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【17】狼との契約
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「何であんたがここにいるわけ!?」
リーシェと呼ばれる女の子は狼の頭から飛び立つと、太陽の光が当たってキラキラと輝く羽を羽ばたかせて、俺の目の前まで飛んできた。
「何でって、言われても……」
突然のことで俺自身何が何やらといった状況で言葉に困っていると、
「リーシェ様、どうやらこの男が私たちを召喚したようでして……」
「えぇぇぇ!?」
狼が事の成り行きを説明してくれた。
説明が終わると、リーシェは俺の方を向いてやれやれといった様子で、
「なるほどねぇ、でも、まさか私が召喚されるなんてね」
俺のことをジロジロと見てくる。
まさか召喚に成功するとは思っていなかった俺は、長ったらしい呪文を覚えることに必死だったのと、早く召喚スキルに触れてみたいという欲望に負けて、召喚後のまで指南書でしっかりと見ていなかった。そのため、リーシェと狼が行動に移すまでただ待っていることしかできずにいる。
「……それで、名前は決めたの?」
「な、名前?」
「そうよ、あの子の名前よ」
そう言ってリーシェは狼を指さした。名前を付ける必要があるのかと思いつつ、この後はどうすればいいのかと考えていると、リーシェが目を細めて俺のことをジーっと見てくる。
「……まさかあんた。召喚後に何をすればいいのか分からないって訳じゃないでしょうね?」
「うっ……、それは、そのー……」
図星を付かれて言葉に詰まった俺であったが、リーシェと狼が良い奴なのか悪い奴なのか判断できないため、何をすればいいのかが分からないことを伝えてもいいのかを悩んでいた。
こいつらが悪い奴だった場合、分からないことを伝えればろくなことにならないよなぁ……。
少し考えた後、まぁ、なるようになるだろうと、
「えーと……実は……」
召喚したはいいものの、召喚後に何をするべきなのか一切知らないことを伝えると、リーシャは口をへの字に曲げて、はぁ、と大きなため息をついた。
「仕方ないわね、私が全部教えてあげるわよ」
「あ、ありがとう」
「いい?まずは……」
リーシェが説明するには、召喚したモノに名前を与えることで召喚成功となる訳なのだが、名前を与える時に自身の血を媒介として契約するため、自身の血を召喚したモノの体内に入れることで契約が完了する。そして、契約者の血によって召喚したモノの姿が変わるとのことであった。
「……まぁ、こんなところだけど、理解できた?」
「理解できたけど……君は?」
「私?私が何よ」
「えっと、リーシェって呼ばれてるみたいだけど、名前は付けなくてもいいの?」
そう言うと、リーシェはニヤッと笑い、腰に手を当てて胸を張った。
「私は特別だからいいのよ!!」
「……そういうもんなの?」
「まぁ、あの子の副産物だとでも思って」
そう言うリーシェであったが、どう考えても先ほどの狼の態度からするに、リーシェの方が立場は上だと思うのだが……。
2体召喚されることなんてあるのか?と思いつつも、召喚スキルについては俺よりもリーシェの方が知ってそうだし、変に勘ぐって機嫌を損ねたら嫌だなと考えて、それ以上は何も追求しなかった。
「ほら、早くあの子と契約してあげなよ」
そう言って、俺の背中を押すリーシェであったが、全く圧力を感じずその場で立ち止まっていると、ポコポコと背中を叩いて催促してきたため、仕方なく狼の前に立った。
自分よりも大きな体の狼を前にして、思わずつばを飲み込む。このまま契約しようとしたらパクリと食べられてしまうんじゃないかという不安はあったが、意を決して短剣で手のひらを切った。痛みで顔を少し歪めながらも、血がしたたり落ちる右手を狼の前に突き出す。
名前をどうしようかと考えたが、特に良いアイデアが浮かばなかったので、俺の好きな小説に出てくる狼の名前から拝借することにした。
「君の名前は……テラリィだ」
狼が俺の右手を舐めると、狼の体が光り出した。召喚時よりは眩しくは無かったため、左腕で光を遮りながら、薄目で何とかテラリィの姿を捉えようとした。
