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第二章 巫女さんになった私ですが
2-5 除霊は物理で解決するスタンス
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***
私たちは巫女装束を合わせにいく為、長い廊下を歩いていた。
隣を歩く珀弥君の服装は寝間着から狩衣になっている。やはり衣装が違うとサマになるな。
「そうそう、千真さんは身長どのくらいなの?」
「百四十五くらいだよ」
「へぇ、そうかぁ」
サイズ確認だろうか。
珀弥君は相づちを打つと、視線を空中に泳がせた。私は彼の口が『どうしよう』と動いたのを見逃さなかった。ぐぬぬ。
「珀弥君はいくつなの?」
「百八十ちょっとくらいかなぁ」
モンゴロイドにしてはでかいな。高いところにある物を取るのに困ったことはないのだろう。羨ましい。
「大きいね。身長わけてー」
「えー、自分の身体削ぐのは嫌だなぁ」
「そういう生々しい返答はいらないんだなぁ!」
のほほんとしている珀弥君のブラックジョークに、全力で突っ込むしか無かったんだなぁ。
「そんなこんなで会話をしているうちに、私たちは目的の場所についたのだった」
「こら、地の文を盗らない!」
私が珀弥君の胸に裏拳を繰り出すと、彼は喉に息を詰まらせて涙目になった。イイカンジにヒットしてしまったようだ。ごめんち。
*
「さぁ、どうぞ」
珀弥君が襖を開けると、綺麗に整理整頓されている部屋の様子が目の前に広がった。
「お邪魔します」
軽く挨拶して部屋に足を踏み入れる。
大きなタンス、等身大の鏡、化粧台……質素だが、女の人の部屋っぽい。以前、誰かが使っていたのだろうか。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
彼は私に一言告げ、部屋の左隅にあるタンスの下段を開けた。私はそっと隣から覗き込む。中には綺麗に折り畳まれた衣類が並んでいた。
その年季の入ったタンスは、珀弥君の身長くらいの大きさだ。地震で倒れて下敷きになったら死ぬだろうな。
「ちょっと大きいかなぁ」
珀弥君はタンスから持ち出した緋袴を私の前で広げ、うーん、と唸った。
「とりあえず穿いてみるよ」
「わかった。後は……この小袖は大丈夫かな」
彼は再びタンスを漁りはじめ、一着の白衣を引っ張りだした。小さめなのはわかるが、大柄な珀弥君が持つとそれが強調される。
「お、小さいね」
「これは合うと思……」
私の身体に合わせて当ててみたら、袖が若干長かった。一瞬、空気が凍った。
「ソウデスヨネー私小さいですもんねー」
鏡にはジト目の私が写っている。
「まぁまぁ、とりあえず着てみようよ。着付けは出来る?」
珀弥君の穏やかな口調と笑顔は崩れていないが、少し焦っているのがわかる。
着付けかぁ。袴なんて穿いた事……。
「うん、大丈夫」
気付けば頷いていた。
根拠は無いが、不可能という概念は私の中に無かった。
もしかしたら、私の前世はナポレオンかもしれない。尚、共通点は小柄ということだけだ。
「じゃあ、終わったら呼んでね」
珀弥君は衣装一式を私に預け、部屋から出ていった。
女子の着替えシーンは言われなくとも出ていく、そんな貴方は紳士ね。ラブコメでは確実にフラグを折っているだろう。
『きゃーっ、のび夫さんのエッチ!!』
なんて起こらないもん。
さて、早く着替えちゃお。私は着物の襟に手を掛けた。
「ほっほっほ、ぴちぴちな女子じゃのぉ」
空気が、凍った。(本日二回目)
ぽくぽくぽく、ちーん。
「きゃあああああああ!!」
思わず叫んだ。それも、心から、腹の底から。
「千真さん!!」
パァン!! と音を立てて勢い良く襖が開き、鬼の形相の珀弥君が飛び込んできた。
