溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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最上位魔物

皆様、初めましてなのです

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 今日はお城に行く。呼ばれたからではない。父様にお弁当を届けるために。

 数日前から降り続いた大雨のせいで各地に水害、土砂崩れが発生。
 そのせいで連日、父様は大忙し。

 食事を摂る暇もなくお城に缶詰状態。
 夜中に帰ってきているようだけど、良い子は寝る時間。私達は深い眠りについている。

 父様も私達の寝顔を見て、またすぐにお城に戻っているようだ。

 母様も心配していた。弱音を吐かない人だから、辛くても溜め込んでしまうと。

 ということで。ご飯を持っていくことにした。

 初めてのお使い気分を味わいため、一人で行くと言えば母様は冷たく笑う。

 「外は危険がいっぱいなの。ユーリ一人では危ないわ」
 「んーん。大丈夫!お城には馬車に乗って行くし、いざとなったらホワイトドラゴンに助けてもらうから」

 とっておきの切り札を出した。
 母様は悩む。それはそれはもう長く。

 同様に私を心配してくれているリンシエにも、ついてきたらダメと念を押す。

 初めてのお使いは成功させる。そう、たった一人で。

 見守り隊は必要ない。

 「わかったわ。その代わり」

 いつかの魔道具が手首に付けられた。
 今回は母様の魔法が付与される。水。
 お淑やかで可憐な母様にピッタリな魔法。

 「行ってきます」
 「気を付けるのよ」
 「うん!」

 お弁当を持って馬車に乗り込み、いざ出発。

 テロイ家の家紋が入った馬車を襲撃する身の程知らずはいない。
 安全にお城へと到着した。

 いつものように確認した騎士は、敬礼をして見送ってくれる。

 「ユーリ様。お運び致しましょうか?」

 私には大きいバスケット。両手持ちスタイルなら何とかいけるけど前が見えない。

 馬車を引いてくれたアーロンが助け舟を出してくれるも、一人でやり遂げたいから断った。

 以前、通った場所は全て覚えている。
 前が見えなくても周りの景色は視界に入ってきた。自分がどこを歩いているのか、ちゃんと把握している。

 騎士にどこで会議が行われているかも聞いたし、道も教えてもらった。大丈夫。行ける。

 バスケットを落とさないようにしっかりと抱きしめて、ハラハラと見守るアーロンに向かって力強くうなづいた。

 それにしても広いな。廊下の幅でさえ。
 すれ違い様にぶつらかないような設計にしているのだろう。

 同じような造りとはいえ、現在地を把握していれば迷うことはない。

 目的の部屋に着くと、と、でもないことに気が付いた。

 このままではノックが出来ない。
 バスケットを置けばいいんだろうけども。
 直接ではないとはいえ、食べ物を床に置くのは気が引ける。

 自分が食べるならともかく、食べてもらうものだから余計に。

 誰かが通るのを待っていようと決めた瞬間、中から扉が開いた。

 ──グッドタイミングです、父様。

 そして。相変わらず眼鏡姿カッコ良い。

 「本当に一人なのか」

 驚きと感心が入り交じる。

 はて?私が来ることを知っていた?何で?

 聞きたいけど重たいバスケットを持っている腕がぷるぷる震える。
 父様に持ってもらおうと、首を傾げて上目遣いで見つめた。

 小さく微笑んでバスケットごと私を抱き上げては、そのまま部屋に入るものだから思考が停止する。

 私は入ったらダメでしょ!!

 「何を持ってきたんだ」
 「父様のお昼ご飯。作ったの。食べてくれる?」
 「…………ユーリの手作り」

 深く考えてはハッとしたように呟く。
 鋭い視線の先にあるのはバスケット。声も弾んでいたな。

 らしくない父様の表情がおかしかった。

 そんなにお腹空いてんだね。

 食べる時間さえ割いて会議に没頭していたらそうなるか。

 私的には何日もかけて何をそんなに話し合うのかが疑問ではある。
 どこを優先して補償するかで悩んでいるなら、被害が大きいところからにしたらいいだけのこと。

 「久しいな、ユーリ」

 優しく声をかけてくれたのは王様……。いや、陛下と呼ぶべきか。私も立派な貴族なわけだし。
 最低限の教養とマナーを持って接する必要がある。

 「お久しぶりです、陛下」

 抱っこされたままなのでカッコはつかないけど、まぁ良しとしよう。

 よく見るとここにいるのは、私が初めて登城した日に集められていた偉い方々。

 彼らも皆、疲れきっていた。
 つかの間の休息に息をつく者も多い。

 「陛下。この辺で一度、休憩にしましょう。私のために作ってくれたユーリの料理が冷めると困りますので」

 冷めるも何も、中身はサンドイッチだよ。
 パンにベーコンとレタス、チーズもあったから一緒に挟んだだけの。
 玉子があるのも嬉しかったな。
 厚焼き玉子を作っているとエックから物珍しそうな視線を注がれた。
 この世界の玉子料理は目玉焼き一択。割って焼くだけの材料に新たな可能性があると知ったエックの料理人魂に火がついていた。
 調味料は何でも取り揃っているから、味付けの幅も広がる。
 マヨネーズやケチャップは見当たらなかったから、それは頑張って作ってみようかなと。

