溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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初めてのお友達

規格外の娘【リミック】

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 「退屈だ!!」

 そう叫んだ殿下は貴族達の変化に気付いたのだろう。
 薄汚い陰謀が渦巻くこんな場所に、ユーリにいてほしくはなかった。

 すぐにでもユーリを外に連れ出してくれたことには感謝する。
 許可なく勝手に触れて手を繋いだことは許し難い。王族でなければ容赦はしていなかった。

 残された大人達は目の色を変えて一斉に声をかけてくる。

 「公爵!是非とも私の息子と婚約を!!」
 「貴様の息子はもう成人しているだろう!それよりも私の息子はどうだ!?」
 「歳の近さならば私の息子が一番のはずだ!!」
 「落ち着け!この国で婚約者を探すよりも、もっといい相手がいるではないか」
 「イラーフ帝国か!あそこの皇子は今年で6歳。2歳差の夫婦など珍しくもない」
 「公爵令嬢ならば国のために人生を捧げてもらわんとな」
 「黙れ!!」

 好き放題喋る連中を睨んだ。
 いつでも発火させられるように玉座の間に充満させる。

 脅しであるとわからせるために、高密度の魔力は肌にまとわりつく。どんな無能でも命の危機に晒されているとなれば大人しくなるだろう。

 魔法ほのおはいつでも連中を焼き尽くす。私の炎はこの程度の連中に消されるほど弱くはない。骨も残さぬよう灰にしてやる。

 「陛下!陛下はどうお考えですか!?」
 「全属性を持った人間を花嫁として差し出せば、帝国との仲はもっと深まると思いませんか」
 「ユーリが望まぬことを強要するつもりはない」

 賛同を得られると思っていたのか、どよめきが場を支配した。

 イラーフ帝国は神の国とも呼ばれている。
 皇族は神の使いでもある麒麟の加護を受けていて魔法一つ取っても、その差は歴然。

 万に一つの勝ち目すらない。

 帝国民全員が加護を受けているわけではないが、皇族だけでも我々が束になっても勝てないのが現状。下手をすれば皇子一人に負けるかもしれない。

 臆病者の年寄りは恐れているのだ。

 帝国が本気で攻め込んできたら、と。

 負けてしまえば自由を奪われ、鎖で繋がれる人生みらいが待つ。
 奴隷として一生、膝を付くことを強いられる。

 貴族に生まれ、他人を見下すことしかしてこなかった人間には耐え難い屈辱。

 そんな心配や恐怖が無駄であると知っているのは、王家やテロイ家。他には数名の当主。

 イラーフ帝国は戦争を起こす気など毛頭ない。平和条約を結んでから両国の関係は格段に良くなり、今では年に数回、交友会を開くほど。
 互いの国を行き来し、困り事があらば力も貸してくれる。

 ここにいる連中だって何度も参加しているのに、結局は上辺だけの関係だと疑っていたのだろう。

 偽物の笑顔。ハリボテの優しさ。
 内心ではイラーフ帝国を敵として認識している。

 ──無能バカ共が。

 「し、しかし!!」
 「そこまで帝国に貢ぎ物をしたければ、生まれてくるお前の子供を差し出したらどうだ。皇子の遊び相手としてな。さぞ喜んでくれることだろう」

 イラーフ帝国を邪悪で野蛮な国だと思い込み、“遊び相手”が言葉通りではなく危険なものであると想像までして。

 残忍な光景が頭をよぎっているのか。
 それぞれの緊張感が空気を震わせる。
 誰も私と目を合わせようとせず、視線は宙を彷徨う。

 陛下も呆れていた。

 口を開けば「国のため」と繰り返してきたくせに、自分から何かを差し出すことは倦厭けんえんする。

 他人の子供ならばどうなってもいいと?

 愚弟夫婦が増えたみたいで腹立たしいな。

 ユーリが実の家族から虐待を受けていたと報告したことをもう忘れている。
 それとも。虐待を受けていたから痛みには慣れて何をされて平気だとでも思っているのか。

 ふざけるな。コイツら全員、消し炭にしてやる。

 フツフツと湧き上がる怒りは冷静さを失わせるも、レーゼルがそっと手を重ねてきた。落ち着け、と。

 止めてくれたのはテロイ家ではなくユーリのため。

 自分のせいで人が死んだとなればあの子は悲しむ。
 泣いて欲しくはないから……今回を目を瞑った。

 「し、失礼します!陛下!!」

 閉め切った扉を勢いよく開けたのは先程、ユーリと退室した女性の騎士。

 激しく息を切らせて中腰で乱れた呼吸を整える。
 周りは何事かと急かすが陛下は彼女が落ち着くのを待った。
 顔を上げたその表情は険しい。

 「青龍様がユーリ様に真名をお教えになったようです」
 「なっ……!?」
 「青龍様は王家の守護者だぞ!!」
     「神獣は契約者以外には決して触れれぬ存在であるぞ!!」
 「それだけではございません!!ご自身の鱗もお渡しになられておりました」

 最上位に位置する魔物の数は少ない。

 ホワイトドラゴンを除けば、ハザックの森を住処にして暮らしているキングゴブリン。
 海の支配者、人魚プリンセス
 山に生息しては大量の子供を今も産み続ける火蜘蛛。

 禁を犯さなければ決して出会うことのない魔物達。

 神獣や最上位の魔物が真名を教えるだけではなく、体の一部を人間に渡す行為は服従とは別に信頼を意味する。
 それぞれが持つ属性の魔法陣が刻まれたソレは、魔力の増幅、魔法の精度向上。もたらす影響はプラスのものばかり。

 彼女の発言が虚偽でないことは、態度からわかる。
 何がどうしてそうなったのか。それだけがわからず、ユーリ達がいる庭園へと急ぐ。

 青い花は青龍が好む。この空間は青龍の魔力に守られている。
 足を踏み入れることが許された者は心地良さを感じるが、青龍が心を許していない者は弾かれて入れない。

 ユーリを帝国に売り渡そうとしていた連中はもれなく庭園への出入りを許可されない。

 「……なぜ、ホワイトドラゴンがここにいる?」

 殿下に説明を求めるも「わからない」の一言に尽きる。

 青龍を呼び出したのは殿下だが、真名を教えて鱗を授けたのは青龍の意志。

 混乱しているとホワイトドラゴンが降り立ったということらしいが……。

 二匹が火花を散らすように睨み合っている。ぶつかり相殺される魔力。

 幼い殿下にこの空気は耐えられるものではなく、魔力を不安定に揺らしながら額から汗を流す。
 大人の我々でさえ圧倒されているのに、たった一人だけもろともしない者がいる。

 ユーリはホワイトドラゴンの背中に乗せられて、羽毛に埋もれていた。
 姿は見えないし声も聞こえないが、魔力はそこに感じる。

 「ユーリ!」

 下から声をかけると羽毛の中から満足そうな笑顔を浮かべてユーリが顔を出す。

 その愛らしさについ頬が緩む。
 私だけでなくレーゼル達もなので、ユーリの可愛さは証明されたも同然。

 「おいで」

 両手を広げると躊躇いなく飛んだ。
 落とさないようにしっかりと受け止めて、その流れで抱きしめる。

 満面の笑みで微笑むユーリの可愛さは最上級であり、愛しさだけがどんどんと膨らんでいく。
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