恋。となり、となり、隣。

雉虎 悠雨

文字の大きさ
71 / 86
第三章 いつも隣に

70

しおりを挟む
 そんな風に二人の同棲生活はすっかり馴染み、日常となったそんな頃。
 新居にすでに何度かやってきていた宮前はこの日、目雲から頼みごとをされていた。

「別れたきっかけは彼女の浮気なんだけど」
「浮気ですか?」

 ゆきの驚きに宮前は笑う。
 ダイニングテーブルにゆきと二人だけでコーヒーを前に目雲の過去について宮前が話していた。
 目雲はオープンキッチンでそんな二人を眺めながら、夕食の支度をしている。

「いや、あくまで最後の一押しだね。俺からしたら浮気してくれて良かったくらいに思ってるよ」
「そんなことあるんですね」

 浮気が良かったなんて話を実際に聞いたのは初めてだったゆきが、俄かには信じがたいと言いたげに頷く。
 宮前がそれに同意するように頷きながら説明する。

「そりゃ、当然ちゃんと別れてくれた方が絶対良かったけど、それぐらいじゃないと無理なくらい拗れてたんだよね」

 目雲が女性と拗れる理由を全く思いつかないゆきは首を捻るばかりだ。

「喧嘩とかですか?」
「喧嘩もしてたけど上手くない喧嘩って言うか、かみ合ってないんだよね。だから仲直りしたように見えて何も解決しない。そもそも、相性がとてつもなく悪いと思ってたんだよ」
「相性?」

 目雲と合わない相性というのがどんなものか思い浮かべようとしているゆきを見て、宮前が解説する。

「周弥はさ、マイペースな自己完結型だろ。自分の中にロジックがあって、それをもとに行動してる。だからほとんど他人に影響されない」

 宮前の目雲の分析を完璧に飲み込めはしなかったが、それは自分から見た目雲はまた違うからだろうとゆきは頷いた。

「なんとなくですけど、分かる気がします」
「一方彼女は完全に尽くしたい人だった。支えて世話して相手のために行動する。彼女の方は結婚を最初から意識してたから余計そうだったかも」

 宮前の何か残念そうな言い方も含めてゆきには理解が難しかった。多様性が叫ばれる昨今でも、それだからこそそれも認められるべき考えの一つとして一般的な彼女にしたい女性に求める要件としては悪くはないのではかとゆきには聞こえる。また年頃の女性が付き合う相手に結婚を考えるのも問題ないと思うし、全くその気がない場合は悪いが、目雲が交際相手を最初からいつか捨ててやろうなんて考えるとも思えず、不誠実な付き合い方をするとも想像できずに、どこがどう悪いのか見えてこなかった。

「悪いようには思わないんですけど」

 不思議そうなゆきに向かって、宮前は大げさに訴えた。

「いや、これはもう最悪だよ。周弥の方がもっと唯我独尊って感じだったら上手くいったかもしれないし、早々に別れたかもしれない。でも周弥は空気も読めるし人のことも思いやるから良くなかった。上手くもいかないし、別れられもしなかった」
「一般的には褒められるところですけどね」

 ゆきの苦笑に、宮前もそれは分かっていると言わんばかりに苦笑を返しつつも、相手の方も擁護する。

「彼女の方もさ、周弥が相手じゃなかったら良い彼女で良い奥さんって絶対なれるタイプだったんだよ。可愛いし、明るいし、家庭的だし、控えめでお淑やかで。それが良くないんだよね」
「大絶賛な気がします」

 そんな人なかなかいないとゆきはただ感心したが、宮前はゆきを気に掛ける。

「ごめんね、良い気しない?」
「あ、今のところ私の心は全く何も影響を与えられてないです。というと私が冷酷な気がしますが、いたって平常です」

 宮前は微笑むとコーヒーをひと口飲んで話を続けた。

「ゆきちゃんならそうかなって思ってた。そういうわけで、一見ね、良さげな感じなんだ。でもさ俺としてはさ、最初から良くないんじゃないかなって思ってんだけど。最初は上手くいってしまうわけさ。それが泥沼の始まり」
「聞いてても幸せになりそうな雰囲気しか感じないですね」

 宮前もこくこくと頷いたが、テーブルに両肘をつき指を絡めるように組むとその上に顎を乗せ語り始める。

「二人は友達の紹介っていうよくある出会いをする。周弥は職場の同僚にだったけど、その友達の友達って感じ。あ、今とは違う職場ね、ちょっとブラック気味だったから別れたタイミングくらいで転職してる。その元の所は結構大きな企業だったから、それもね初対面の相手には印象良かった思う。二人とも二十五歳の時。彼女の方は次付き合う人は結婚を意識した人でって感じだったから尚更ね。そして不味いのは周弥も付き合いつつその雰囲気を察知して、まあいいかって思うところだね」

