傷物令嬢って私のことですか?

ルーキッドアン

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ランディが人波を縫ってブライオニーと共にこちらへ来るようである。
ギルバートはランディから言われていたようにナターシャに出来得る限りの愛想を振り撒いて足止めしておいた。
合流したならば策士に任せれば良い。

「ギルバート。」

ブライオニーの声にナターシャを見つめていたギルバートの意識が移ったように思う。
それだけで歯ぎしりするほど悔しいナターシャであった。
睨むように声の主を振り返れば、ブライオニーの隣には貴公子然としたランディ・ガルシュがいる!慌てて最上級の笑顔を貼り付けたナターシャであった。

ギルバートがナターシャから離れてブライオニーの左手に立つ。ランディは右手に。
両手に華の本人も美しき華であるから周囲からは溜め息と賛辞がこぼれる。

美しきガルシュ令嬢と令息、謎の美男子。
眼福~という雰囲気を察知してナターシャは本能的に前に出た。
『はじめまして。フォーク候爵家のナターシャですわ』にっこり笑って挨拶をするナターシャ。

「ランディ・ガルシュです」

『ランディ様、宜しけれ...』

「ギルバート、ビニーが喉が渇いたようだ」

「炭酸水か何か貰ってこよう」

「いいえ、一緒に行きましょう。ここは...人が多すぎるから」

ブライオニーはギルバートの腕を取った。
ギルバートもブライオニーの背に手を当てる。

『あのっ!』
ナターシャはランディに素っ気なくされた事がショックであったが瞬時に立ち直る。
ギルバートも居るのだし都会の令嬢らしくこなれ感を出さなくては。

『ランディ様、ギルバート様、どうぞこのままで。
私が飲み物をこちらに用意させますわ』と言って横を向けば“承知しました”とばかりに何処かの令嬢が両手にグラスを持ってやってきた。

ブライオニーを庇うようにスッとギルバートが前に立つ。
ランディもその令嬢に向けて停止するよう胸の前に手を翳した。

「いえ、結構。
ブライオニーに何が入っている分からない物を口にさせたく無いからね」とランディ。

ギルバートもまるで誰かにワインを掛けられるのを警戒したような動作であった。

『そ、そんな。何か入っているだなんて!』

「わ、私もただグラスをお渡ししようと...」

ナターシャと令嬢は心外です!と言う様な顔でランディとギルバートを見上げた。

(『こんなデカい女が美男子二人に守られるなんて!こういうのは私こそが似合うのに!悔しい!』)
笑顔を保っているものの心中はイライラが募っていく。
田舎娘に一言言わなくては気が済まなくなってきたナターシャであった。

『ブライオニー嬢はご自分が社交界に疎いことを言い訳にして、随分と我儘を通し過ぎではないのかしら?』

ナターシャの甲高い声がひときわ通るので、自然と周りの者もその声を聞き取ってしまうが、ナターシャ本人は興奮もあって気付いていない様子であった。

『貴方、私と同い歳でしょう?お兄様方に甘え過ぎではなくて?』

『あぁ、甘えてみせるのが「手」なのかしら?』

ブライオニーはゆっくり瞬きした。
(やっと私を視界に入れたわね。
私に挑んで来たわよね、お兄様?
私、社交界デビューしちゃって良いですよね?ね?)
...と訴える瞳でランディを見れば「どうぞ~」とランディの掌が水平に動いた。

その間もナターシャの取り巻き令嬢が「そうよそうよ!」「ランディ様に甘え過ぎよ」とナターシャに加勢している。

ギルバートの腕から離れてナターシャを見つめるブライオニー。
「私の家門では...」
落ち着きのあるアルトの声がよく通る。

「何事も初手が肝要でございますれば、己の行く先を知り、相手を知る事は必須ですので...」とゆっくりナターシャと取り巻き令嬢らを見渡す。

「皆様から「一泡吹かせてやりましょう」だの「場違いであることを思い知らせてやるわ」だのと言われたのですもの、警戒もいたします。」

『「「「!!!!」」」』








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