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【18】リーシェとテラリィ
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「それじゃあ、まず私からね」
そうして自己紹介が始まったのだが、リーシェはとにかくまぁ、何とも元気で表情豊かである。そして、自信満々といった様子で、自分のことについて語っていた。
「ところで、リーシェの種族はなに?」
「私の種族?」
「うん。妖精に見えるけど……」
そう言うと、リーシェはニヤリと笑う。
「ふーん。妖精ねぇ……」
リーシェは意味ありげにそう呟くと、腕を組み何やら考え事をしている。
「まぁ、今は妖精ってことにしといてちょうだい」
「……それって、妖精じゃないってことだよね?」
ジトーっとリーシェを見つめると、リーシェは俺の顔の前まで飛んできて、
「あんたがもっと強くなったら教えてあげるわよ」
俺の鼻をチョンと触り、ニコッと笑った。
「……リーシェは謎だらけだね」
「フフ、私について知りたかったら、もっと強くなることね」
追求してもはぐらかされてしまうだけだろうなと思い、それ以上は追求することは止めた。
「次は、私ですね」
そう言ってテラリィが自己紹介を始めた。テラリィは狼の聖獣で、力を失ってしまっているためできることは少ないが、力が戻れば人間の姿にもなれるのだという。
「なるほど……ところで2人はどういった関係なの?」
テラリィがリーシェに対して様を付けているため、先ほどからずっと気になっていた疑問を投げかけてみると、はぐらかされてしまう。その後も、色々質問してみたのだが、相変わらずあんたが強くなったら教えてあげるの一点張りで、大した情報が得られずにいた。
「……わかったよ。でも、あの日の夜、何で俺の前に現れたのかだけは教えてよ」
「あの日の夜って……あのことよね?」
リーシェがテラリィに尋ねると、テラリィは恐らくといった様子で頷いた。
「たまたまっていうか……、あんたが美味しそうだったからかな」
「お、美味しそう?」
「あ、でも勘違いしないでね。別にあんたの身体のことじゃなくて、魔力のことだから」
「魔力……」
「言ってなかったけど、私の食事は魔力なのよ」
詳しくリーシェに聞いてみると、どうやらたまたま村の近くを散歩していたリーシェは、美味しそうな匂いにつられて俺の元まで来たのだという。そして、俺のことを見ていると、俺が起きたため部屋を出ていったとのことであった。
「じゃあ、何で魔導書の場所を教えてくれたの?」
「あれは、教えたんじゃなくて、食事しようとしたらあんたが勝手についてきただけよ!!」
「え、どういうこと?」
「あそこに魔導書が埋まっていたのは知らなかったけど、永久に魔力が出てくるから小腹を満たすにはいい場所だったのよ。それなのに、急に無くなっちゃったんだからビックリしたわよ」
そう言ったリーシェはフンっと顔を背けてしまった。
「あー、そういうことだったんだ……」
てっきりリーシェが俺を魔導書の元まで導いてくれたのかと思っていたんだけど、たまたまだったなんてなぁ……。
「もう!!こんな話するからお腹が空いちゃったじゃない!!魔力食べさせなさいよ!!」
「あげてもいいけど、どうやればいいのかな?」
「それは、こう、ブワーってやるのよ!!」
「ブ、ブワー?」
そんなやり取りをしていると、俺達を見かねたのかテラリィが、
「あのー、恐らく魔力を放出させれば大丈夫だと思うのですが……」
申し訳なさそうに教えてきた。そのため、魔力循環で行っているときと同じように魔力を手から放出させる。
「そうそう!!これよ、これ!!」
放出させると同時にリーシェは手のひらの上に寝っ転がり、魔力を全身で受け止める。口から入れるわけじゃないんだなぁと思いつつも、魔力の放出を続けていると魔力が切れてしまった。
すると、リーシェは目を開けて、
「ん、もうおしまい?」
瞼を擦りながら尋ねてきた。
「魔力が切れたから、これ以上は無理かな」
「そう、それじゃあ、もっと出せるように頑張ってね」
そう言ってリーシェは俺の手のひらから下りると、ご馳走様と言って、満足そうな顔でテラリィの背中に寝ころんだ。
何ともまぁ、自由気ままだなぁ……リーシェは……。
そんなことを考えていると、そういえばとあることに気が付き、テラリィのことを見た。
「テラリィは食事どうするの?リーシェと同じように魔力?」
