溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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初対面

新しい友達が出来ました!!

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 お肉は口に入れるとすぐに溶けた。色濃いソースは意外にもアッサリでしつこくない。
 サラダと一緒に食べることでよりサッパリと食べられる。
 しかもこのお肉。牛なんだって。
 牛肉は貴族の中でも特にお金を持っている家しか食べられない高級品。それをズラリと並べれられる財力は流石。

 観察しているとみんなのお皿には必ず牛肉が乗る。

 ──鶏や豚も美味しいのに。

 滅多に食べられない料理を味わいたい気持ちもわからないでもないけど。

 肉料理や野菜料理はあるのに、魚介料理がないのはなんでだろ?
 海がないのかな。

 「ところで。これって何のパーティー?」
 「ただの顔合わせだよ」

 つまらなそうに、どこか嫌そうにセインは言った。

 瞳に影が落ちるのと同時にため息をつく。

 ゼリフラ王国とアスタミイル帝国はそこそこ仲が良い。困ったときには手を差し伸べる程度には。

 交友関係の維持ではないけど、新たに王太子と皇太子が生まれたとき。お互いの国に留学という形で滞在することになっている。
 前回は今の王様がアスタミイル帝国に行ったので、今回はセインがゼリフラ王国へと来たのだ。

 この会場も土地は王国の物だけど、実際に建てたのは帝国民。わざわざ材料を運んで建てたとか。
 同じく帝国にも似たような建物がある。

 滞在期間は10歳までと決められているものの、本人が望めば長く留まることも可能。

 パーティーにセインと歳の近い子供だけが呼ばれているわけか。
 つまりは婚約者や側近を探す場でもある。
 懇意にしている他国から選ぶことで、国同士の親睦を深める意味も込められていた。

 まだ6歳なのに重たい責任を背負わされて。
 エルも他人事ではない。この中から婚約者を……。恐らくラーシャが最有力候補なのだろう。ヒロインだし。
 未来の王妃様を選ぶ使命が課せられていて、とても楽しむ雰囲気ではない。

 「飲み物取ってくるね」

 暗くなりつつある空気をリセットしないと。

 「待って。私とエルノアが行くから」
 「ユーリはここで待っていろ」
 「大丈夫だよ。お兄さんに頼んで運んでもらうから」

 王太子と皇太子をパシリのように使う度胸はない。周りからどんな目で見られることか。

 私がテロイ家の養女であるとどこまで噂が広まっているのかわからないけど、ラーシャの取り巻きが大声で“ななし”と呼んだせいで私は浮いていた。

 高貴な二人と席を共にしていることもあり、誰も近寄ってこない。
 新しい友達が作れるのではとワクワクしていた気持ちが沈む。

 現実が想像通りにいくことはまずない。必ずどこかで綻びが生じて失敗するものだ。



 パシャッ。



 椅子から降りてボーイさんの元に向かっていると、女の子が持っていたジュースがドレスにかかった。

 小さな私に合わせた小さなドレス。シミは全体に広がる。白いドレスだからこそ余計に目立つ。

 目の前には今にも気を失ってしまいそうなほど、血の気が引き顔色の悪い令嬢が倒れている。
 転んだ拍子にジュースが零れて私にかかった。事故だ。よくある……と言うのは語弊があるけど、わざとじゃないのであれば責める必要もない。

 「あーら。貧乏貴族が殿下の気を引こうと何やらおかしなことをしているわ」

 ラーシャ。貴女はヒロインなんだから、そんな悪役令嬢みたいな立ち位置でいたらダメでしょう!?
 周りの取り巻きも意地の悪い笑みを浮かべながら肯定する。

 女の子は泣かないよう必死に耐えているけど目が赤い。瞬きでもしたら涙が溢れてしまう。

 ──貧乏、か。

 この日のために両親が無理をして誂えてくれたドレスを、貶し嘲笑うラーシャ達にはドン引き。
 それに乗っかって他の人も笑う。空気を読んだかのように。

 周りの反応からして、女の子が着ているのは何年も前に流行ったドレス。
 流行が終わってしまえば正規の値段の半額、物によればもっと安く買える。

 どこの世界もお金がない人なら、いじめていいと認識する。
 私はいじめられていたわけではないけど、男子からの陰口が多かっただけ。

 ──むしろ女子はずっと私の味方だったような?

