5 / 19
追憶の旅4
しおりを挟む
しかし次の瞬間、そんな幸せな思い出の一ページは気紛れな旅の案内人の手によって造作も無くめくられてしまう。
そこで私はふと気付く。
そうか、私は旅をしているんじゃなくて、旅をさせられているんだ……と。
そして次に私の目に映し出されたのは記憶に新しい、つい数時間前の光景だった。
これでこの長かった不思議な旅もきっと終わり。でも、これが終わったらどうなっちゃうんだろ……私の意思に関係無く進行していくこの旅に、小さな不安が顔を覗かせたのだった。
そんな私の視界に広がる、段々と落ち着き始めた夏の陽射しがまるで暖炉に灯る火のように温かなオレンジ色で染まる私の部屋。
そこで私は、エアコンでいつもより強めに冷やした室内で、姿見の前に立ってお母さんに浴衣を着付けてもらっていた。
「やっぱり莢果は白が似合うわね」
「ほんと?少しは可愛く見えるかな?」
「そりゃ見えるわよ。だって私の子だもん」
鏡に映るお母さんはそう言って何故か照れ臭そうに微笑んだ。
「何それ? ていうか私やっぱりこの白いのにして良かった。あのピンクのやつだとちょっと子供っぽかったよね」
「やっぱり」
お母さんは、夕陽を浴びてきらきらと輝く帯を片手に鏡越しに私へと視線を送る。
「何が?」
「莢果、値段の事気にしてたでしょ?」
お母さんはそう言いつつ私のお腹に巻いた帯をギュっと強く締めた。
そこで私はふと気付く。
そうか、私は旅をしているんじゃなくて、旅をさせられているんだ……と。
そして次に私の目に映し出されたのは記憶に新しい、つい数時間前の光景だった。
これでこの長かった不思議な旅もきっと終わり。でも、これが終わったらどうなっちゃうんだろ……私の意思に関係無く進行していくこの旅に、小さな不安が顔を覗かせたのだった。
そんな私の視界に広がる、段々と落ち着き始めた夏の陽射しがまるで暖炉に灯る火のように温かなオレンジ色で染まる私の部屋。
そこで私は、エアコンでいつもより強めに冷やした室内で、姿見の前に立ってお母さんに浴衣を着付けてもらっていた。
「やっぱり莢果は白が似合うわね」
「ほんと?少しは可愛く見えるかな?」
「そりゃ見えるわよ。だって私の子だもん」
鏡に映るお母さんはそう言って何故か照れ臭そうに微笑んだ。
「何それ? ていうか私やっぱりこの白いのにして良かった。あのピンクのやつだとちょっと子供っぽかったよね」
「やっぱり」
お母さんは、夕陽を浴びてきらきらと輝く帯を片手に鏡越しに私へと視線を送る。
「何が?」
「莢果、値段の事気にしてたでしょ?」
お母さんはそう言いつつ私のお腹に巻いた帯をギュっと強く締めた。
0
あなたにおすすめの小説
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
“熟年恋愛”物語
山田森湖
恋愛
妻を亡くし、独りで過ごす日々に慣れつつあった 圭介(56)。
子育てを終え、長く封じ込めていた“自分の時間”をようやく取り戻した 佳奈美(54)。
どちらも、恋を求めていたわけではない。
ただ——「誰かと話したい」「同じ時間を共有したい」、
そんな小さな願いが胸に生まれた夜。
ふたりは、50代以上限定の交流イベント“シングルナイト”で出会う。
最初の一言は、たった「こんばんは」。
それだけなのに、どこか懐かしいような安心感が、お互いの心に灯った。
週末の夜に交わした小さな会話は、
やがて食事の誘いへ、
そして“誰にも言えない本音”を語り合える関係へと変わっていく。
過去の傷、家族の距離、仕事を終えた後の空虚——
人生の後半戦だからこそ抱える孤独や不安を共有しながら、
ふたりはゆっくりと心の距離を縮めていく。
恋に臆病になった大人たちが、
無理をせず、飾らず、素のままの自分で惹かれ合う——
そんな“優しい恋”の物語。
もう恋なんてしないと思っていた。
でも、あの夜、確かに何かが始まった。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる