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第6話 逃走
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「ああっ!」
「きゃぁっ!」
私は追突された衝撃に踏ん張りがきかずに倒れて、石畳みにサラを放り出してしまう。
――くっ、早く起き上がらないと…。
急いで立ち上がろうとするが、疲れからか足が思うように動かない。
ジタバタと、もがくように動くがうまく立ち上がれない
私がもたついている間に――後ろからドムドムと奴の足音が聞こえてくる…悲鳴も一緒だ…。
私は絶望感に苛まれていた。体が強張っていく。
何か、何でもいいから考えなければ…。
疲れた頭で考えを巡らせる。その時ふと気が付いた。
追突された事により私達二人は道の端にいたのだと…。
――もしかしたら、見逃してくれるかも知れない!
恐怖から後ろを振り向けなかったが、足音からあの黒い怪物が一体であろうと私は推測した。
あの怪物達の生態は分からない…。だが、私達は道から外れた位置に倒れている…ならばわざわざ攻撃されるような事はないのでは…と思ったのだ。
――お願い…通り過ぎてっ…!!
私は息を殺し、気配を出来るだけ消しながら祈った…。たとえ、この場をやり過ごしたとしても、きっと一緒に紛れ込んだ小型の魔物に遭遇したら、私達では一体ですら倒す事はできないだろう。それでもその可能性にかける他なかった。
だが…その祈りは無情にも届くことはなかった。
足音が私の…そう――真横で止まったのだ…。
――あぁぁ…な、んで…。
なぜだ…他にも人がいるはずだ…。それなのに…。
あまりの間の悪さに絶望する所か、泣きたくなってくる。
「ぅ、くっ……。」
見られて、いる…?
そして恐怖で振り向く事が出来ないが、まるでこちらをじっと凝視されている…そんな気がした。
――まずいまずい…早く何か考えないと…。
私は辺りに目線を向ける。
だがこんな恐怖した状態では、何も思いつく事はなかった。
せめて、娘だけでも…。
ふと、サラと目が合った。
そして、こちらを見て力なく笑ったように見えた。
――えっ?
そう思ったのもつかの間、サラは――怪物をまるで睨みつけるようにして唸りだしたのだ。
――駄目っ! そんな事をしたら…!
奴に睨まれているという事を理解する、そんな知能があるかは分からない…。だが危険なの事は確かだろう。
「ァ…ラッ…」
名前を呼ぼうにも恐怖からか、うまく声にも出せなかった。
すると、ふと体が軽くなった感覚があった。
理由はすぐに分かった。私に向けられていた視線が――移ったのだ…サラに。
あぁぁぁ!
何とか…何とかならないのか…。考えを巡らせるがどうにもならない。
そして怪物の足音が数歩分して私から遠ざかる。娘の方に近づいていったのだ…。
私は無力だ…あの時と同じで結局は何も出来ずにただ見ているだけなのか…。
こんなことなら…もっともっと優しくしてあげれば…。
私はまた失う事になるのか…。
昔の嫌な記憶が呼び起こされる…。
私は本当は力が欲しくはなかった。
力を持つという事はその責を果たさなければならないからだ…。
そんな責任は負いたくはなかった。
だが、今は守るために何でもいい――力が欲しかった。
私の目の前で怪物がサラに手を伸ばしていく。
――やめてっ!!
そして直後――破裂音がした。
「――へっ?」
私はそんな間抜けな声を出してしまった。
それは目にした光景が想像と違ったからだ。
娘の目の前にいた黒い怪物は、瞬いた瞬間に地に伏しており拉げていた。
私は何があったのか一瞬過ぎて理解が追い付かなかった。
そしてその上には――全身金色の兜と鎧に身に包んだ人物が立っていた。
――あの人はあの時と同じ…。
それは、十年前の厄災に見たのと同じ…変わらぬ姿だった。
ふと気が付くと、すでに彼の姿は見当たらなかった。
首を動かし辺りを見渡してみると、すでに他の魔物の元へ向かい交戦しているようだった。
「……お、おい、今のってまさか『金色の英雄』か?」
「元・五英雄の? 確か十年前に引退してなかったか?」
すると、近くの路地に隠れていたのであろう人物達が顔を覗かせて、こそこそと彼の方を見て話をしていた。
「なんで今更になって……」
「……どうでもいいだろ、助かったし」
「それも、そうだな…」
――そうか、私達は…助かった、のか…?