 宮前の大いに含みのある言い方でもゆきにはマイナスなところがどこか分からなかった。

「本当に悪いところはまるでないような気がするのは私が変なんでしょうか」
「一般的にはね、それで上手くいくなら本当に良いんだよ。彼女は結婚したい、その彼氏も妥協とかではなくて付き合っていくうちに結婚を意識するのは良いことだと思うよ」

 宮前もゆきの感覚を否定はしなかったので、ゆきはその宮前が察知していた不自然さの正体が気になる。

「ではなぜ、宮前さんは不味いと思ったんですか?」
「たぶん一年くらいは順調だったんだと思うんだよ、俺も傍から見てて自分の勘は外れたなって思ってたから。けどそこから少しずつおかしくなっていく。半同棲みたいな感じになって、彼女が周弥の身の回りのことを手伝い始めるんだよ。あ、その彼女が出入りしてたマンションも前の前だから」

 宮前に気遣いに素直に微笑みでお礼を返して、そのあとゆきはやっと何か起こりそうなこと予感で思いついたことを宮前に言ってみる。

「それを目雲さんが嫌がったんですか?」

 今より若い目雲ならもっと自立心が強い可能性もあると目星をつけてみたが、宮前は首を振って否定した。

「全然、ありがとうって受け入れてたよ。彼女の方も自分の仕事と家事と両立して無理してる感じじゃなかった。周弥の仕事を本当に応援してた。ただね、俺もさ、二人のところには邪魔だろうなって行かなかったから詳細は分からないんだけど、たまに会う周弥の様子が沈んでいってる気がして変だなとは思ってたんだよ」
「聞いている分では上手くいってそうですよね」

 ゆきにはその逆になっていく道が見えずに、一旦コーヒーで思考の最適化を図ろうとする。
 宮前もコーヒーをひと口飲むと、さらに不可思議な様子を付け足していく。

「そう。変だなって思ったけど、周弥が一人の時に部屋に行ってもすごく綺麗だし、もちろん彼女の物とかもいろいろあって、それも別に過剰とか部屋の雰囲気壊してるとかもなかった。周弥に誘われて一回彼女のご飯も食べたけど美味かった」

 ますます混乱の渦の中に入り込んでいき、ゆきは自分が一体何の話を聞いているのか分からなくなっていく。

「本当に別れた原因の話ですよね?」
「そうだよね、俺も二人がおかしくなるまで、自分の違和感が分からなかったくらいだから、二人にももしかしたら分かってなかったかも」
「違和感ですか」

 それすらゆきには見当もつかず、微塵も感じられない。
 そこで漸く宮前は問題の確信に近づき始めた。

「周弥も別に何でもやりたい人間じゃないよ、でも守るべきパーソナルスペースがあったんだよ。それを自分で無視したからおかしくなっていくんだ。彼女の応援に応えるように仕事を頑張るんだけど、そこで何とか保ってた均衡が崩れる。忙しくなると当然彼女との時間が減るよね、そして半分以上一緒に住んでると忙しすぎて健康も心配になる。ちょっと一緒にいられない不満も含んだ言葉で休んだ方が良いんじゃないって彼女はいう訳さ」

 当時は目雲も全然健康体なんだけどと宮前は補足したが、ゆきはやっと頷くことができた。

「分かる心理ですね」

 そうそうと宮前も頷き返し、その先に進む。

「そうかと思って周弥も仕事を休む。するとここぞとばかりに彼女が休めるようにと世話を焼くわけだ。けれどそこで周弥は自覚できなかっただろうけどリラックスできなかったんだと思うんだ。勉強するのが趣味みたいなやつだからさ、それもせずに家のことを人に任せて体を休めるだけって精神が休めなかったんだよ」
「一緒に家事したりしては駄目だったんでしょうか?」

 今現在ゆきと目雲はそうやって暮らしているのだから、同じことができないとは思えなかったが、宮前は頷かない。

「日常的にさ、どっちかが主導権握ってると、相手のルールに従わないと諍いになったりするでしょ。それが分かってるから周弥も手伝いはできるけど、それ以上は口出せないし、彼女の方も休ませたいと思ってるのに、手伝わせるのはなんだか罪悪感が残る」

 ただ単に家事をこなすことが生活を回すことではないのだと、ゆきにも分かる。お互いを思い合うがためにすれ違いが生じているのだと、もどかしさを感じてしまう。

「なかなか上手くいきませんね」
「でも、二人は考えた。何も家にいるだけが休日ではない。リフレッシュならデートしたりとかあるじゃないかと」

 まるで宮前が良い行いとしたかのようにゆきは目を輝かせた。もうすっかり魅力的な本のあらすじに聞き入る読者のようなリアクションだ。

「おお! 素晴らしい発想ですね」

 けれど宮前の声は沈む。

「でもそこで気が付いてしまうわけさ、二人には何も共通するものがないと」

 けれどゆきは首を捻ってそんなわけはないと思う。

「最初の一年は順調だったんですよね? その順調な期間に育んだものがあるのでは?」

 ゆきは目雲の過去の恋愛であることを一旦忘れたかのように、まるで応援して可能性を探るようなことを聞いてします。

「まずね、大前提に周弥に趣味らしい趣味がない。俺と遊ぶ時も俺が好きな物に付き合わせてたし、彼女ともきっとそんな感じで相手に合わせてだったんじゃないかな。特に付き合い始めなんてどんな話しても新鮮だし、お互いの仕事の話とか、俺もその交際一年目はちょくちょく一緒に遊んでたから、俺が提案したことしたりだったりね。でもさ、彼女の方が遠慮してくれないかなって雰囲気醸すのも分かるじゃん、普通じゃん」
「一般論として分かります」

