【R18】特攻E小隊

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第二章 E小隊・南方作戦

第三話 エルフの里

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 翌朝、俺はアイリス中尉に後を託し、沙羅分隊のマイケル兵長ら数名の推し兵とポコとともにエルフの里に先行し、沙羅の状況確認をすることとした。
 エルもカレンもステージが終わったら後から駆け付けると言ってくれたが、そんなにやみくもに大勢で押しかけても何かと先方にご迷惑かもしれないし、せっかくの機会なので予定通り、明日は終日休暇にして明後日の帰隊でよく、ビーチで新品の水着をみんなに披露して見せておけと指示した。

 バルタン半島からは、首都ヘルゼンに向けて蒸気機関車が走っており、それを使用しても首都まで八時間。首都からエルフの森まで、車でさらに半日はかかる。まあ到着は明日朝か。

「私は、エルフの森に行ったことはありませんが、中尉はエルフの森に帰られるのは、いつ以来になるのですか?」
 首都へ向かう客車の中で、マイケル兵長が話かけてきた。
「うーん、軍に入隊して以来だから、それこそ百年くらい帰っていないかも。俺は、両親を子供の時、狩猟事故で亡くしていてな。兄弟もいないんで親戚の叔母さん家で暮らしていたんだが、ちょっと肩身が狭くて、学校卒業を機に軍に入隊したんだ」
「はは、百年ですか……人間とエルフでは時間の感じ方も違うんでしょうけどね」

 マイケルは、実直な感じの好青年で、昨年の要塞戦の時、沙羅を身を挺してかばってくれたこともあり、俺も気にいっている。その時、沙羅が渡したご神体は、十二師団の基地内にある推し小隊の控え室に神棚を作って、額装して飾ってあるらしい。沙羅も、一度見に行ったことがあるらしいが、自分のぱんつが額装されているっていうのは一体どういう感じなのか……。

 そんなたわいもない話をしつつ、夜になって首都で車に乗り継ぎ、翌早朝にエルフの里の中心部に着いた。
 我々の来訪は、すでに軍から長老府に連絡が行っているはずだが、「マダ、チョット時間ガ早スギますネ」とポコが言うので、朝もやの中、里内を軽く散策した。

 今、エルフの全人口は二万人くらいか。昔とそんなに変わらないな。
 風景も……自分が軍に入るため飛び出した時と……ほとんど変わっていない。
 本当に百年間、時間が止まっているんではないかとさえ思える。
 それでも、よく見ると、各路地の井戸がモーターポンプになっているところが結構あり、マイケルが、これなどが今回のエルフ徴兵の見返りの一部ですかねと説明してくれた。

 長老府は、王城兼役所みたいな役割のところで、約束の時間に伺ったところ、一行は大きな広間に通された。

「皆さん、ようこそいらっしゃいました」
 よく通る厳かな声とともに、多少年配ではあるようだが、とても美しい、整った顔立ちの女性が入ってきた。この人は写真で見たことがある。

 そう、鶴万寿(ツルマンジュ)・誉様だ。
 沙羅は大ばば様と言っていたし、写真はずっとお若いころのものと勝手に思っていたため、大層驚いたが、多分、自分の叔母なんかより若く見える。

「ようこそ、長老府へ、ローアイ中尉と皆さん。いつも沙羅が大変お世話になっております」
「あっ、いえ、ツルマンジュ様。こちらこそ、沙羅君には大変お世話に……じゃなくて、いつも助けてもらって……」
「ほほ、慌てなくても大丈夫ですよ。先日、かなり細かいところまで、沙羅に自慢されましたから……自慢の最愛の小隊長さんだって!」
 ……
 くそ―、一体どこまで正しく伝わっているのか……冷汗が出る。

「それで、沙羅さんなのですが……いや、その前に、沙羅さんのお話だと、お加減がすぐれないと伺っていたのですが、大丈夫なのですか。それと、そのあと沙羅が、いや沙羅さんが連絡もなく軍に戻ってこないため、なにかあったのかとお伺いさせていただいた次第です」
 色々話していると何が飛び出してくるかわからないため、とりあえず一気に要件を伝えた。

