
そしてそのまま朝食を取り、デガラシは、ようやく決まったコンビニのバイトに張り切って出かけて行った。
デガラシが本物だったとして、魔法少女が実際にどんな戦いをしてきたのか俺は知らない。アニメで見たまんまという訳はないだろうし、人が傷ついたり死んだりした事だってあるのかも知れない。そんな状況を五年も戦い抜いたのだとしたら、辛い事もたくさんあっただろうし、まあ燃え尽きたとしても周りは何も言えないな。
そんな事を考えながら出社したら、メールが二通来ていた。
一通目は『夢たこ』の足利社長からだった。
先日約束してくれた、マジノ・アルデンヌの情報だ。年賀状からは住所しか判かりませんでしたと書いてある。でもまあ、大進歩だ。それで…‥PS? はは、俺のプレゼン資料ちゃんと見てくれたんだ。本社管理部のPC入替の検討を社内ネットワーク機器の再編成込みで始めるので打ち合わせしたいって……おー、やったじゃん俺!
二通目は……吉崎碧だ。
足利社長からPCの話が行ったでしょ? って、情報早いなあいつ。それで、社長のアポ取りの分、貸しだったので返せと書いてある。あさっての夜、前から気になっていた麻布十番のイタ飯屋を予約済なので七時に来いってか。俺に決定権や拒否権はなさそうだ。
まあ『夢たこ』とはこれからも付き合う事になりそうだし、吉崎と良好な関係を保つのも悪くない。あとはとんでもなく高い店じゃない事だけを祈ろう。
◇◇◇
足利社長に教えてもらった住所を訪ねるつもりなのかデガラシに確認したら、まずは手紙を書くと答えた。ノルマンディの時と同じで、やはりいきなりアルデンヌと直接会う事に抵抗が有る様だ。しかしながら「ああ……私、中卒だし、漢字も苦手なんだよー。ねえ田中、ゴブサタってこの書き方で合ってる?」などどぶちぶち言っていて、やはり面倒くさい。
「なあ。アルデンヌもデガラシの中学の同級生なんだろ? お金持ちって言ってたし、住所もシロガネだし、すんげえ家に住んでたりして……行ってみたほうが早くね?」
「やだ。こしつきは同級生ではあるけど、前も言った様に一ランク上の階層のお嬢様だから、いきなり行って、今の我が身をさらしたくない」
「いやいや、一緒に生死を共にした同志なんだろ? そんな見栄張らなくても会ってくれるだろ。それで何で腰付き?」
「ああ、宮越月代が本名なの。それでその……外見部分の見栄もそうだけど、彼女の一ランク上ってのは、社会的階級だけじゃなくて精神面でもそうでさ。なんかいっつも上から目線で指示するのよ。だから、『自分に足りない何かを探してますー』とか言ったら、いきなり豚目線で睨まれそう」
「はは、なんだよそれ。それなら無理して会いに行かなくてもいいとも思うが……それにしてもその辺の関係性はアニメでもそうだったよな。アルデンヌが参謀で、ノルマンディがディフェンス。そんでもってダンケルクが鉄砲玉!」
「うるさい! 田中の馬鹿……」
そんなこんなで何とか手紙を書きあげ、デガラシは銭湯に行く途中、それを無事投函した。
◇◇◇
「おい吉崎さん。いくらなんでもここは高級すぎないか?」
吉崎碧に借りを返すべく、彼女が予約したイタ飯屋に入ったものの、とっても高級そうな感じでちょっと身の危険を感じている。自慢じゃないが俺の財布の防御力はそれほど高くはない。
「大丈夫よ。ここいらの平均よりちょっと高い位よ!」と吉崎が事もなさげに言うが、いやいや、ここいらの平均がすでにヤバイいでしょ! ワインの種類などもまったく分からないので、吉崎にオーダーを全て任せ切りなのも不安要素だ。
「それにしても田中君。やるじゃない。トップコールでいきなり商談引き寄せるなんて。新人研修の頃は、全く冴えないオタクで……あ、失礼。私、別にオタクを差別している訳じゃないから」
「いいよ別に。オタクは本当の事だし……新人研修の時もよくその話題で同期の連中にイジられてたしな。でも吉崎さんは研修で一度も同じ班にならなかったけど、よくそんな事知ってるね。俺の事なんかOutOf眼中だと思ってた」
「まーねー。今回の足利社長の件で、ちょっと見直したというか……ストアシステム部の別の同期にあなたの事聞いて来たのよ」