 ゆきは達治と付き合っている時も色々なグループで行動することも多かったので、二人だけの時間というものに執着がない。
 それが宮前にも伝わっていた。

「だよね、ゆきちゃんにはあまり共感されない気がしてる。だって俺がいてもいつまで経ても楽しそうだし、周弥が俺とだけの時間作れるようにしてくれてるだろ」
「意識して作ってるわけではないですよ、ただ締め切りが迫ってるとか打ち合わせが立て込んでるとかなんです」

 目雲は土日に仕事をする代わりに、平日のどこかで代わりに休みを取るようになっていた。バイトを辞めてゆきの休日もさらに融通が利くようになったので、目雲に合わせて平日に一緒に出掛けたり、土日に仕事をすることもあって、そんなときは目雲は宮前と出かけることもあった。

「そういうゆきちゃん自身も忙しいっていうのも良いのかも」

 ゆきは頷きつつも目雲の事を考えて一つ思い付くことがあった。

「でも目雲さん料理が趣味だと思いますけど、それでは駄目だったんでしょうか」
「今は喜んで食べてくれる人がいるからね。あとね、ゆきちゃんに対しては独占欲か支配欲に近い気がする」

 宮前の不穏な笑顔にゆきは目を丸くする。

「そんなことはないと思いますけど」

 そういう背後から声がした。

「ゆきさんを怖がらせるようなことを言うな」

 キッチンにいた目雲が二人の間に割り込むように手を伸ばして皿を置いた。

「これ、摘まんでいてください。お酒ももう出しますね」

 ゆきに向けて目元を緩める目雲は宮前には冷たい視線を送る。
 それを見て宮前はすねたように笑う。

「口挟まないのかと思ってたのに」

 目雲は気にせず二人の前に箸置きと箸を置いていく。

「不必要なことを言うからだ」

 言い置いて二人のカップを回収して一度キッチンに戻ると、瓶のクラフトビールを手に戻ってくる。

「以前美味しいと言っていたので、始めはこれをお供に」
「ありがとうございます」

 宮前が二本しかないのを見て目雲を促す。

「お前も一緒に乾杯だけしてけよ」

 言われて目雲がもう一本もってやってくると、三人で瓶を軽快に響かせた。そして、ひと口飲むと目雲はキッチンに戻っていき、それを見送りながら宮前が話を戻した。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

解けない魔法を このキスで

葉月 まい
恋愛
『さめない夢が叶う場所』 そこで出逢った二人は、 お互いを認識しないまま 同じ場所で再会する。 『自分の作ったドレスで女の子達をプリンセスに』 その想いでドレスを作る『ソルシエール』(魔法使い) そんな彼女に、彼がかける魔法とは? ═•-⊰❉⊱•登場人物 •⊰❉⊱•-═ 白石 美蘭 Miran Shiraishi(27歳)…ドレスブランド『ソルシエール』代表 新海 高良 Takara Shinkai(32歳)…リゾートホテル運営会社『新海ホテル&リゾート』 副社長

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

【本編、番外編完結】血の繋がらない叔父にひたすら片思いしていたいのに、婚約者で幼馴染なアイツが放っておいてくれません

恩田璃星
恋愛
蓮見千歳(はすみちとせ)は、血の繋がりのない叔父、遼平に少しでも女性として見てもらいと、幼い頃から努力を続けてきた。 そして、大学卒業を果たし千歳は、念願叶って遼平の会社で働き始めるが、そこには幼馴染の晴臣(はるおみ)も居た。 千歳が遼平に近づくにつれ、『一途な想い』が複雑に交錯していく。 第14回恋愛小説対象にエントリーしています。 ※別タイトルで他サイト様掲載作品になります。 番外編は現時点でアルファポリス様限定で掲載しております。

かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~

入海月子
恋愛
セレブの街のブティックG.rowで働く西原望晴(にしはらみはる)は、IT企業社長の由井拓斗(ゆいたくと)の私服のコーディネートをしている。彼のファッションセンスが壊滅的だからだ。 ただの客だったはずなのに、彼といきなりの同居。そして、親を安心させるために入籍することに。 拓斗のほうも結婚圧力がわずらわしかったから、ちょうどいいと言う。 書類上の夫婦と思ったのに、なぜか拓斗は甘々で――。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...