傷物令嬢って私のことですか?

ルーキッドアン

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ナターシャの取り巻きたちは居心地が悪く退出する者もいたが、表立っては混乱無くパーティーは再開された。

王太子夫妻も寛容で、ブライオニーのところへ来て「社交界デビューおめでとう」と言ってくれたのであった。

ターニャが「さて、いっぱい練習したワルツですよ、ビニー」と茶目っ気たっぷりに言うものの、パートナーのギルバートは踊れない。全く。ひとっつも。

ブライオニーは予定通りに、デビュー最初のダンスは兄のランディと踊ろうと思った。
あ、でも待って。お兄様のパートナーはターニャだわ!

「お兄様、ファーストダンスはターニャと踊って来て。その後、私のデビューにお付き合いくださいませ」

ブライオニーが笑ってそう言うと、承知したよとランディはターニャを誘ってフロアへ進んで行った。

「ビニー、ごめんな」とギルバート。
ギルバートはワルツなど踊ったこともないからパートナーの役目は果たせない。

「全然!」ブライオニーはフロアのランディとターニャを眺めながら、気にしないでと言った。

「その代わり、帰ったら遠乗りに付き合って!めちゃくちゃ馬に乗りたいの!」

「ああ、勿論だ」

絶対だよ?帰ったら直ぐだよ?と念を押す。
わかったよ!とギルバートもブライオニーの髪をくしゃっと撫でる。

「もーやめてってば」

じゃれ合うブライオニーとギルバート。
ブライオニーは今やっと緊張から解き放たれたと感じた。
あー早くガルシュに帰りたい!!
と、

『ガルシュ辺境伯令嬢、ブライオニー嬢』

左手から声が掛かった。
紳士の礼を取る青年。

『アシュトン公爵家、ゲイリーと申します
もし、宜しければワルツをお誘いしたい』

「!!!」

今日の主役、王太子と結婚したソフィア様の実兄、ゲイリーであった。

ターニャとポリーから徹底して教わった社交界のマナー。
格上の相手からダンスを誘われたら応じるべし!
(嘘でしょ?!でも、断れない...のよね?)

「光栄にございます。不慣れではございますがよろしくお願いします」とカテーシーで応えるブライオニーであった。

ワルツ1曲分が終わって、戻って来るランディたちと入れ替わるように、フロアへ向かうゲイリーとブライオニー。
その姿にええっ?と驚愕するランディとターニャであった。


ブライオニー人生初の“練習では無い本気のワルツ”は、百戦錬磨の公爵令息の完璧なリードで完璧に成功した。
ゲイリーからは、とてもお上手ですと賛辞も頂いた。
こちらこそ、とても踊りやすかったです、ありがとうございました...と御礼をすると、「改めてデビューおめでとう」と颯爽と戻って行くゲイリーであった。

その後、ランディ、ジョセフ、サイモンと踊り、周囲の紳士らに、美しい背中と艶めかしい太腿をチラリと披露してブライオニーのデビューは終了した。
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