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はやしまさひろ

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 両開きのドアを挟んで、長めの座席が並んでいる。左側には誰もいない。右側に迷彩ズボンを履いている男が座席のど真ん中に座っている。黒の網上げブーツに、ズボンの裾が入り込んでいる。緑のランニングシャツを着ていて、浅黒くてテカテカの鍛えられた腕が突き出て見える。顔には真っ黒な煤のようなものを塗りつけている。髪の毛は刈り上げられ、天辺にある短めの髪の毛をジェルで固めて突き立てている。おでこには白くて真ん中に赤い丸のあるハチマキをしている。古臭い、頑固そうな男だ。
 彼は両手に黒光りした機関銃を手に持ち、ホーム側の窓に向けて構えている。機関銃からは物凄い数の銃弾が溢れ、その時を待っている。よく見るとズボンのベルトにいくつかの手榴弾がぶら下がっている。きっと、どこかにナイフでも隠していることだろう。
 彼の姿には落ち着きがない。この寒い季節だというのに、身体中から汗が溢れ出し、強張った目つきで辺りをウロウロと見回している。特に今は、私のことが気になるようだ。他の乗客に気を取られながらも、私を中心に視線を動かしている。嫌な感じの男だ。関わり合いたくないタイプの代表選手のようだ。
 彼は映画の中のランボーを弱々しくしたような感じだ。映画の中と違い、そこにいるランボーからは少しも恐怖を感じられない。ついでにいうと、哀愁も漂っていない。ただ少し、危険な狂気を漂わせてはいる。それはいい意味ではなく、最悪の狂気だ。なにをしでかすか分からない、天然の狂気ともいえる。
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