私の戦う理由 ~帰ってきた英雄はお義兄様~

転落人

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プロローグ

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 空が段々と赤く染まっていく、日が沈んできているようだ。

 大きな屋敷、そして広々とした中庭。
 そんな中で私は仰向けに倒れていた。
 風があたり少し心地が良い。
 だが別に好きで倒れているわけではない。
 私は打ちのめされていた。

「――アンタはよく頑張ったよ…」

 そうだ…私は頑張った、頑張ったじゃないか…。
 やれるだけの事はやったはずだ。

「これで、終わりだ…」

 私は剣を突き付けられた。

 蹴り飛ばされたり、踏みつけられたり…。
 まともに戦う力もないというのに意地を張って、何をしているのだろうか。
 いつも通り、誰かがなんとかしてくれるはずだ。
 別に私が頑張る必要などないはずなのに…。

「…降参したほうがいい」

 剣が下げられる。
 実力差があるのは分かってはいた、結局勝てなかった。
 それでも惨めな気分だった。
 もう諦めよう…そう思った時だ。

 薄れゆく意識の中。

「――頑張れっ!」

 声が聞こえてくる。

「――勝って!!」

 まったく…無茶ばかり言う子だ…。
 普段は聞き分けがいいというのに、こういう時は歳相応でわがままばかりなのが困る。

 私は痛む体を無視して立ち上がり、剣を正眼に構えた。

「やめておけ……」

 本当にやめた方がいいと思う、なのになんで立ち上がっているんだろう。

「後悔はしたくないから…」

 私はそう言った。
 今までみたいに逃げて後悔したくなかった…。

「……アンタいいやつだな…俺の親もそんなんだったらな」

 さっき会ったばかりだが悪い人ではないのだろう。
 この人にも戦う理由があるのだ。

 それに対して外野というのはいつもうるさいものだ。

「外野もうるさいし続きを始めるか…」

 同意見だった。
 だが今度は手加減はしてくれないだろう…手足の一本ぐらい覚悟しないといけないかもしれない…。
 相手は強い。こちらを気遣いし、手加減ができるほどに。

 それでも私は逃げたくなかった。
 それが私の――。
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