身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ

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1章 いらない子、アシェ

11 居場所

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「アシェ。ここだ。開けてくれ」

「はい」

ドアに手をかけて、扉を開けてみる。
入るとその部屋には、すごく大きなベッド。
勉強机に柔らかそうなソファー。
本棚には本がぎっしり詰まっている。
そして大きい窓にはカーテンが付けられていた。

「相変わらずヴァルドさんの部屋はこんなに広いのに、綺麗っすねー」

「お前の部屋が汚すぎるんだ。
アシェ。お前の部屋が空くまで、ここで暮らしてもらって構わない。
オレは執務室にいることが多い。
好きに使ってくれ」

「こ、こんな大きくて綺麗な部屋……。
ぼくも、居て、いいんですか……?」

そこは、今までぼくの部屋にはなかった物ばかりが広がっていた。

「勿論だが……敬語は要らない。
これからここで、皆と暮らすんだ。
少しずつ、慣れていってくれ」

「そうっすよ!遠慮はなしっすよ」

「あ……、ありがとう、ござい、ます。
ヴァルドさん。リオットさん……」

さっき止まったはずの涙がまた出て来てしまう。男なのにって怒られてしまう。

「な、泣かないで欲しいっす!アシェくん!
このくらい普通っすよ。
それに誰かと一緒のがきっと楽しいっすよ。これから自分とも、たくさん話しましょう」

「……うん。リオットさん……」

シャツの袖で涙を拭う。
するとヴァルドさんがまたタオルを渡してくれた。





それからリオットさんは書類の不備を直すために、騎士団作業室へと向かった。
また会いに来るって言ってくれた。
ヴァルドさんはため息をついていたけれど。

「アシェ。団の支給服だ。
一番小さいサイズがこれしかなかったんだが、着てみてくれないか?」

「はい」

団の支給服を手渡される。
団員たちが部屋着として使うものだってヴァルドさんは言っていた。
ぼくが今来ている服よりさらさらで、着心地がいい。

「わあ……」

「やはり上下ともぶかぶかだな。
すぐにもうワンランク……いやツーランク下のサイズの物を準備させる。
悪いが今日はこれで我慢してくれ」

たしかに袖は手がすっぽり隠れるほど長かった。でも、こんな新品の服をぼくに着せてくれるなんて。

「……ううん。すごく、うれしい」

袖が長くてだぼだぼでも構わない。
こんなに綺麗なんだもの。

「アシェ」

「わ……」

突然ヴァルドさんがぼくのことを抱え上げた。

「ヴァルド、さん……なんで抱っこ……」

「いや。しばらくここで休んでいてくれ。
色々あって疲れただろう。
後ほど騎士団庁舎を案内するからな」

「あ、ありがとうございます……」

こくりと頷く。
ヴァルドさんはぼくを、部屋の真ん中にある2人掛けソファーに座らせた。

「あ、の……」

「なんだ?」

「ぼくは、死んだことに、されますか?」

「…………」

お義母さんとレオン義兄さんが望むのは、ぼくが罪を償っていなくなること。

ここにいるのがもし知られたら、レオン義兄さんはぼくが罪を償ったって思わないかもしれない。

「……アシェが不自由になるような生活は絶対させない。
だが今はまだ……ここで好きなだけ本を読んでいてくれるか?」

ヴァルドさんの部屋にはたくさん本がある。
ここで読んでても、怒られないんだ。

「オレからのお願いだ」

「わ、わかりました」

「敬語。そこは、分かった。だろう」

「あ、う……?」

ぼくは首をかしげる。まだ慣れなくて、つい敬語が出てしまう。

「少しここで待っていてくれ。
……すぐ、終わらせてくる」

ぽんぽんと頭を優しく撫でられて、ヴァルドさんは部屋を出た。

その時のヴァルドさんの表情は、一瞬優しかったけれど、すぐに決意に満ちた表情に変わっていた。
それが何を意味しているのか、ぼくにはまだよく分からなかった。

部屋を見渡す。
ここで……暮らしていいなんて。
ヴァルドさんの部屋はとても綺麗で、要らないもの置き場とされていたぼくの部屋とは正反対。

この座らせてくれたソファーもふかふか。
お尻が沈んで柔らかくて動けなくなりそう。

こんな素敵な場所にぼくが一緒に居ていいと言ってくれて、またぽろりと涙が出そうになった。





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