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3.野ション編(光児・萌衣)

3.野ション編(光児・萌衣)

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「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 ――息急き切らせて走り続け、進一郎は浜の岩陰へと辿り着いた。
 十五分もすれば一周できてしまうような狭い島ではあるけれども、ここならば人目にはつくまい。
 そう思い、ふと一つの岩を超えると。
「………………ッッ!?」
 ひとりの少女と、目があってしまった。
 いや――このはオンナの子ではない。
 そう、She-Xxxy'Sしぃし~ずのマネージャー、香山かやま光児こうじだ。

「し……進一郎クン……ッッ!?」
 光児は怯えたような声を上げた。
「あ……あのッ、その……こ……このことは誰にも……ッ」
「え? え……?」
 戸惑いながら、進一郎はもう一度、光児の様子をまじまじと見据える。
 小麦色の肢体にワンピースの純白水着をまとい、その下腹部はフリルで覆われ、オトコの子であることは容易にバレないようになっているのだが――今の彼はどういうわけか、そのフリルの前を両手で抑えている。
 ほそやかな少年の肢体は、何かをガマンするかのようにぷるぷると細かく震えていた。
「あ、ひょっとして光児クン、おしっこ……?」
「あ……あうぅ……このことは、誰にも言わないで……っ」
 懇願しながら、光児は一歩一歩、水の中へと足を踏み入れていく。
 ――あ、そーか、要は海の中でしちゃえば……。
 光児の意図に気づき、進一郎は感嘆する。
「うん、大丈夫、誰にも言わないから!!」
 そう言った辺りで光児は腰まで海に浸かり、こちらへと向き直って、気弱げに笑った。
「そうだよ、トイレにも行けないなんておかしいもん、みんな海でしちゃえば……!」
 進一郎の言葉をよそに、光児はその身体を小さく震わせる。
「あ……はぁぁ……♥」
 と、彼は頬を微かに染め、愛らしいため息をもらした。
 どうやら用を足し終えたらしく、そこでまた岩場へと戻ってくるが――。
「え……こ……これ……ッッ!?」
 身体を水から出して、光児は悲鳴を上げた。
 何しろその白い水着は水に入ったとたん少年の肢体に貼りつき、その薄皮は完全に肌を透かしてこちらに全てを伝えてしまっていたのだから。
 ――と、その時。
 設置されたメガホンから、心臓を突き破らんばかりの警告音が響いてきた。
「ひいいいいいぃぃぃぃぃ……ッッッッッ!!!!!」
 胸と股間を腕で抑え、悲鳴を上げる光児。
 ――ただ今、ルール違反者が発見されました!
 続いて響いてきたのはさくらの嬉しげな声。
 ――ご覧ください、ルールを犯して海で放尿する者がいます!
「え……?」
 意味がわからず、進一郎もぽかんと口を開ける。
 ――晶瑞学園4年C組・梶谷かじや真心まこクン(11)が海で放尿するという規則違反を犯しました! “旅のしおり”の212pにもある通り、海での放尿は禁止! というのも……。
 その時、どこからともなくドローンが飛んでくる。
「え? えええぇぇぇッッッ!?」
 わけがわからず、パニくる光児の周囲を、ドローンはまるで「超巨大な蚊」のようにぶんぶん飛び回った。
「あうっ!? や……やだ……っ! あっち行ってよッッ!?」
 どうしていいかわからず手をバタバタ振り回す光児の胸部を、ドローンがかすめる。
 ――と、客船から「大きいお友だち」の歓声が聞こえてきた。
 なるほど、ドローンのカメラがこの光景を映し出しているのだろうと、進一郎にも見当がつく。
 今はきっと、日焼けしないままの白い肌も淡いピンクの乳首も、スクリーンにアップで映し出されているのだろう。
 ――そもそも今回、生徒たちが着用している水着は、水に入る仕様にはなってないからです!
 嬉しげな、さくらの声。
 つまり、水に入らせまいとして、わざとこんな水着を……?
 進一郎が思う間にも、光児は悲鳴を上げる。
「あん、何、やだ、あうぅぅ……ッッ!?」
 ドローンが高度を下げ、光児の股間周りを飛び回り出した。
「あはぁんッッ!?」
 水着はお尻に貼りつき、その愛らしい双丘も見る者に伝えている。
 また、ひらひらとフリルが踊る度、その下に隠れた水着の股間部には、少年の生白い茎も、細かな皺の刻まれた袋も、全てが見えてしまう。
 ドローンはそれをスクリーンに上映し、記録しているのだろう。
「や……やだ……ッ、あうぅぅ……見ないでぇ……ッ!」
 顔を真っ赤にし、ドローンに対して懇願する間にも、少年のペニスはむくむくと変化を催す。
「あ……あぁ……ッ、や……やだぁぁ……ッッ!!」
 そんな光児の泣き声を掻き消すかのように、またさくらのはしゃいだ声が響いた。
 ――ご覧ください! 今、真心の可愛らしいモノはみなさんの熱い眼差しを受けて、大きくなりつつあります!
 その言葉通り、ちょこんと申し訳なさげに下を向いて水着に収まっていた肉茎は、今や上を向いて、頑なに強張っていた。
 ドローンはそんな少年のペニスを、執拗に捉え、中継していたのだ。
「酷い!!」
 これは抗議してやらないと……。

