溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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最上位魔物

ハザックの森に行ってきます

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「アーロン。父様と帰るから先に帰ってていいよ」
「旦那様とですか?」
「うん」

 意図的に嘘をつくのは良心が痛む。

 でも、私にはやらなくてはいけないことがある。
 使命ではないけど、やり遂げられたら父様の肩の荷も一つは降りるのではないだろうか?

 アーロンは父様が一緒ならと先に帰ることになったけど、父様に確認だけしておきたいと言うので会議の邪魔をしてはいけないと最もな理由で阻止した。

 渋るアーロンに必殺技を使う。
 ズボンの裾を掴み上目遣い攻撃。

「ぅ……」

 これをやるとなぜかみんな、左胸を抑える。
 無意識に魔力をぶつけてるとかじゃないよね?

 怪我をしている様子はないので、大丈夫だとは信じたい。

「わかりました。また夕方にお迎えに上がりますので」

 そっか。父様の馬車を引いているのもアーロンだった。
 朝からずっと拘束するわけにもいかないから、仕事中は帰宅して帰る時間にもう一度迎えに来るのか。

 笑顔で馬車を見送って、私はどうやって王宮を逃げ出すか考える。

 普通に門を通れれば良いんだけど、何も聞かずに通してくれるはずもない。
 そんなことをしたら職務怠慢。今日にでもクビになる。

 ──賄賂でもあれば通してくれるかな?

 手持ちなんて1カリンもないから、渡せないんだけどね。

 ──ということは。どうしたらいいの?

 透明になったり、妖精みたいに小さくなれたらどこにでも行けるのに。

 物陰から門を観察していても騎士の二人は気を抜くことなく周りを警戒する。
 私が近づいたらすぐバレそうだ。

 「うーん」

 短い腕を組んで首を捻る。

 その場に座り込んで空を見上げると、鳥が優雅に飛んでいた。
 大きな羽を羽ばたかせて悠々と。

 いいな。羽があればどこにでも自由に行けるのに。

【ならば。私がユーリの羽となろう】
「ふぉい!?アネ……ホワイトドラゴン!?」

 慌てて口を手で塞ぐ。ついうっかり、真名を呼ぶところだった。
 周りに人がいないことを確認してアネモスに話しかける。

「ビックリした。離れていても会話出来るんだね」
【私とユーリは常に繋がっているからな】
 「そうなんだ」

 何となく手の甲を見た。
 そこに魔法陣は浮かんでいない。

 「でもさ、何で急に話しかけてきたの?」
【ユーリが羽を望んでいるようだったからな】
「私を背中に乗せて飛んでくれるってこと!?」

 思わぬ解決策。

 早く来ないかなとワクワクして待っていると、申し訳なさを含んだ声で

【飛ぶのはユーリ、其方だ】

 …………ん?
 人間は空を飛べない。間違いなく地上に真っ逆さま。
 下手すれば頭が潰れて脳が飛び散る大惨事。

 グロテスクな死体を発見した人の心にトラウマを植え付けること間違いなし。

 思い……出す。私が助けた男の子は大丈夫だっただろうか。
 心に傷を受けて塞ぎ込んでいなければいいけど。
 祈るしかなかった。私にはそれしか出来ないから。

 今はもう遠くなってしまった、私が生まれた小さな国。
 世界中の人々なんて大それたことは願わない。私と出会ってくれた人達が幸せに生きていてくれたら、それだけで私は……。

【私が地上に降りればテロイは魔力を感知して、何をするにしても邪魔が入る】

 それはダメだ。父様に知られたら行かせてもらえなくなる。

 そう、私はハザックの森に行きたいのだ。
 商人が森を抜けられるようになれば、今回のような緊急事態も回避出来る。
 父様の仕事が減るわけだ。

 どんな超人でも寝ずに働くのは良くない。食事もそうだけど、しっかりとした休息も必要。

 それに……。役に立ちたい。子供という立場に甘えて、何もしないのも気が引ける。
 テロイの一員になったのなら、私に出来ることだけでも精一杯やらなくては。

 地図を見て場所は覚えたし、どうやって行くかが問題だったけど解決したようでしていなかった。

【ユーリの持つ風魔法で飛ぶのだ】
「でもでも。私、魔力のコントロールが出来ないから、魔法だって上手く使えないよ」

 訓練なんて無意味だと嘲笑うかのように、私の意志とは関係なく魔法が発動する。

【私の魔力を使えばいい。ユーリはただ魔法を発動するだけだ】

 体の中を爽やかな風が巡る。澄んだ空気が目に見えた。
 小さな竜巻が私を空へと押し上げては、鳥が飛ぶよりも高い位置でピタリと止まる。
 これなら下からでは私が見えないだろう。人間が飛んでいると認識するには、あまりにも高すぎる。

 上空からの景色。大きな建物でさえ小さく見える。
 何気なく下を見ると何千メートルも地上から離れていたこと、地に足がついていないことに恐怖した。

 命綱なんてない。魔法で浮いているだけ。
 魔力が切れた瞬間、避けられない死が訪れる。

 血の気が引くと体が冷えていく。

【ユーリ。一瞬だぞ】
「え?ええぇぇぇぇ!!!??」

 ゼロスタートからの急加速。

 体は何かに引っ張られ、後ろから押されるように速い。
 景色を楽しむどころではなかった。

 ──酔いそう。

 森の入り口で見事、止まった。

 絶叫すぎるよ、ほんと。

 ゆっくりと降り立ち、高鳴る鼓動が収まるのを待つ。

 立てられた看板には、“立ち入り禁止‪✕‬”と赤いペンキで書かれている。

 私が言うのもなんだけど、大きな岩でも置いて入り口を塞いだほうが、誰も入らないのでは?

 魔物の怖さを知っている大人はともかく、好奇心旺盛な子供は面白半分、度胸試しといった理由で入っていくかもしれない。

 進言してみようかな。私の用が終わった後にでも。

「暗いな」

 太陽は昇っているのに、森の中に陽は当たらない。
 流れ込んでくるひんやりとした空気。
 一緒に行ってくれる人はいない。
 アネモスとブロンテーの魔法があるとはいえ、一人であることに変わりはなかった。
 怖いと引き返すこともまた勇気。

 私の選択肢は……。

「よし!行くぞー!!」

 鼓舞するように声に出しては、暗く冷たい森に足を踏み入れる。
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