どんな姿になるんだろうと期待と不安を感じながら変化を待っていると、テラリィの体が変化していく。小さくなるんだなぁと呑気なことを考えている間にも、テラリィの体はどんどん小さくなっていき、体を覆っていた光がはじけ飛んだかと思うと、そこに立っていたのは、俺の腕でも抱えられそうなほど小さくなっていたテラリィの姿であった。
「ぷ、ククク……。アハハハ」
変わり果てたテラリィの姿にこらえきれないといった様子で、リーシェは大笑いしているが、テラリィはどこかしょぼんとしている。
「えーと……どうして小さくなっちゃたんだ?」
リーシェに尋ねると、まだ笑いが収まっていないようで、左手でちょっと待ってのジェスチャーをした後、ひとしきり笑ったのか呼吸を整える。
「ふー……。いやー、こんなに面白いことなんて久しぶりよ。で、テラリィがこの姿になった理由は、あんたがまだまだ未熟だからね」
「未熟だから……」
「あ、でも、あんたの年齢からするとまだましな方ね。あんたぐらいの子が契約すると、ほとんどが光る球みたいになっちゃうんだから」
リーシェのまだましな方という言葉でどこか安心したが、テラリィは満足してないようで相変わらずしょぼんとしている。
「この姿ってずっとこのままなの?」
「うーん。この姿はあんたが成長するたびに変わっていくけど、どうかしらねぇ……」
「どういうこと?」
「そうねぇ、どこから説明すればいいのか……。それじゃあ、まずは……」
そう言ってリーシェが説明してくれた内容としては、俺自身が強くなるにつれてテラリィは姿を変えていき、それを進化と呼ぶらしいのだが、それにはテラリィの階級と俺の才能といったものが大きく関わってくる。というのも、テラリィはどうやら階級が高い聖獣だそうで、階級が高ければ高いほど進化は難しくなり、俺の才能によっても進化の困難さは変わってくるのだという。
「まぁ、つまり、あんたがとんでもない才能があれば、1週間で進化できるかもしれないし、まったく才能が無ければ、一生進化できないかもしれないって訳よ」
「なるほど……」
また才能か……。
こう何度も何度も才能の言葉を目にしたり、耳にしたりすると、才能っていったい何なんだろうなと疑問に思えてくる。
そんなことを考えていると、
「それじゃあ、契約も無事済んだし、自己紹介に移りましょうか!!」
そう言うリーシェは腰に手を当て胸を張っている。そのポーズ本当に好きなんだなぁと思いながら、お互いの自己紹介へと移るのであった。
リーシェと呼ばれる女の子は狼の頭から飛び立つと、太陽の光が当たってキラキラと輝く羽を羽ばたかせて、俺の目の前まで飛んできた。
「何でって、言われても……」
突然のことで俺自身何が何やらといった状況で言葉に困っていると、
「リーシェ様、どうやらこの男が私たちを召喚したようでして……」
「えぇぇぇ!?」
狼が事の成り行きを説明してくれた。
説明が終わると、リーシェは俺の方を向いてやれやれといった様子で、
「なるほどねぇ、でも、まさか私が召喚されるなんてね」
俺のことをジロジロと見てくる。
まさか召喚に成功するとは思っていなかった俺は、長ったらしい呪文を覚えることに必死だったのと、早く召喚スキルに触れてみたいという欲望に負けて、召喚後のまで指南書でしっかりと見ていなかった。そのため、リーシェと狼が行動に移すまでただ待っていることしかできずにいる。
「……それで、名前は決めたの?」
「な、名前?」
「そうよ、あの子の名前よ」
そう言ってリーシェは狼を指さした。名前を付ける必要があるのかと思いつつ、この後はどうすればいいのかと考えていると、リーシェが目を細めて俺のことをジーっと見てくる。
「……まさかあんた。召喚後に何をすればいいのか分からないって訳じゃないでしょうね?」
「うっ……、それは、そのー……」
図星を付かれて言葉に詰まった俺であったが、リーシェと狼が良い奴なのか悪い奴なのか判断できないため、何をすればいいのかが分からないことを伝えてもいいのかを悩んでいた。
こいつらが悪い奴だった場合、分からないことを伝えればろくなことにならないよなぁ……。
少し考えた後、まぁ、なるようになるだろうと、
「えーと……実は……」
召喚したはいいものの、召喚後に何をするべきなのか一切知らないことを伝えると、リーシャは口をへの字に曲げて、はぁ、と大きなため息をついた。
「仕方ないわね、私が全部教えてあげるわよ」
「あ、ありがとう」
「いい?まずは……」