 私のせいで男女の空気がそこまで悪くなることはなかった。

 「あ、あの。私……」
 「大丈夫?」

 いつまでも起き上がらない女の子に手を差し伸べるとポカンと口を開けたまま固まった。
 怪我をして立てないんじゃないのかな?

 「“ななし”が貧乏と馴れ合ってるぞ」
 「ははは!お似合いじゃないか」

 下品な笑い声には耳を傾けない。無視していると背後から二人ほどの冷たい殺気のようなものを感じた。
 振り向くのも怖い。見えている女の子は徐々に視線を逸らしていく。目を閉じないと、どうしても視界に入ってしまうらしく顔色は悪いまま。

 「ねぇ。さっきから“ななし”って誰のことを言ってるの?彼女にはユーリって名前があるんだけど?」
 「ユーリ・テロイはお前らが見下していい相手ではないと、わからなかったのか?」
 「テロイ?テロイってまさか……」
 「パパが言ってたあの!?」

 目の色が変わった。恐怖と期待。
 私を“ななし”と呼んだ子息達は顔面蒼白。尋常ではない震え。すぐにでも医者に診てもらったほうがいい。
 遠巻きに見ていた子息令嬢達は、私に取り入ることだけを考える。さっきまであんなに陰で笑っていたのに、手の平を返したように私を褒めちぎってくる始末。

 「ユーリのドレス。低く見積もっても5千万カリンはくだらないだろう」
 「ひっ!!」

 女の子よりも先に反応したのはラーシャの取り巻き子息。何で?
 その理由が明らかになったのはすぐ。

 「彼女の足を引っ掛けてわざとユーリのドレスを汚したとなれば、お前の家も終わりだな」
 「そ、そんな……。俺がやった証拠でもあるんですか!?」
 「ほう。つまりお前は俺達を嘘つき呼ばわりするというのか。その度胸に免じてテロイ公爵とすぐに会えるよう手続きをしてやろう」

 なんて清々しい笑顔。腹黒さ満載。
 王子らしい笑顔なのに怪しさしか感じられない。

 エルの言葉を否定するということは、王家への忠誠を違えるのと同義。
 かと言って肯定すれば王家に対する侮辱と、お父様と二人きりで対面さなければならない恐怖が待つ。

 ──引きつった顔で私を見られても。

 助け舟を出したくても私が入り込む隙はない。

 「も、申し訳ございません!!公女様のドレスは一生かかっても弁償致します!!」

 重たい空気が充満してくると、女の子が勢いよく額を床に打ち付けた。
 あまりにも突然すぎて誰もが一瞬だけ固まる。

 「ほ、ほら!その貧乏人もそう言っていることですし、俺には何の非もない!!」

 彼が何を言おうと私は興味がない。目の前にいる女の子を立たせて、ドレスについた汚れを払う。

 「怪我はしてない?大丈夫?」
 「私は……大、丈夫……です。けど」
 「ドレスのことは気にしないで?汚れたら洗えばいいだけだし。でもね、怪我したら痛くて苦しいから」

 女の子の手を取って再度、聞いた。

 「怪我はしてない?」
 「は、はい。あの……私は大丈夫です。本当に」
 「そっか。良かった」

 ホッと胸を撫で下ろした。

 別の安心をしている子息に関しては、エルとセインが未だに睨みをきかす。
 威圧はしていないのにまだ顔色は悪く、息苦しそう。

 二人の新たな一面。男らしいギャップにキュンとしないのは、実年齢に差がありすぎるからだ。
 20歳差だよ?どんなに頑張っても異性として意識出来るはずもない。

 「お前。スルートス伯爵家だな?父親が何度も贈り物をしてくるぞ。お前を俺の側近にしてくれとな」
 「ほ、本当ですか!?」

 何を勘違いしているのか表情が一気に明るくなった。
 今の会話の流れから察するに、彼を側近にはしない。候補にすら上げないということ。
 わかってないのかな?