だけど、私は着物がはだけてまして、あららワーオな状態でして、恥ずかしくてですね。
「きゃーっ! 珀弥さんのエッチ!!」
と、私は再度悲鳴を上げてしまったのですよ。
「うわぁ! ちさこちゃんっ、ち、違うんだ! どこだってドアが!」
珀弥君は手で素早く目を覆い、後ろを向いた。
「で、何があったの?」
流石珀弥君、切り替えが早い。
「声が、声が聞こえたの」
「声?」
怪訝そうな声音が返ってきた。いつもよりトーンが低い。
「後ろから変なおじさんの声が」
「……なるほどね。わかった」
少し考えるような間があったが、何か心当たりがあるのだろうか。
「まずは服を着てもらっていい?」
「うん」
私は急いで襟を引っ掴んで着物を整え、服を着たことを珀弥君に伝える。
その瞬間、彼は私の横をすりぬけ、タンスに蹴りを入れた。メキッと嫌な音が鳴る。
「え、なん……」
「何すんじゃ糞餓鬼!」
先ほど聞いた、謎の声がタンスから聞こえてきた。そんな馬鹿な。
いくら大きいとはいえ、大人の男が隠れられるようなスペースはないはずだ。
「やっぱり。そーれっ」
珀弥君はニッコリしながら、手のひら大の何かをタンスに叩きつけた。同時に、バチン、と電気がショートしたような音が響く。
その何かとは、蛇のようなにょろにょろとした字が筆で書かれた長方形の半紙だった。いわゆる、御札というやつだと思う。
「ぎゃああああっ!」
タンスからの悲痛なわめき声が鳴り響く。暫くの間騒がしくガタガタと揺れると、静かな普通の家具に戻った。
「珀弥君、これって……」
「ははは、気にしなくてもいいんだよ」
「ちょっと無理があるかなぁ」
「まぁまぁ、軽く流しちゃって」
珀弥君は袖を左右に振り、『あははー』とほのぼのとした雰囲気を振り撒いている。
「じゃー、お邪魔しましたー、安心して着替えてねー」
珀弥君は、ほのぼの系マシンガントークで私に反論の間を与えず、そのまま部屋から出ていってしまった。
「もうちょいツッコませてくれたって……いいじゃないですか……」
私はボソっとぼやき、着物の袖に腕を通した。
私たちは巫女装束を合わせにいく為、長い廊下を歩いていた。
隣を歩く珀弥君の服装は寝間着から狩衣になっている。やはり衣装が違うとサマになるな。
「そうそう、千真さんは身長どのくらいなの?」
「百四十五くらいだよ」
「へぇ、そうかぁ」
サイズ確認だろうか。
珀弥君は相づちを打つと、視線を空中に泳がせた。私は彼の口が『どうしよう』と動いたのを見逃さなかった。ぐぬぬ。
「珀弥君はいくつなの?」
「百八十ちょっとくらいかなぁ」
モンゴロイドにしてはでかいな。高いところにある物を取るのに困ったことはないのだろう。羨ましい。
「大きいね。身長わけてー」
「えー、自分の身体削ぐのは嫌だなぁ」
「そういう生々しい返答はいらないんだなぁ!」
のほほんとしている珀弥君のブラックジョークに、全力で突っ込むしか無かったんだなぁ。
「そんなこんなで会話をしているうちに、私たちは目的の場所についたのだった」
「こら、地の文を盗らない!」
私が珀弥君の胸に裏拳を繰り出すと、彼は喉に息を詰まらせて涙目になった。イイカンジにヒットしてしまったようだ。ごめんち。
*
「さぁ、どうぞ」
珀弥君が襖を開けると、綺麗に整理整頓されている部屋の様子が目の前に広がった。
「お邪魔します」
軽く挨拶して部屋に足を踏み入れる。
大きなタンス、等身大の鏡、化粧台……質素だが、女の人の部屋っぽい。以前、誰かが使っていたのだろうか。
「じゃあ、ちょっと待っててね」
彼は私に一言告げ、部屋の左隅にあるタンスの下段を開けた。私はそっと隣から覗き込む。中には綺麗に折り畳まれた衣類が並んでいた。
その年季の入ったタンスは、珀弥君の身長くらいの大きさだ。地震で倒れて下敷きになったら死ぬだろうな。
「ちょっと大きいかなぁ」