リーシェが説明するには、召喚したモノに名前を与えることで召喚成功となる訳なのだが、名前を与える時に自身の血を媒介として契約するため、自身の血を召喚したモノの体内に入れることで契約が完了する。そして、契約者の血によって召喚したモノの姿が変わるとのことであった。
「……まぁ、こんなところだけど、理解できた?」
「理解できたけど……君は?」
「私?私が何よ」
「えっと、リーシェって呼ばれてるみたいだけど、名前は付けなくてもいいの?」
そう言うと、リーシェはニヤッと笑い、腰に手を当てて胸を張った。
「私は特別だからいいのよ!!」
「……そういうもんなの?」
「まぁ、あの子の副産物だとでも思って」
そう言うリーシェであったが、どう考えても先ほどの狼の態度からするに、リーシェの方が立場は上だと思うのだが……。
2体召喚されることなんてあるのか?と思いつつも、召喚スキルについては俺よりもリーシェの方が知ってそうだし、変に勘ぐって機嫌を損ねたら嫌だなと考えて、それ以上は何も追求しなかった。
「ほら、早くあの子と契約してあげなよ」
そう言って、俺の背中を押すリーシェであったが、全く圧力を感じずその場で立ち止まっていると、ポコポコと背中を叩いて催促してきたため、仕方なく狼の前に立った。
自分よりも大きな体の狼を前にして、思わずつばを飲み込む。このまま契約しようとしたらパクリと食べられてしまうんじゃないかという不安はあったが、意を決して短剣で手のひらを切った。痛みで顔を少し歪めながらも、血がしたたり落ちる右手を狼の前に突き出す。
名前をどうしようかと考えたが、特に良いアイデアが浮かばなかったので、俺の好きな小説に出てくる狼の名前から拝借することにした。
「君の名前は……テラリィだ」
狼が俺の右手を舐めると、狼の体が光り出した。召喚時よりは眩しくは無かったため、左腕で光を遮りながら、薄目で何とかテラリィの姿を捉えようとした。
どんな姿になるんだろうと期待と不安を感じながら変化を待っていると、テラリィの体が変化していく。小さくなるんだなぁと呑気なことを考えている間にも、テラリィの体はどんどん小さくなっていき、体を覆っていた光がはじけ飛んだかと思うと、そこに立っていたのは、俺の腕でも抱えられそうなほど小さくなっていたテラリィの姿であった。
「ぷ、ククク……。アハハハ」
変わり果てたテラリィの姿にこらえきれないといった様子で、リーシェは大笑いしているが、テラリィはどこかしょぼんとしている。
「えーと……どうして小さくなっちゃたんだ?」
リーシェに尋ねると、まだ笑いが収まっていないようで、左手でちょっと待ってのジェスチャーをした後、ひとしきり笑ったのか呼吸を整える。
「ふー……。いやー、こんなに面白いことなんて久しぶりよ。で、テラリィがこの姿になった理由は、あんたがまだまだ未熟だからね」
「未熟だから……」
「あ、でも、あんたの年齢からするとまだましな方ね。あんたぐらいの子が契約すると、ほとんどが光る球みたいになっちゃうんだから」
リーシェのまだましな方という言葉でどこか安心したが、テラリィは満足してないようで相変わらずしょぼんとしている。
「この姿ってずっとこのままなの?」
「うーん。この姿はあんたが成長するたびに変わっていくけど、どうかしらねぇ……」
「どういうこと?」
「そうねぇ、どこから説明すればいいのか……。それじゃあ、まずは……」
そう言ってリーシェが説明してくれた内容としては、俺自身が強くなるにつれてテラリィは姿を変えていき、それを進化と呼ぶらしいのだが、それにはテラリィの階級と俺の才能といったものが大きく関わってくる。というのも、テラリィはどうやら階級が高い聖獣だそうで、階級が高ければ高いほど進化は難しくなり、俺の才能によっても進化の困難さは変わってくるのだという。
「まぁ、つまり、あんたがとんでもない才能があれば、1週間で進化できるかもしれないし、まったく才能が無ければ、一生進化できないかもしれないって訳よ」
「なるほど……」
また才能か……。
こう何度も何度も才能の言葉を目にしたり、耳にしたりすると、才能っていったい何なんだろうなと疑問に思えてくる。
そんなことを考えていると、
「それじゃあ、契約も無事済んだし、自己紹介に移りましょうか!!」
そう言うリーシェは腰に手を当て胸を張っている。そのポーズ本当に好きなんだなぁと思いながら、お互いの自己紹介へと移るのであった。
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