なるほど……俺も少しは、吉崎に営業として認められたという事か。
最初は、お互いの周りの同期の近況などをとりとめも無く話していたが、程よく酔いも回ってきたところで、吉崎が切り出した。
「『夢たこ』の本社管理部のPCや社内ネットの商談の件だけどさ……商流、私経由にしてくれないかな? ああ、社内ポイントはもちろん田中君にもちゃんと付けるよ」
ああ、そこが狙いか。うちの会社では複数の営業が一社との大きな商談に関わった時、商流自体を分けてしまうとお客様の決裁や支払が面倒になるので、お客様への販売実績は一人の営業が取りまとめ、あとから他に貢献した営業マンに実績をポイントで社内振り分けする仕組みになっている。人事考課の際はポイントで評価されるのだが、フロントに立った営業は、社内的に大層目立つのだ。仮にだが、社長賞などを貰った時は、この場合、吉崎チームとして表彰される事になる。それで俺の事を調べ直したか……なんとも吉崎らしいな。
「ああ、構わないよ。調達の社内稟議とか回収の確認とか正直苦手だし、まあ君ならお茶の子さいさいだとは思うけど」
「うん、任せて……それで、田中君。正直に答えて。どうやって足利社長口説いたの? まさか築地の料亭の後、お持ち帰りされたとか?」
「いやいやいや。そんな事は……あの社長、百合だし、いやっ、違う! 俺のプレゼンに感動したって言ってた!」
「百合って……あなた侮れないわね。そんな情報どこで……まあ、いいわ。丁度デザートも来たし、この後どうする? 近くに私の行きつけのショットバーがあるんだけど……」
「……お供します」吉崎の眼がNoと言わせないわよと語っていた。
そしてレジに向かいお会計をしようとしたのだが……ははは、全然手持ち現金が足りない。それにしても十五万ってなんだよ! ぼったくりかこの店は!?
カードで払おうか……でも月末足りるかな……そんな感じでおどおどしていたら、吉崎が会計明細を見ながら言った。
「あらー、ごめん田中君。私頼むワイン間違えたー。一桁多かったわ……」
うう、わざとか? わざとじゃないよな……だが、ぼったくりでないと判かった以上、致し方ない。泣く泣くカードで決済した。
「ごめんごめん田中君。次の店は私が奢るからさー」吉崎も結構いい感じで酔っ払っている。そりゃそうだ。あんな超高級ワイン一本空けてしらふだったら世の男達は泣くぞ!
吉崎行きつけのショットバーを出た時は、すでに十一時を回っていた。
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はい? えっ、ちょっとそれって……確かにショットバーのカウンターで並んで飲んでる時も、やたら距離が近かった様に思うが……吉崎はやっぱ肉食系?
俺が逡巡していると、吉崎がますますギューッと腕に胸を押し当ててくる。
くー、こいつ本当にいい女だよなーーー。でも酒クセー。相当酔ってるよこれ。
「ふふん。田中って、童貞? いいよ。私が教えてあげるから……」
「いや、その。ちょっと待って! 俺、早く家に帰らないと……」
「ああん? 家帰ってもどうせ一人でしょ? 一人でスコるくらいなら、私と……ね!?」
「違うの……家には一人……」
「はあ!? あんた女いるの? 信じらんない!! オタクのクセに生意気だぞ!
……で、どんな奴?」
「どんな奴って……マジノ・ダンケルク……みたいな……」
「マジノ・ダンケルク? ぷはっ! ファッファッファッ!! なにそれ、ウケるー。いや、いくらオタクだからって、それはちょっと……マジ引くわー。でも私も大好きだったなー……マジノ・リベルテ。小学生位の時か」
「ははは……」なんだよ、オタクを差別しないんじゃなかったのかよ?
「ああ、萎えた。分かった。今日はここまでにしよ。田中はついてこなくていいよ。駅はあっち。まったく……サッサと家に帰って、フィギュアにでもぶっかけてろ。このヘタレ!!」
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