「えぇ、まぁ、そうなんですが……」
テラリィはどこか言いにくそうにしており、何か問題でもあるのかなと思っていると、リーシェが飛び起きて、
「それじゃあ、行くわよ!!」
そう言って、テラリィを連れて部屋の外へと出ていく。
「え、ちょ、ちょっと!!」
俺の呼びかけも無視して歩いていく2人の後を慌てて追いかける。家から出て村の中をズンズンと2人は歩いていく。周りの人には見えてないのかなぁと思いつつも、付いていくと、
「とうちゃーく」
そう言ってリーシェ達が立ち止まったのは、村の外にある以前命を落としかけた森の前であった。
「えっと……」
突然森まで連れてこられて何が何やらといった感じであったが、先程の会話から恐らくテラリィの食事に関係することなのだろう。ただ、食事と森に何の関係が、と思っていると、
「それじゃあ、魔物を狩りに行くわよ!!」
森の中へと入っていく2人。
「ちょっとちょっと!!」
俺は慌てて2人の前に立って、2人が進むのを止めた。
「そんなに慌ててどうしたのよ」
「いやいや、どうしたも何も、まずは説明してくれ!!」
「説明……。あぁ、なるほどね」
そう言うとリーシェはテラリィの頭の上に立つ。
「まず、テラリィの食事は私と同じように魔力だというのは聞いてたわよね?」
「あぁ、それは聞いていたけど、何で森に来たんだ?」
「森には魔物がいるでしょ?それを食べに来たのよ」
そう言うと、再び歩き出して俺の横を通り抜けようとするテラリィとリーシェであったが、慌てて振り返り、再び2人の前に立つ。
「もう少し説明してくれ!!」
「えー、しょうがないわねぇ」
リーシェが面倒くさそうながらも説明してくれた。森に来た理由としては、魔物に含まれる魔力を体内に取り入れるため、魔物を狩りに来たとのことであった。そして、何故、魔力を取り入れるのかというと、人間が持つ魔力と魔物が持つ魔力は性質が違い、その両方の魔力をバランスよく取り込むことでテラリィは成長するのだという。
「何で森に来たのか分かったけど……」
リーシェの説明に納得はしたものの、急に魔物を狩る事態にになったことで戸惑いを隠せなかった。
「それじゃあ、行くわよ!!」
「あ、ちょっと!!」
まだ心の準備も済んでないというのに歩き出す2人。
「……あー、もう!!」
森の中へと入っていく2人を慌てて追いかけた。
そうして自己紹介が始まったのだが、リーシェはとにかくまぁ、何とも元気で表情豊かである。そして、自信満々といった様子で、自分のことについて語っていた。
「ところで、リーシェの種族はなに?」
「私の種族?」
「うん。妖精に見えるけど……」
そう言うと、リーシェはニヤリと笑う。
「ふーん。妖精ねぇ……」
リーシェは意味ありげにそう呟くと、腕を組み何やら考え事をしている。
「まぁ、今は妖精ってことにしといてちょうだい」
「……それって、妖精じゃないってことだよね?」
ジトーっとリーシェを見つめると、リーシェは俺の顔の前まで飛んできて、
「あんたがもっと強くなったら教えてあげるわよ」
俺の鼻をチョンと触り、ニコッと笑った。
「……リーシェは謎だらけだね」
「フフ、私について知りたかったら、もっと強くなることね」
追求してもはぐらかされてしまうだけだろうなと思い、それ以上は追求することは止めた。
「次は、私ですね」
そう言ってテラリィが自己紹介を始めた。テラリィは狼の聖獣で、力を失ってしまっているためできることは少ないが、力が戻れば人間の姿にもなれるのだという。
「なるほど……ところで2人はどういった関係なの?」
テラリィがリーシェに対して様を付けているため、先ほどからずっと気になっていた疑問を投げかけてみると、はぐらかされてしまう。その後も、色々質問してみたのだが、相変わらずあんたが強くなったら教えてあげるの一点張りで、大した情報が得られずにいた。
「……わかったよ。でも、あの日の夜、何で俺の前に現れたのかだけは教えてよ」
「あの日の夜って……あのことよね?」
リーシェがテラリィに尋ねると、テラリィは恐らくといった様子で頷いた。
「たまたまっていうか……、あんたが美味しそうだったからかな」
「お、美味しそう?」
「あ、でも勘違いしないでね。別にあんたの身体のことじゃなくて、魔力のことだから」
「魔力……」
「言ってなかったけど、私の食事は魔力なのよ」
詳しくリーシェに聞いてみると、どうやらたまたま村の近くを散歩していたリーシェは、美味しそうな匂いにつられて俺の元まで来たのだという。そして、俺のことを見ていると、俺が起きたため部屋を出ていったとのことであった。
