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アルファー=ライヒスヴェルート
神札とアルファー 4
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2015/05/05
2015年5月5日。こどもの日。
少女アルファーは、届いた朝刊を見てへたり込む。
―もう、神札が起きなくなって六か月も経ったのか・・・
そう思うと、自分の過ちが、とてつもなく重苦しいもののように感じた。
神札の友人として、友人の異変に気づけないかった、自分への、
内側へ向かう重く苦しく黒い怒り。日に日に重さも黒さも増していく。
まだ朝なのに。どうしてこんなにも黒い?
明るい太陽も、今や敵と化してしまった。
お天道様も、アルファーの心を刻む、心を裁く裁判官と化した。
つまりそれは、アルファーの心は「罪悪感」のみになっていた。
―どうして救えなかった!どうして気づけなかった!
神札は、私の異変に素早く気づいてくれたのに!
親ですら気づかなかった私の異変を暴いて助けてくれたのに!
・・・どうして、恩返しできなかったんだろう
アルファーは毛布を被って、体を丸める。胎児のように。
そうしても何の解決にもならないし、むしろ罪悪感が重くなる。
発端のあの日を思い出すだけで苦しい、しかし、
どうすればいいのか、今のアルファーでは判断つかないから。
少女アルファーは、「あの日」を思い出した。
2014/12/4
同じクラスの、神札は、いつも元気に手を挙げ、
難しい方程式も、グラフにも果敢に手を挙げる(答えがわかっているとは言っていない)。
しかし今日は、手を挙げず、いつもする給食のお替りもせず、
いつも前を向いているアンバーの瞳は下を向き、瞼もそれに従って閉じかけていた。
掃除の時間、いつもはきはきして、同年代のサボっている男子を追い越して
掃除の時間が終わるころには教室のチリを全部取って、塵取りで集めている神札が、
今日は時々ボーっとして、スカートを脱ぐことも忘れて
(この中学校では掃除の時間は下に穿いている体操服の下を露わにする決まりがあるのだ)、
下を向いて、トボトボと、箒を時々動かしながら立っていた。
―どう考えてもおかしかったじゃない、いつも元気な神札があんなになってたのに
部活を終え、下校時間になり、外では寒い風がヒューヒューとさも寒そうに音を立て、
冬の、凍てつく寒さが、部活で疲れた運動部の生徒の背中を凍えさせる。
私は神札と同じ道を通って帰るので、それとなく今日のことについて聞ける。
「みっちゃん、今日どうしたの?彼氏にでもフラれたの?」
「・・・いないよ。」
あまりにも的外れだった。今にして思えば、中学二年生で彼氏がいるのは早すぎる。
早くて高校から、ちらほらと付き合いだす程度だろう。
ただ、そのときの私は、神札の神々しさから、きっと取り巻きがたくさんいるのだろうと
思い込んでいた。その思い込みは良くなかった。
「みっちゃん、今日手を挙げなかったね」
「・・・」
「もしかしてわからな過ぎた?勉強なら教えるよ」
「・・・大丈夫。」
今にして思えば。普段わからない問題にも手を挙げ、当てられたら
「わかりません!!」と言ってクラスを明るくしていた神札のことだから、
バカにされるのが嫌になって、すねて手を挙げなくなったという可能性もあるのだが。
そのときの私は、神札の学力を本気で心配していたからどうにかしたかった。
「みっちゃん、親といざこざ起こした?」
「・・・ううん。」
神札が自分と同じ複雑な環境で育っている、その前提で聞いたのだが。
それも的外れとなれば、もうどう考えることもできず、
道の真ん中で、腕を組んで考え込んだ。
―神札がいつも話したりする神々が怪しいのでは?
だが、そのときの私は、そのときの少女アルファーは、
結論を出すことができなかった。全てをわかる前は、全貌を把握できない。
時々うなりながら、私が腕を組んで立っていると、
神札が、重そうに顎を動かした。
「もしもさ、夢の中に迷い込んだら・・・そんな事ないと思うけどさ。
絶対に、目を覚まして欲しい。わたしの、ちょっとしたわがままだけれど。」
疲れているんだなあ、その程度の認識しか持てなかった。
今思えば、それが間違いだった!!
―神札は自分の身の危険を悟って言っていたのだ!!友人である、この私、少女アルファーに!!!
その時の私はそれを感じ取れなかった。意味深なことは言っていたのに。
今にして思えば怪しいのはそこじゃないか。
夢なんて覚めようと思えば自力で覚めれる。迷い込んだら、という表現自体おかしい。
気づくヒントは、すでにあったはずなのだ。
2015/05/05
気づく原因なんて、そこらじゅうにあったのにどうして気づけなかった?
自分を責めても何にもならない。ましてや過去の自分を責めても。
それでも責めずにはいられなかった。無意味であろうと。
このようなことがまた起こることを祈っていた面もあった。
―そうでなければ、この経験は生かされないはずだから
自分の中にある黒い祈りを抑えながらも思考の沼に、堕ちていく。
今日で神札が起きなくなって6ヶ月が経った。世界中の鳥が悲しみ、
世界中のザトウクジラが悲しみの潮を吹いたが、地球はどうでもいいかのように、自転していた。
少女アルファーは打ちひしがれていた。今の医学では、神札を起こせない。
途方もないような時間がかかるが、若い神札でも流石に死んでしまう。
神札の誕生日だって、満足に祝えなかった。
神札は原因未明の植物人間状態、回復の兆しも、意識の断片さえない状態。
そして少女アルファーは、もはや恒例に近いマスコミのインタビューを終えて、眠りに就こうとしていた・・・。
2015年5月5日。こどもの日。
少女アルファーは、届いた朝刊を見てへたり込む。
―もう、神札が起きなくなって六か月も経ったのか・・・
そう思うと、自分の過ちが、とてつもなく重苦しいもののように感じた。
神札の友人として、友人の異変に気づけないかった、自分への、
内側へ向かう重く苦しく黒い怒り。日に日に重さも黒さも増していく。
まだ朝なのに。どうしてこんなにも黒い?
