【R18】特攻E小隊

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第二十四話 絶対絶命!?

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 友軍陣地には、アイリス少尉たちが踏みとどまってくれていた。みんなの顔をみたとたん、涙があふれ出た。本当に彼女たちの助力がなければ、俺たちは生還できなかったに違いない。
「ナイスアシスト! ローアイ少尉、沙羅ちゃん! うっわ! 少尉、クッサッ――」
 クリティカルヒットが決められてメグはご満悦だ。
 とりあえず、カレンに沙羅を診てもらおうとしたが、沙羅はもう意識は取り戻したようだ。
「マナ酔いとは……おこちゃまね―」
 弱弱しい声でカレンが話しかけると、沙羅が、か細い声で答えた。
「……うっせ―ばばぁ。これでも小隊長の首で、三回くらいイケちゃったんだぞ」
 アセったが、どうやらまわりには聞こえなかったようだ。
「カメリアたちも負傷兵も、ついさっき到着して、すぐ後方に移動させたわ。多分あなた達が最後よ。私たちもすぐにここを引き払いましょう!」
 アイリス少尉の指示で、周りが撤退準備を始めたまさにその時、
「小隊長、ドラゴンが起き上がります! もお、メグが『やったか?』とか叫ぶからぁ」
 リサが悲痛な叫びをあげ、その場の全員が、一瞬凍りついた。
「あっちゃ―、やっぱボスキャラは二回戦有りだよな―」
 沙羅が塹壕につっぷしたまま、小声でつぶやく。

 間近で見ていたが、メグの偃月斬は確かに急所にクリティカルヒットした。奴のタフさが、計算を上回ったのか? しかも奴は手負いとなって、かなりお怒りのようで、全身が真っ赤に輝きだしている。
「どらごんノ咽頭部ニまなガ集結。ぶれすノ予兆ト推定」
 ポコがアラートを発して激しく明滅する。
「……だめだ。さっきの偃月斬でマナ使い切っちゃった―」メグが叫ぶ。
「くそ、カレン! シールドだ!」
 この近距離では、カレンのシールドでも心もとないが、無いよりはマシだ。
「ダメ~、完全にガス欠~」
 なっ、いかんっ。このままでは、ここにいる全員、炭になっちまう。
 奴がゆっくり口を開き始め、喉の奥に、青白く輝く光球が見える……
 次の瞬間、俺の体が勝手に動いた。

「カレン、すまんっ!」
と言うやいなや、俺はそばにいたカレンの制服を思い切り引きちぎった。
 彼女の、大きくはないが、形のよい乳房が露わになる。
 そしてそれを両手でわし掴みにし、思い切り吸い付いた!
「えっ、あっ、小隊長? ……え―――――!
 お、男っ、い、い、い、いやぁ―――――――――――」
 そうしてカレンの体が青白く光り出し、その光が壁となって、急速に拡大する。
 俺はその光の壁に十数m弾き飛ばされ、後ろにあった大きな木の幹に、したたか撃ちつけられた。そしてその光の壁に、ドラゴンが放った極大ブレスが衝突して、さらに大きな爆風が起き、俺はさらにふっ飛ばされた。

「くそっ、いててててて……」
 ……どうやら命はあるようだ。
 アイリス少尉と若い兵士たちが駆け寄ってくる。
「大丈夫? ローアイ少尉!」
「ああ、なんとかな……それよりみんなは?」
「無事よ。あなたの機転でカレンさんが最後の力を振り絞ってくれて、なんとか奴のブレスをかわせたわ」
「よかった……それで奴は?」
「あそこで動かずにじっとしてる。多分マナをほとんど使っちゃったから、再度攻撃してくるにしても、ちょっとは時間あるかもね」
「それじゃ、その隙に撤退だ。おれは……多分アバラの二、三本やったようだ。今後の指揮を、アイリス少尉、君に任せる」

 兵士の肩を借り、足を引きずりながら塹壕までいったん戻った。
 カレンは口から泡を吹きながら、上半身裸のまま、白目をむいて倒れていた。
 あんな中でも、ハミルが魔法陣を維持しつづけてくれており、それもカレンの最後の力に多いに役立ったようだ。
 エルが心配そうに俺の顔を見ながら言った。
「小隊長、大丈夫ですか。すごい出血ですよ……」
「ああ、木にしこたま打ち付けられて、後頭部をかなり切ったようだが、もう応急処置はしてもらった」
「そこは、姫の聖水がたっぷりかかっているから大丈夫――」
 沙羅が小声で、さらっとヤバいことを言う。

 よく見ればエルもほとんど半裸で、スカートや太腿もびしょびしょだ。カレンと二人で本当にここまでよく頑張ったと思う。敵の人間兵は、いまのところ、ドラゴンの前まで出てくる気配はなさそうだ。
「さあ、今のうちに撤退しよう。みんなよく頑張ったな」
 そう言いながら、アイリス少尉の方を見ると、アイリス少尉だけでなくリサ、メグも顔がこわばっている。そして、その視線の先には、大きく口を開けたドラゴンの喉の奥が光り始めている様があった。

「ははっ、これは……間に合いそうもないわね」
 アイリス少尉が達観したかのようにつぶやいた。
 くそ、奴はマナ吸収も神様級だっていうのか!

「次弾発射マデ約二分ト推定」
 ポコが、俺たちの最後までの時間を教えてくれるが、この満身創痍の状況では、みんな二分では、奴の射程から逃げられない。

(みんなを巻き添えにして……くそ、俺は指揮官失格だな……)
 瞬間、短い残り時間をどう過ごそうかなどと考ていたが……
 
 まだあきらめていないやつがいた!

「小隊長。私を使って下さい!」
 エルが大声を上げた。
「このまま何もしないで、みんな死んじゃうなんでイヤですっ! 私、もうカレンさんにさんざん暖められていますので、最後の一押しを小隊長がして下されば、あいつを攻撃できると思います。まだハミルさんも頑張ってくれていますし、さっきの攻撃が、あと少し足りなかっただけで、もうちょっとでも魔法弾が当たればなんとかなるかも知れません。
 お願いです、小隊長。
 ………………
 お、思いっきり私を愛して下さい!」

 悲痛な少女の叫びが、戦場に響き渡った。
 もうまわりのみんなも誰も驚かず、優しいまなざしで俺とエルを見守っている。

「……よしっ、わかったエル。俺も男だ。そこまで言われてやらないわけにはいかん!   
 みんなすまんが、各自ちょい後ろの塹壕に伏せていてくれ。
 ハミル陸士、大変申し訳ないが、今一度力を貸してくれ」
「はいっ、もちろんですっ!」
 ハミルも、彼女を守っている盾の推し兵たちも、まだ士気は萎えていないようだ。

 俺はエルを連れ、二人きりで陣地の一番前で中央の塹壕に入った。
「いいんだな、エル」
「もちろんです。宜しくお願いします。うふっ?」
「よ―し、最後に一矢報いてやろうな」
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