 まさかその逆で、このタイミングで自分が側近に選ばれたと勘違いしたのなら、なんて素敵な思考の持ち主。

 胸を張って急に態度を変えた。王家の後ろ盾がある自信。私を見下すように顎まで突き出して。

 ──教えてあげたほうがいいかな。

 彼だけでなくラーシャまでもが勘違いしているみたいで、おかしい人は一人じゃなかった。

 「殿下!これからはお傍で殿下をお守り致します!!」

 堂々と胸を叩き自信満々に宣言をする姿は愚か者。

 「はぁ。お前が俺の側近?笑わせるな」
 「で、でも……」
 「お前みたいな無礼な奴を側近にしたら、俺の沽券に関わるだろ。謝罪もまともに出来ない息子を育てる奴が、王宮に足を踏み入れること自体不愉快だ」

 そこまで言われると流石に理解したようで。希望から絶望へ。奈落の底まで真っ逆さま。
 自分の置かれている状況がよろしくないと気付き焦る。

 慌てて私の前に来ては深く頭を下げた。

 「公女様!この度は申し訳ごさいませんでした!!」

 もう後がない。藁にもすがる思いで必死の謝罪。
 多くの人が集まるこの場でエルに見放されたら一巻の終わり。家門に泥を塗るどころか勘当レベルの失態。
 彼を伯爵家から追放したところで、エルからの信頼を取り戻せるわけでもない。
 だとしたら最善の策は一つ。

 この場で自らの謝罪を受け入れてもらうこと。

 「えーーっと……なぜ私に謝るんですか?」
 「え?」
 「貴方が足を引っ掛けて転ばせたのは私ではなくて彼女でしょう?謝る相手が違うのでは」

 正論をぶつけると急に私の声が聞こえなくなった。
 聞き返したあとは目をパチパチさせるだけ。時折、視線が女の子に移るけど、その目には侮蔑しかない。

 身分で人を見下す典型的パターン。お金がなくて爵位も低い。攻撃するにはうってつけ。

 貴族には貴族のプライドがある。身分が上にいる貴族ほど、下の人間に頭を下げることを嫌う。

 「謝らないの?私には簡単に謝ったのに」
 「だってそれは……。公女様ですし」
 「んん?私が公女だから謝る?つまり貴方は自分より身分が上の相手にしか謝れないと?え……そんな横柄な人が本気で王太子の側近になれると思っていたんですか?」
 「くく……確かにな」
 「幼いユーリのほうが賢いみたいだね」
 「あ……っ、く……」

 なんか私が恥をかかせたみたいなった。そんなつもりはなかったのに。
 ただ、貴族だろうと悪いことをしたら謝る。そんな当たり前のことさえわからないのなら、誰かの下に就くのは諦めたほうがいい。
 常識を身に付けていなければ恥をかくのは主人。

 「わ……わざとじゃないけど……悪かった」
 「い、いえ!そんな……」

 謝り方は引っ掛かるけど部外者がこれ以上、口を挟むわけにもいかない。
 後ろの二人も我慢しているわけだしね。あとは当人同士に任せておこう。

 間違っても手を出さないように見守り、円満?に解決したのを見届けた。

 全員の視線が注がれて女の子……エミィレ・アクリッテ子爵は俯いてしまう。
 良くも悪くも注目されてしまい、その場から動けなくなったエミィレに手を差し出した。

 「名乗るのが遅くなり申し訳ありません。私はユーリ・テロイです。エミィレ・アクリッテ嬢、私と友達になってくれませんか?」

 空気……周りがザワつく。他にも多くの令嬢がいる中で、よりにもよって貧乏貴族が、と。

 一番驚いているのはエミィレ自身。後ろを振り向く奇行を何度も繰り返しては、最終的に自分のことだと判断して大袈裟に驚いた。
 エミィレは口元を手で抑えながら後ずさる。