 義憤に燃え、進一郎は客船へと歩み出したが――。
 その時、岩陰にもうひとり、誰かがいることに気づく。
Hejsanヘイサン! 」
 見れば、脳天気な顔でこちらに挨拶してきたのは萌衣めい=Den Haggデンハーハだ。

「萌衣クン、どうしてこんなところへ……?」
 進一郎の問いに、萌衣はことなげに返した。
「おしっこだヨ」
「へ?」
「何か騒がしいけど……おしっこならその辺ですればいいんじゃ……?」
「……あ、言われてみれば」
 感嘆して、進一郎がぽん、と手を叩く間にも、萌衣はその場にしゃがみ込んだ。
 身にまとったビキニのボトムへと手をかけ、膝まで降ろす。
 ぷるんッ。
 と、腰をかがめたその股間から、零れ落ちるようにペニスが姿を現した。
「んんぅ……ッ」
 萌衣が鼻にかかった甘い声を上げると、幼い肉茎が震え、そしてそれを契機にして、先端から尿が迸った。
 しゃああああああああ……ッ。
 一条の水流は強い陽射しの光を反射し、きらきらと淡いピンク色の輝きを放つ。
 そう、萌衣は尿が薔薇色になる、特異体質なのだ。
 ショッキングピンクの一条はそのまま弧を描き、浜の白砂を削っていった。
 そんな彼の放尿と同時、またも中央ステージの方から歓声が上がる。
「え……?」
 不審に思い、周囲を見渡すと、またもドローンが飛来しつつあるのが見えた。
 それは、まるで萌衣と睨みあうかのように、かがんだ彼の腰の高さで滞空飛行を始めた。
Vadバッド?(何?) 一体ナニを……?」
 そんな萌衣の問いに答えるかのように、またさくらの声が響く。
 ――また違反者です! 違反者は4年C組・萌衣=Den Haggクン(12)、禁止されている浜辺での放尿です!
 こりゃダメだ、早く止めないと……!
 決意し、進一郎は再び、客船へと向かう。

 と、客船のラウンジでは、スクリーンに萌衣のペニスが大写しにされていた。
 太腿(もも)と太腿の間に鎮座する肉茎が頼りなげに下を向き、そして包皮から僅かに覗けた先端、その先端から鮮紅色の水流が迸る様が、はっきりと映し出されている。
「ちょっとキャップ! 一体これは……?」
 が、さくらはこともなげに返してきた。
「一体も何も、ルール違反を犯した萌衣が悪いんでしょ? “旅のしおり”の382pを開いてご覧なさい!」
 なるほど、野ションも予め禁じられていたようだ。
 画面は放尿の快楽に恍惚となる萌衣のアップ、そして放尿姿を後ろから捉えた姿と、次々に切り替わっていった。
 そして、白砂の上にできた、小さなピンクの水たまりが広がり、やがて海へと向かって小さな小さな川のように流れていく様も――。
「はぁぁ……♥」
 恍惚の表情で紅い尿を排泄し続ける萌衣だが、目の前でぶんぶんと飛び回るドローンに、さすがに顔を顰めた。
Vadバッド? おしっこの邪魔だヨ?」
 と、ドローンからさくらの声が響き渡る。
「――邪魔も何も、島では野ション禁止です!」
Nejネイ,してないケド?」
 覗かれていたと気づいていないのか、堂々と嘘をつく萌衣へと、さくらが返した。
「嘘をつきなさい、あなたの股間!!」
 と、スクリーンに萌衣の股間が大写しになり、観客たちは歓声を上げた。
 純白のポリエステルの股間の膨らみの部分は、しっかりと淡いピンクのシミが広がっていたのだから。
「ご覧いただいている萌衣クンの放尿動画も、三千円でのご提供です!」
 さくらのアナウンスに、また観客たちが大いに沸く。
「いや、ルール違反は分かったけどさ。だからって盗撮して、動画を売るというのは……」
 進一郎の抗議に、しかしさくらは涼しい顔で返す。
「そのこともちゃんと、事前に言ってあるんですけど? “旅のしおり”の501pを見てご覧なさい!」
 そう言われると、進一郎も返す言葉がなくなる。
 ――ひょっとして今回の臨海学校は、ずっとこの流れが続くのか……?
 進一郎の脳裏には、そんな疑念がかすめた――。
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