「じゃあ、何で魔導書の場所を教えてくれたの?」
「あれは、教えたんじゃなくて、食事しようとしたらあんたが勝手についてきただけよ!!」
「え、どういうこと?」
「あそこに魔導書が埋まっていたのは知らなかったけど、永久に魔力が出てくるから小腹を満たすにはいい場所だったのよ。それなのに、急に無くなっちゃったんだからビックリしたわよ」
そう言ったリーシェはフンっと顔を背けてしまった。
「あー、そういうことだったんだ……」
てっきりリーシェが俺を魔導書の元まで導いてくれたのかと思っていたんだけど、たまたまだったなんてなぁ……。
「もう!!こんな話するからお腹が空いちゃったじゃない!!魔力食べさせなさいよ!!」
「あげてもいいけど、どうやればいいのかな?」
「それは、こう、ブワーってやるのよ!!」
「ブ、ブワー?」
そんなやり取りをしていると、俺達を見かねたのかテラリィが、
「あのー、恐らく魔力を放出させれば大丈夫だと思うのですが……」
申し訳なさそうに教えてきた。そのため、魔力循環で行っているときと同じように魔力を手から放出させる。
「そうそう!!これよ、これ!!」
放出させると同時にリーシェは手のひらの上に寝っ転がり、魔力を全身で受け止める。口から入れるわけじゃないんだなぁと思いつつも、魔力の放出を続けていると魔力が切れてしまった。
すると、リーシェは目を開けて、
「ん、もうおしまい?」
瞼を擦りながら尋ねてきた。
「魔力が切れたから、これ以上は無理かな」
「そう、それじゃあ、もっと出せるように頑張ってね」
そう言ってリーシェは俺の手のひらから下りると、ご馳走様と言って、満足そうな顔でテラリィの背中に寝ころんだ。
何ともまぁ、自由気ままだなぁ……リーシェは……。
そんなことを考えていると、そういえばとあることに気が付き、テラリィのことを見た。
「テラリィは食事どうするの?リーシェと同じように魔力?」
「えぇ、まぁ、そうなんですが……」
テラリィはどこか言いにくそうにしており、何か問題でもあるのかなと思っていると、リーシェが飛び起きて、
「それじゃあ、行くわよ!!」
そう言って、テラリィを連れて部屋の外へと出ていく。
「え、ちょ、ちょっと!!」
俺の呼びかけも無視して歩いていく2人の後を慌てて追いかける。家から出て村の中をズンズンと2人は歩いていく。周りの人には見えてないのかなぁと思いつつも、付いていくと、
「とうちゃーく」
そう言ってリーシェ達が立ち止まったのは、村の外にある以前命を落としかけた森の前であった。
「えっと……」
突然森まで連れてこられて何が何やらといった感じであったが、先程の会話から恐らくテラリィの食事に関係することなのだろう。ただ、食事と森に何の関係が、と思っていると、
「それじゃあ、魔物を狩りに行くわよ!!」
森の中へと入っていく2人。
「ちょっとちょっと!!」
俺は慌てて2人の前に立って、2人が進むのを止めた。
「そんなに慌ててどうしたのよ」
「いやいや、どうしたも何も、まずは説明してくれ!!」
「説明……。あぁ、なるほどね」
そう言うとリーシェはテラリィの頭の上に立つ。
「まず、テラリィの食事は私と同じように魔力だというのは聞いてたわよね?」
「あぁ、それは聞いていたけど、何で森に来たんだ?」
「森には魔物がいるでしょ?それを食べに来たのよ」
そう言うと、再び歩き出して俺の横を通り抜けようとするテラリィとリーシェであったが、慌てて振り返り、再び2人の前に立つ。
「もう少し説明してくれ!!」
「えー、しょうがないわねぇ」
リーシェが面倒くさそうながらも説明してくれた。森に来た理由としては、魔物に含まれる魔力を体内に取り入れるため、魔物を狩りに来たとのことであった。そして、何故、魔力を取り入れるのかというと、人間が持つ魔力と魔物が持つ魔力は性質が違い、その両方の魔力をバランスよく取り込むことでテラリィは成長するのだという。
「何で森に来たのか分かったけど……」
リーシェの説明に納得はしたものの、急に魔物を狩る事態にになったことで戸惑いを隠せなかった。
「それじゃあ、行くわよ!!」
「あ、ちょっと!!」
まだ心の準備も済んでないというのに歩き出す2人。
「……あー、もう!!」
森の中へと入っていく2人を慌てて追いかけた。
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