 追うように一歩を踏み出すことなく、行き場を失くした手をそっと下ろす。
  
 そうだよね。どんなに私が友達になりたくても、この手を掴んでくれるかは相手次第。
 私は身分を利用して強要するつもりがないため、断られたら引き下がるしかない。

 ──同性の友達、作れると期待しちゃったな。

 「ごめんなさい、エミィレ。困らせてしまって」
 「困るだなんてそんな……。驚いただけで。あの……どうして私なんかを」
 「友達になりたいと思うのに、理由がいる?私はね、エミィレと友達になりたいの。まだエルしか友達がいないから」
 「私は子爵令嬢です。お金もなくて貧乏。公女様とは不釣り合いです」
 「私はね。友達になるために身分も家柄も関係ないと思ってる。だって私がエミィレと友達になりたいだけなんだから」

 今にして思えば優里わたしの友達は皆、親がいないこと、祖父母に育ててもらっていることをバカにしたり哀れんだりはしなかった。

 私の人生を不幸だと決め付けるのは、産んでくれた両親と育ててくれた祖父母を侮辱することであり、私という人間を否定している気分になると話してくれたんだ。

 感謝してもしきれない。みんなの優しさが、私を腐らせることなく真っ直ぐと生きる道標となっていた。

 友達になるために必要なのは資格ではない。相手に歩み寄る勇気。

 「わ……私でいいんですか?」

 遠慮したような物言い。貧乏で爵位が低いことを気にしている。
 あと一歩を躊躇うエミィレに私から歩み寄っても、後ろに下がることなく私から目を逸らさない。
 黄緑色の瞳に不安はなく、決心が付いたようだった。

 「エミィレがいい。初めての同性の友達になってくれる?」

 下心なんてない、純粋な笑顔を浮かべた。
 私は貴女に敵意を向けない。そんな意味を込めて。

 誰と友達になりたいかは私が決める。周りの意見も、私への評価も関係ない。

 無論、同情や哀れみから友達になろうと言っているわけでもなかった。

 エミィレ・アクリッテのことをもっと知りたい。好きな物や嫌いな物。
 魔法の属性や、好きな人の有無。

 友達でいることを負担に感じて辛いと思うなら、いつでも縁を切ってもらって構わない。
 大切なのは私ではなくエミィレの意志なのだから。

 「私なんかでよければ、よろしくお願いします」

 差し出した手をギュッと強く握ってくれるエミィレに対して、へにゃりと笑みが零れる。
 何歳になっても新しい友達が出来るのは嬉しいものだ。

 「エミィレ。向こうで一緒に食べよ」

 席に戻る前に飲み物を取りに来ていたことを思い出す。

 紅茶以外にも何種類かのジュースも選べる。
 こちらと馴染みのある物ばかり。
 ご飯に合う飲み物って何だろ?ここは無難に紅茶か、子供らしさ全開でジュースにするべきか。

 真剣に悩んでいると、後ろから肩を叩かれた。振り向けばセインがいて、不貞腐れている様子。

 「私はユーリの友達じゃないのかい」

 可愛い顔で頬を膨らませて、いじけたように聞かれた。小石があったら蹴ってしまいそうな、そんな雰囲気。

 友達……友達か。セインとは心のどこかでもう会うことはないと思っていたので、友達という感覚はない。
 返答に困っていると、もっと頬が膨らみリスみたいになった。

 「セインも私と友達になってくれるの?」
 「最初からそのつもりだよ」

 良かった。機嫌が直ったみたい。

 男の子というだけで、そんなに歳が変わらないのに私よりも少し大きな手が私の手を包み込む。
 温かくて、熱が流れ込んでくるみたいだ。

 「セイン!いつまで手を握っているつもりだ!ユーリが困っているだろう!!」

 勢いよく引き剥がされた。加減することのないチョップで。すぐさま間に割り込み、セインと向き合う。

 私よりも先に出会って友達になっていた身としては、ぽっと出の私なんかに親しい友達の座を奪われるのは耐え難い。
 なるべく仲良くならないように邪魔したいよね。うんうん。
 歳相応の反応を見ると、王族でも子供なんだなと安心する。

 親友の座を奪うつもりはなく、私は仲良くしてもらえるならそれでいい。
 大勢の前でそれを言ってしまうと、エルの器が小さいと勘違いされてしまうので、また後日改めて伝えるつもりだ。