珀弥君はタンスから持ち出した緋袴を私の前で広げ、うーん、と唸った。
「とりあえず穿いてみるよ」
「わかった。後は……この小袖は大丈夫かな」
彼は再びタンスを漁りはじめ、一着の白衣を引っ張りだした。小さめなのはわかるが、大柄な珀弥君が持つとそれが強調される。
「お、小さいね」
「これは合うと思……」
私の身体に合わせて当ててみたら、袖が若干長かった。一瞬、空気が凍った。
「ソウデスヨネー私小さいですもんねー」
鏡にはジト目の私が写っている。
「まぁまぁ、とりあえず着てみようよ。着付けは出来る?」
珀弥君の穏やかな口調と笑顔は崩れていないが、少し焦っているのがわかる。
着付けかぁ。袴なんて穿いた事……。
「うん、大丈夫」
気付けば頷いていた。
根拠は無いが、不可能という概念は私の中に無かった。
もしかしたら、私の前世はナポレオンかもしれない。尚、共通点は小柄ということだけだ。
「じゃあ、終わったら呼んでね」
珀弥君は衣装一式を私に預け、部屋から出ていった。
女子の着替えシーンは言われなくとも出ていく、そんな貴方は紳士ね。ラブコメでは確実にフラグを折っているだろう。
『きゃーっ、のび夫さんのエッチ!!』
なんて起こらないもん。
さて、早く着替えちゃお。私は着物の襟に手を掛けた。
「ほっほっほ、ぴちぴちな女子じゃのぉ」
空気が、凍った。(本日二回目)
ぽくぽくぽく、ちーん。
「きゃあああああああ!!」
思わず叫んだ。それも、心から、腹の底から。
「千真さん!!」
パァン!! と音を立てて勢い良く襖が開き、鬼の形相の珀弥君が飛び込んできた。
だけど、私は着物がはだけてまして、あららワーオな状態でして、恥ずかしくてですね。
「きゃーっ! 珀弥さんのエッチ!!」
と、私は再度悲鳴を上げてしまったのですよ。
「うわぁ! ちさこちゃんっ、ち、違うんだ! どこだってドアが!」
珀弥君は手で素早く目を覆い、後ろを向いた。
「で、何があったの?」
流石珀弥君、切り替えが早い。
「声が、声が聞こえたの」
「声?」
怪訝そうな声音が返ってきた。いつもよりトーンが低い。
「後ろから変なおじさんの声が」
「……なるほどね。わかった」
少し考えるような間があったが、何か心当たりがあるのだろうか。
「まずは服を着てもらっていい?」
「うん」
私は急いで襟を引っ掴んで着物を整え、服を着たことを珀弥君に伝える。
その瞬間、彼は私の横をすりぬけ、タンスに蹴りを入れた。メキッと嫌な音が鳴る。
「え、なん……」
「何すんじゃ糞餓鬼!」
先ほど聞いた、謎の声がタンスから聞こえてきた。そんな馬鹿な。
いくら大きいとはいえ、大人の男が隠れられるようなスペースはないはずだ。
「やっぱり。そーれっ」
珀弥君はニッコリしながら、手のひら大の何かをタンスに叩きつけた。同時に、バチン、と電気がショートしたような音が響く。
その何かとは、蛇のようなにょろにょろとした字が筆で書かれた長方形の半紙だった。いわゆる、御札というやつだと思う。
「ぎゃああああっ!」
タンスからの悲痛なわめき声が鳴り響く。暫くの間騒がしくガタガタと揺れると、静かな普通の家具に戻った。
「珀弥君、これって……」
「ははは、気にしなくてもいいんだよ」
「ちょっと無理があるかなぁ」
「まぁまぁ、軽く流しちゃって」
珀弥君は袖を左右に振り、『あははー』とほのぼのとした雰囲気を振り撒いている。
「じゃー、お邪魔しましたー、安心して着替えてねー」
珀弥君は、ほのぼの系マシンガントークで私に反論の間を与えず、そのまま部屋から出ていってしまった。
「もうちょいツッコませてくれたって……いいじゃないですか……」
私はボソっとぼやき、着物の袖に腕を通した。
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