明るい太陽も、今や敵と化してしまった。
お天道様も、アルファーの心を刻む、心を裁く裁判官と化した。
つまりそれは、アルファーの心は「罪悪感」のみになっていた。
―どうして救えなかった!どうして気づけなかった!
神札は、私の異変に素早く気づいてくれたのに!
親ですら気づかなかった私の異変を暴いて助けてくれたのに!
・・・どうして、恩返しできなかったんだろう
アルファーは毛布を被って、体を丸める。胎児のように。
そうしても何の解決にもならないし、むしろ罪悪感が重くなる。
発端のあの日を思い出すだけで苦しい、しかし、
どうすればいいのか、今のアルファーでは判断つかないから。
少女アルファーは、「あの日」を思い出した。
2014/12/4
同じクラスの、神札は、いつも元気に手を挙げ、
難しい方程式も、グラフにも果敢に手を挙げる(答えがわかっているとは言っていない)。
しかし今日は、手を挙げず、いつもする給食のお替りもせず、
いつも前を向いているアンバーの瞳は下を向き、瞼もそれに従って閉じかけていた。
掃除の時間、いつもはきはきして、同年代のサボっている男子を追い越して
掃除の時間が終わるころには教室のチリを全部取って、塵取りで集めている神札が、
今日は時々ボーっとして、スカートを脱ぐことも忘れて
(この中学校では掃除の時間は下に穿いている体操服の下を露わにする決まりがあるのだ)、
下を向いて、トボトボと、箒を時々動かしながら立っていた。
―どう考えてもおかしかったじゃない、いつも元気な神札があんなになってたのに
部活を終え、下校時間になり、外では寒い風がヒューヒューとさも寒そうに音を立て、
冬の、凍てつく寒さが、部活で疲れた運動部の生徒の背中を凍えさせる。
私は神札と同じ道を通って帰るので、それとなく今日のことについて聞ける。
「みっちゃん、今日どうしたの?彼氏にでもフラれたの?」
「・・・いないよ。」
あまりにも的外れだった。今にして思えば、中学二年生で彼氏がいるのは早すぎる。
早くて高校から、ちらほらと付き合いだす程度だろう。
ただ、そのときの私は、神札の神々しさから、きっと取り巻きがたくさんいるのだろうと
思い込んでいた。その思い込みは良くなかった。
「みっちゃん、今日手を挙げなかったね」
「・・・」
「もしかしてわからな過ぎた?勉強なら教えるよ」
「・・・大丈夫。」
今にして思えば。普段わからない問題にも手を挙げ、当てられたら
「わかりません!!」と言ってクラスを明るくしていた神札のことだから、
バカにされるのが嫌になって、すねて手を挙げなくなったという可能性もあるのだが。
そのときの私は、神札の学力を本気で心配していたからどうにかしたかった。
「みっちゃん、親といざこざ起こした?」
「・・・ううん。」
神札が自分と同じ複雑な環境で育っている、その前提で聞いたのだが。
それも的外れとなれば、もうどう考えることもできず、
道の真ん中で、腕を組んで考え込んだ。
―神札がいつも話したりする神々が怪しいのでは?
だが、そのときの私は、そのときの少女アルファーは、
結論を出すことができなかった。全てをわかる前は、全貌を把握できない。
時々うなりながら、私が腕を組んで立っていると、
神札が、重そうに顎を動かした。
「もしもさ、夢の中に迷い込んだら・・・そんな事ないと思うけどさ。
絶対に、目を覚まして欲しい。わたしの、ちょっとしたわがままだけれど。」
疲れているんだなあ、その程度の認識しか持てなかった。
今思えば、それが間違いだった!!
―神札は自分の身の危険を悟って言っていたのだ!!友人である、この私、少女アルファーに!!!
その時の私はそれを感じ取れなかった。意味深なことは言っていたのに。
今にして思えば怪しいのはそこじゃないか。
夢なんて覚めようと思えば自力で覚めれる。迷い込んだら、という表現自体おかしい。
気づくヒントは、すでにあったはずなのだ。
2015/05/05
気づく原因なんて、そこらじゅうにあったのにどうして気づけなかった?
自分を責めても何にもならない。ましてや過去の自分を責めても。
それでも責めずにはいられなかった。無意味であろうと。
このようなことがまた起こることを祈っていた面もあった。
―そうでなければ、この経験は生かされないはずだから
自分の中にある黒い祈りを抑えながらも思考の沼に、堕ちていく。
今日で神札が起きなくなって6ヶ月が経った。世界中の鳥が悲しみ、
世界中のザトウクジラが悲しみの潮を吹いたが、地球はどうでもいいかのように、自転していた。
少女アルファーは打ちひしがれていた。今の医学では、神札を起こせない。
途方もないような時間がかかるが、若い神札でも流石に死んでしまう。
神札の誕生日だって、満足に祝えなかった。
神札は原因未明の植物人間状態、回復の兆しも、意識の断片さえない状態。
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