 家でも簡単に作れるとおばあちゃんも言っていたし。

 「父様。食べながらお話する?」

 会議が何たるかもわからない無知な4歳児を装った。

 ここでの会話を聞いても意味なんて理解出来ませんよとアピールするためである。

 「ほう!この子が新しいお前の娘か!!」

 大きな体を揺らして笑うのは、父様のような羽織りを羽織った男性。
 白の生地に緑色の糸で刺繍されている。
 琥珀色の髪は豪快さとは別に落ち着いた印象。漆黒の瞳は私を捉えて離さない。

 他にも紺色の生地に青色の刺繍した羽織りを羽織った凛々しい女性も座っていた。
 同系色でまとめられて深みを感じさせる。
 アクアマリンの長い髪を一つに束ねて、こちらもネイビーブルーの瞳が周りを静かに見渡す。

 ベージュの生地に黄色い刺繍は何だか安心感があった。
 その人が持つ特有の雰囲気もあるのだろう。
 父様よりも歳上で、じぃじと同年代かな?
 藤色の髪にところどころ白髪が混じり、山吹色の瞳は私を映してすぐ伏せられた。

 ピンクの生地に茶色い刺繍が施された羽織を羽織るのは若い20代くらいの男性。
 茜色の紙は夕日のように綺麗。糸目なので瞳の色はわからない。
 笑っているように見えるのに、表情が変わらないから怖い印象を持ってしまう。

 この四人だけは前回いなかった。

 この場にお呼ばれするのだから、危害を加える敵ではないはず。

 「俺はリミックと幼馴染みのストフォード・リザークだ。よろしくな、チビ助」

 チビ……?

 手足を見た。うん。小さい。
 それだけ。チビではない。

 今のが褒め言葉でないのはわかる。となると……。

 「ユーリ!チビじゃないもん!!」

 ほっぺたを最大限膨らませた。
 感情が爆発寸前だと子供っぽくなるのは仕方ない。私は子供なのだから。
 とまぁ、都合の良いだけ子供になってみた。

 でも、本当に奥底から感情が押し寄せてきたんだ。
 私はユーリわたしであって優里わたしでもある。
 大人と子供。二つの感情が存在しているのも確か。

「リザーク。私の娘をチビ呼ばわりなど、よほど早死にしたいらしいな」

 私よりも怒っている人がいた。言っていることが物騒すぎるよ。

「ふん。バカが。女の成長は早い。お前が思っているよりもな。この子もいずれ、すぐ大人になる」

 一見、冷たい物言いではあるけど私を庇ってくれていた。
 腕を組んで呆れたように息をつくお姉さんのことは好きだ。

「自己紹介がまだだったな。私はジーメリナ・アライド。よろしくな、ユーリ」

 目を細めて微笑んだ。
 綺麗とカッコ良いが凝縮されている。

「なるほど。これは確かに愛らしいな。ヴィーロが自慢の文を寄越すわけだ」

 ほう。ヴィーロ?どちら様?

「父上の名前だ、ユーリ」
「じぃじ!」
「母上はシャンリアだ」
「ばぁば!」

 よし、覚えた。

「ではついでに、儂の名前も覚えてくれるか。小さな天使よ」
「う?」
「ヴィバル・ロットオルフォンだ」
「ヴィバル……。ん、覚えた」

 じぃじと同じくイケおじだな。
 見た目にも気を使っているから色気も漂う。
 若い頃はモテていそうだ。

 この際だから糸目お兄さんのことも紹介してほしくなった。

 似たような羽織を羽織っているのには、何か訳があるはずだろうし。

「私はアトゥル・シュバルツだ」

 ぶっきらぼうに、それだけ。

 子供が嫌いなのかな。顔も背けられているし。

 必ずしも大人が子供を好きとは限らない。自分の子供ならまだしも、他人の子供はそこまで。

 そりゃさ。嫌われるより好かれたほうがいいけど、意志や感情を捻じ曲げたり強要したりするのは良くない。

 悲しいより寂しいに襲われつつあるけど、それ以上に愛を貰っているからか俯くことはなかった。 

「あ、あの。初めまして。ユーリ・テロイです。よろしく、お願いします」

 私は他の人よりほんの少しだけ特別らしいけど、特別なことが出来るわけではないのだ。

 そう例えば。人の心を読むとか。

 今日初めて会った四人が何を思っているかなんてわかるはずもない。
 表情も視線も異なっているのだから。

 ましてや全く同じことを思っていたなんて夢にも思わない。

「「(ユーリが可愛すぎるっ!!)」」
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