傷物令嬢って私のことですか?

ルーキッドアン

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ナターシャが方々に吹聴しているのか、ネズミ算式なのか「西の辺境伯領から息女が来るらしい」という噂は王都に広まっていった。

レストランやカフェやドレスショップで貴族令嬢が噂話に花を咲かせていた。
「一度も王都に来たことのない田舎者」
「デビュタントさえ行われていない娘」
「誰も知らない謎の令嬢」等々、真実に近しい話を凌駕して
「顔に醜い傷が有るらしい」
「傷のせいで家族から隠されてきたようだ」
「性格に難のある問題児みたいね」という醜聞が面白可笑しく令嬢、令息の口に上がっていた。

ナターシャの取り巻きたちは「どうやらニコラス様に近付くつもりらしい」「図々しい女なのね」と噂に尾ひれが付き、傷物令嬢を成敗してやろう!という気運であった。
終いには王都の靴屋を訪れたターニャに
「パーティーでは、件の傷物令嬢に一泡吹かせてやりませんこと?」と、ブライオニーとターニャの関係性を知らない令嬢から赤羅様な悪意を耳打ちされたのだった。

この噂話はジョセフを始めランディ、ブライオニーにも共有されていたので、ますます王都には近付かないブライオニーであった。

勉強、マナーレッスン、ダンスレッスンも食傷気味のブライオニーが、いよいよ退屈を覚える頃。
ガルシュ領から雄々しい漆黒の馬が到着。
伝令の早馬の如く駆けてきたギルバートであった。

「アリオン(馬)!?」
ブライオニーが声を上げる。

「ビニー、そこはギルバート!!って言ってあげて」

「ええ、そうね、もちろん!」と言ってブライオニーは駆け出した。

「ギルバート!アリオン!」

アリオンは疲れも見せず久しぶりの友達ブライオニーに鼻を寄せる。

「オースティン伯爵、サイモン辺境伯からの伝言を預かって参りました。」

オースティン当主へ挨拶し手紙を手渡す。

「フォーク家の不穏さ、万が一に備えてギルバート殿が護衛に付くそうだ」と手紙を読んだジョセフが説明する。

父上の差配か!ランディがギルバートと握手する。

「ネイサンがランディ様だけでは心配だと」

「何だと?!」

笑い合う二人。

今日からこの邸にギルバートも滞在するのね!
あぁ手合わせが出来たら良いのに!
「ねぇギルバート」
とブライオニーもギルバートに駆け寄ろうとすると

「ビニー、剣術も体術も駄目だよ。ギルバートも付き合わないでね」
秀才ランディは読心術もあるらしい。

「承知しております」ギルバートはランディに頭を下げて、ブライオニーを見た。
ムゥーと鼻にシワを寄せるブライオニーが可愛らしくて思わず笑った。

「なぁに?」

「見た目は立派なレディなのに、変な顔しちゃ駄目だろう?」

「前から立派なレディですけど!」

「くくっ...ビニー、ホント、喋らないほうが良い...」

「なんてこと!!酷いね、アリオン!」

ブライオニーが絡めば「ビニー、ギルバートとアリオンをを休ませてあげなさい」とランディに諭されるのであった。

「だって、ギルバートが...」とブツブツ言い募りながらも久し振りに心弾むブライオニーであった。
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