「いろいろとお騒がせして申し訳ありませんね。
 まず、私の健康のお話ですが……すいません。あれは沙羅を呼び出すための方便です。そうでも言わないとあの子は絶対帰ってきませんので。
 それと、今の居場所の件なのですが……軍には大変申し訳ないのですが、沙羅は除隊扱いにしていただけないでしょうか?」

「えっ?」一同、びっくりして思わず声が出た。
 ツルマンジュ様が続ける。
「いきなり通信のみで伝えるのも失礼かと思い、どなたか軍の使者がいらっしゃったら直接言葉でお伝えするつもりでしたが、ローアイさんが来てくれて本当に良かった。沙羅が一番信頼している方なら、多分にこちらの事情もお汲み取り頂けるかと存じますので」
「それでは、その事情はお話いただけるのですね」
「もちろんです。ここでは何ですので、奥でお茶でも飲みながらお話ししましょう」

 隣の部屋に大きなテーブルとお茶の用意がしてあり、お菓子や果物も何種類かおかれていた。俺とマイケルら一行はそれぞれ着席し、お話を伺うこととなった。

「まず、繰り返しお詫び申し上げますが、軍をだますようなことをして本当に申し訳ありません。先ほど私の健康のお話がありましたが、ご存じのように、こう見えても明日突然お迎えが来てもおかしくない年令ではございます。
 それで、早めに後継者だけは決めておこうということになりまして……」
「それで、一族でお打合せをされるため、沙羅……さんを、呼び出されたと」
「いいえ、違います。あの子が後継者なんです。私が長生きしすぎたりとか、いろいろな事情があって、誉一族の直系は今や、あの子しかいないのです」

「えっ? ええ―」
 みんなで再度驚いた。
 あの沙羅が、将来のエルフ族の指導者? 
 いやいや、悪い冗談にしか聞こえないぞ。

「はぁ―。皆さんが驚かれるのも当然ですよね。
 そんなわけで幼少期から、お姫様よろしく、甘やかして育てられてしまい……頭はそんなに悪くないとは思うのですが、如何せん、がさつで乱暴で……どれだけ皆さんにもご迷惑をおかけしたかと思うと、本当に汗顔の至りです。
 それでも、ローアイさんという頼もしい殿方がそばで補佐して下さるのなら、私は沙羅に家督を譲って、早めに隠居しようかと……」

「ちょっと待ったぁ―
 ……あの―、ツルマンジュ様。沙羅……さんは私のことをどのように説明を……」
「ええ、とても信頼できる頼れる殿方で、一生の伴侶として何も不足はない。すでに何回か性交渉もされていて、自他ともに認める男女の関係だとか……。
 ……………………
 ……もしかしてこれウソですの?」

「…………あの、沙羅……さんは、私も部下としてとても信頼し、頼りにはしているのですが、性交渉とか、自他ともにとかは……すいません! でも、正直、多少エッチな気持ちを抱いたことはあります!」
「ああっ、ローアイさん。正直に申して下さってありがとうございます。
 ……なるほど……私も老い先短しと、少し焦ってしまったかも知れませんね。
 にしても、確かにあなたは信頼するに足る方のようです。あなたの気持ちはともかく、沙羅があなたにお熱なのは間違いなさそうですね」
「それで、沙羅さんはいまどちらに?」
 なるべくそっち方向にいかない様、話の先を変えてもらおう。

「あの子は、エルフの長たる資格を得るための試練に向かっています。それを終えて帰ってくるまでは、しきたりで私たちも呼び返したりすることができません。戻ってくるまでひと月かふた月の間かとは思いますが、その間だけでも軍のお仕事を猶予していただけないでしょうか。もちろん、帰った暁にはしっかりとお灸をすえ、後継者の話はいったん白紙に戻し、沙羅を軍に戻します。そして今後のことは、ローアイさんにも入ってもらって、その後、ゆっくりご相談させて下さいね」

 うん、結局は巻き込まれるんだな、俺。
 それはそうとして、行先や試練の内容に関しても、しきたりで教えられないとのことだったので、その日は仕方なく長老府を後にした。
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