 いつまでも見つめ合う二人の手を取った。

 その瞬間、大股で足早に一人の男性が近づいてきた。その人はお父様と同じ羽織を羽織っている。
 ハルテの街にいた人だ。顔はしっかり覚えているけど、自己紹介をしてもらってないから名前までは知らない。

 急な大人の登場。しかもその人がお父様の部下であることを象徴する羽織を羽織っているものだから、子供と言えど下心が働く。
 取り入りたい気持ちを全面に押し出しながらも、男性が私に対して即座に膝を付くものだから、誰もが動けないでいる。

 「リミック様よりユー……公女様が今朝から体調が悪いため、すぐさまお連れするようにと命を受けて参りました」

 …………そうなの!?

 起きたときから体は元気。ピンピンしてたんだけどな。平熱で、気だるさもない。
 顔色が悪かったら朝の時点で教えてくれるだろうし。
 いや、私はまだ自分の体調に関して疎いのかもしれない。未だに痛みが感じられないのだ。体調不良なんて目に見えない痛みがわかるはずもない。

 ずっと見ていてくれた家族が、私を体調不良だと言うのだ。そうに違いない。

 「公女様。抱き上げても構いませんか?」

 あと疑問に思うのが、どうしてこの人は私を名前で呼びかけて公女と言い直したのだろうか。
 私は名前で呼ばれるほうが好きなのに。

 しょんぼりしているとエルとセイン、二人に背中をそっと押された。

 「すぐにでも帰ったほうがいい。無理をして悪化したら大変だ」
 「うん。パーティーのことは気にしなくていいよ。ただの顔合わせの場なんだから。早く帰ってゆっくりおやすみ」

 帰ることを促されるということは、私の体調は相当悪い。

 エルと再会した喜びもあるけど、新しい友達が出来たことに感情が昂ってしまったのだろう。
 心なしか体温が上がったみたい。

 「エミィレも一緒にじゃダメですか?」
 「えーーっと、あぁ。アクリッテ家の三女ですね」

 顔を見ただけでどの家の子供かだけではなく、何番目の娘かもわかるなんて。
 元から記憶力が良いのか、必死に覚えたのか。どちらにしても、すごいことだ。

 この場にいるだけでも五十人以上はいるのに、この人は全員を覚えているってことでしょ?
 親しい人ならともかく、関わりを持つかもわからない人のことも覚えるなんて。私も見習ってまずは、同年代を覚えようかな。

 「まぁ、同性ならいい……のか?」

 何かをポツリと呟いた部下の人は目を細めて笑った。

 「もちろんです。アクリッテ嬢もお屋敷にお送り致しますよ」
 「い、いえ!そんな!!私はここに残りますので。どうか公女様を優先して下さい」
 「私はエミィレともっとお話したかったけど、そうだよね。せっかくのパーティーだもん。楽しみたいよね」

 意見を押し付けないために身を引くとはいえ、話し足りないのも事実。
 一緒に帰りたいなんて子供じみた理由でエミィレの選択肢を潰していいはずもない。

 「(こ、公女様。可愛い……!!)」

 仕方ない。諦めて一人で帰ろう。大丈夫。寂しくはない。
 馬車ではリンシエが待っていてくれる。

 何を話そうか。久しぶりにエルと会えたことは絶対として、バザーでカレンダーを買ってくれた人が実は皇太子だった?
 閉じ込められていた私と違って、リンシエなら見覚えがあったかもしれない。
 気を遣わせてしまう話題は避けないとね。

 「やっぱり!ご一緒してもいいですか?ご迷惑でないのなら」
 「ほんと!!?嬉しい」
 「それでは公女様、アクリッテ嬢。行きましょうか」

 私を抱き上げようとした手は途中で止まる。既にエミィレと手を繋いでしまっているからだ。
 困ったりすることなく、微笑ましそうに目を細めるだけ。

 「ユーリ。今日は会えて良かったよ。お大事にね」
 「うん、またね!私も会えて嬉しかったよ。エルもまたね」
 「あぁ、また」
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