助かった…それをようやく理解した瞬間どっと疲れが押し寄せてきて、私は急に眠くなってきた。
「――っ! ママッ!?」
娘の声が聞こえてくる。サラも無事だったのだ、本当によかった…。
「――しっかりして! ママッ!」
サラの心配する声を聞きながら、私はゆっくりと目を閉じ眠りについた。
≪己が信条:『愛しき者の為に』が発現しました≫
「きゃぁっ!」
私は追突された衝撃に踏ん張りがきかずに倒れて、石畳みにサラを放り出してしまう。
――くっ、早く起き上がらないと…。
急いで立ち上がろうとするが、疲れからか足が思うように動かない。
ジタバタと、もがくように動くがうまく立ち上がれない
私がもたついている間に――後ろからドムドムと奴の足音が聞こえてくる…悲鳴も一緒だ…。
私は絶望感に苛まれていた。体が強張っていく。
何か、何でもいいから考えなければ…。
疲れた頭で考えを巡らせる。その時ふと気が付いた。
追突された事により私達二人は道の端にいたのだと…。
――もしかしたら、見逃してくれるかも知れない!
恐怖から後ろを振り向けなかったが、足音からあの黒い怪物が一体であろうと私は推測した。
あの怪物達の生態は分からない…。だが、私達は道から外れた位置に倒れている…ならばわざわざ攻撃されるような事はないのでは…と思ったのだ。
――お願い…通り過ぎてっ…!!
私は息を殺し、気配を出来るだけ消しながら祈った…。たとえ、この場をやり過ごしたとしても、きっと一緒に紛れ込んだ小型の魔物に遭遇したら、私達では一体ですら倒す事はできないだろう。それでもその可能性にかける他なかった。
だが…その祈りは無情にも届くことはなかった。
足音が私の…そう――真横で止まったのだ…。
――あぁぁ…な、んで…。
なぜだ…他にも人がいるはずだ…。それなのに…。
あまりの間の悪さに絶望する所か、泣きたくなってくる。
「ぅ、くっ……。」
見られて、いる…?
そして恐怖で振り向く事が出来ないが、まるでこちらをじっと凝視されている…そんな気がした。
――まずいまずい…早く何か考えないと…。
私は辺りに目線を向ける。
だがこんな恐怖した状態では、何も思いつく事はなかった。
せめて、娘だけでも…。
ふと、サラと目が合った。
そして、こちらを見て力なく笑ったように見えた。
――えっ?
そう思ったのもつかの間、サラは――怪物をまるで睨みつけるようにして唸りだしたのだ。
――駄目っ! そんな事をしたら…!
奴に睨まれているという事を理解する、そんな知能があるかは分からない…。だが危険なの事は確かだろう。
「ァ…ラッ…」
名前を呼ぼうにも恐怖からか、うまく声にも出せなかった。
すると、ふと体が軽くなった感覚があった。
理由はすぐに分かった。私に向けられていた視線が――移ったのだ…サラに。
あぁぁぁ!
何とか…何とかならないのか…。考えを巡らせるがどうにもならない。
そして怪物の足音が数歩分して私から遠ざかる。娘の方に近づいていったのだ…。
私は無力だ…あの時と同じで結局は何も出来ずにただ見ているだけなのか…。
こんなことなら…もっともっと優しくしてあげれば…。
私はまた失う事になるのか…。
昔の嫌な記憶が呼び起こされる…。
私は本当は力が欲しくはなかった。
力を持つという事はその責を果たさなければならないからだ…。
そんな責任は負いたくはなかった。
だが、今は守るために何でもいい――力が欲しかった。
私の目の前で怪物がサラに手を伸ばしていく。
――やめてっ!!
そして直後――破裂音がした。
「――へっ?」
私はそんな間抜けな声を出してしまった。
それは目にした光景が想像と違ったからだ。
娘の目の前にいた黒い怪物は、瞬いた瞬間に地に伏しており拉げていた。
私は何があったのか一瞬過ぎて理解が追い付かなかった。
そしてその上には――全身金色の兜と鎧に身に包んだ人物が立っていた。
――あの人はあの時と同じ…。
それは、十年前の厄災に見たのと同じ…変わらぬ姿だった。
ふと気が付くと、すでに彼の姿は見当たらなかった。
首を動かし辺りを見渡してみると、すでに他の魔物の元へ向かい交戦しているようだった。
「……お、おい、今のってまさか『金色の英雄』か?」
「元・五英雄の? 確か十年前に引退してなかったか?」
すると、近くの路地に隠れていたのであろう人物達が顔を覗かせて、こそこそと彼の方を見て話をしていた。
「なんで今更になって……」
「……どうでもいいだろ、助かったし」
「それも、そうだな…」
――そうか、私達は…助かった、のか…?
助かった…それをようやく理解した瞬間どっと疲れが押し寄せてきて、私は急に眠くなってきた。
「――っ! ママッ!?」
娘の声が聞こえてくる。サラも無事だったのだ、本当によかった…。
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サラの心配する声を聞きながら、私はゆっくりと目を閉じ眠りについた。
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