溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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初めてのお友達

羽根と鱗を貰いました

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 地上に降り立ったアネモスは私を咥えて、そのまま背中に放り投げた。
 空中に浮いている間、落ちていく瞬間。命綱も安全バーもなく命の危険を感じていたけど、アネモスの背中に着地と同時にそんなことはどうでもよくなった。

 フワフワもふもふの毛並みに埋もれていると、些細なことなど吹き飛ぶ。
 大きすぎる背中と小さすぎる私。ゴロゴロ~と転がっても落ちることはない。
 どこもかしこも肌に優しく、ここはまさに天国。

 「ユーリ!」

 お父様の声だ。大人だけの話し合いは終わったのかな。
 羽毛を掻き分けて下を覗いた。

 多分、私の顔は今、最上級の笑顔。表情筋が緩みまくっているのがよくわかる。

 「おいで」

 両手を広げて微笑んだ。イケメンすぎるよ、お父様。

 肖像画として売り出されたら即完売。
 既婚者なのにモテモテ。美人すぎるお母様と並んだら、オーラがすさまじく神々しい。
 更にお兄様まで加わったらもう……。

 誰もが羨む美しすぎる家族だ。

 そこそこ高さがあるのに、不思議と私に怖さはない。
 信用しているからだ。お父様のことを。私を絶対に受け止めてくれると。

 見事、寸分の狂いなくお父様の腕の中に収まった。

 「ユーリ。青龍から鱗を貰ったと聞いたのだが」
 「あい!」

 見せようと思って、気が付いた。

 鱗どこいった?

 ずっと手に持っていたと思ったんだけど。下に置いた記憶もないし。
 アネモスの背中に乗ったときにはもう持っていなかったような……?

 つい今しがたの出来事なのに記憶がない。
 不思議な現象に頭を悩ませていると、アネモスの羽根が一枚ヒラリと舞う。
 ゆっくりと私の手の中に落ちて、それには模様が刻まれていた。
 鱗に刻んであったものとよく似ている。

 緑色の光が空へと伸びて天を貫く。さっきと同じ現象。
 光の色だけは違う。

 ──うを!!?

 羽根が沈むように体の中に入っていく。
 異物が体内に入り込んだ不快感はなかった。溶けて消えた、みたいな感じ。
 まさか、さっきの鱗も同じように……?

 そりゃあ見つからないよね。体の中にあったら。

 「ユーリ。君は一体、何者なのだ?」

 王様は驚愕しながらも状況がよく飲み込めていないようにも見える。

 「ユーリは私の娘ですよ。陛下」

 まるで牽制するかのような言い方。視線も王様ではなく庭園に入らない人達に向けられている。

 ──あんな遠くにいないで、こっち来たらいいのに。

 「ユーリ。青龍から真名を教えてもらったかい?」

 名前……。考えて、ハッとして、うなづいた。

 ついでに魔力も貰い、ブロンテーは私に服従してしまっている。

 これは……報告すべきだろうか。
 いやまぁ、隠しておくわけにはいかないんだけどさ。
 タイミングは今じゃないよね。
 向こうでザワついている大人には、あまり知られてはいけない気がした。

 何となく察してくれているのに、何も言わない大人の皆さんには感謝しかない。

 ──帰ってから言おう。

 私が望んだわけではない。不可抗力だと説明すればお咎めはないはず。

 王家を守護する青龍が何の関係もない私に服従なんて、許されるはずはないし、あっていいことですらない。

 アネモスは家族だからわかるとして、ブロンテーはどうして私に魔力をくれたのか。
 知性を持つブロンテーが服従の意味を知らないはずがない。あと、鱗や羽根を貰うとどうなるのかお父様にまた教えてもらわないとね。

 知らないことを知るのは楽しい。知識が増えると私にできることがあるのではと可能性が広がっていく。今のとこは何もないけど。
 できることではなくて、やるべきことに目標を変えれば頑張ることは絞られる。

 体力作りと喋ること。

 歩く練習をしてご飯もべられるようになって、すぐにとはいかないけど年内には普通の子と同じようになれたらいいな。

 「陛下。ユーリは気分が優れないようなので、急ではございますがこれで失礼致します」

 およ?私は全然元気だよ?
 体調に変化は見られない。
 顔を覗き込む王様と頬に手を添えてくれる王妃様。

 「あら大変。すぐに帰って安静にしていないと」
 「顔色も悪いようだ。こちらのことは気にしなくていい。ユーリの体調が一番だからな」

 え、そうなの?自分ではわかってないけど今の私ってそんな体調悪いんだ。
 体のダルさや熱っぽさもない。至って健康。
 私は痛みに鈍感なわけだし、もしかしたら本当に弱っているのかもしれない。
 心配してくれている割にちょっと笑顔なのが疑問だけど。

 エルノアルヴィトだけが取り乱す勢いで心配して、王宮医を呼ぼうかとまで言ってくれる。慌てふためくその姿は歳相応で、王子として厳しい教育を受けていてもちゃんと子供なのだと安心した。

 大人に囲まれて日々を暮らしていれば、幼いうちから色々と吹き込んで思い通りに操ろうとする悪い大人は絶対にいる。
 正しいことと悪いことの板挟みになり心が病んでしまうかも。

 でもまぁ、私が心配することなんて一つもなかった。
 悪いと思ったら謝る。出会ったばかりの他人の心配もしてくれた。
 成長しても間違った考えで国民を混乱させることはないだろう。

 「えう、ばいばい」
 「ほう。息子を愛称で呼んでいるのか」
 「あい」
 「それはつまり、殿下が許可したということですか?」

 お父様はなぜ怒っているのか。

 もしや!!テロイ家は中立の立場で王族とあまり親しくしないほうがいいのかも。
 歳が近く、愛称で呼ぶほどの仲なら周りに誤解されてもおかしくはない。
 私にそんな気がなくとも、だ。

 家に迷惑がかかるなんて私も望まない。
 そんなに仲が悪いなら(私が)王宮に足を運ぶことなんて早々ないだろうし、エルノアヴィルトとも会う機会はなくなる。

 そのほうがお互いにとってもいいとはいえ、友達になったのに会えないのは寂しい。
 手紙のやり取りだけなら許してくれるだろうか?

 毎日じゃなくていい。週に一度だけでも。

 要は周りが誤解しない距離感さえ保っていればいいわけだし。

 お父様に抱っこされたまま首をヒョイッと出して、エルノアヴィルトに手を振る。

 これくらいならいいよね?またねの挨拶だし。
 ん?会えるかわからないのに、またねはおかしいか。

 私の悩みとは関係なくエルノアヴィルトは手を振り返してくれた。
 ぎこちなく、顔を赤くしながら。

 ──エルノアヴィルトも体調崩してたのかな?
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