溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ

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最上位魔物

貴族は偉いのですか?

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 外から届く物資は全て、同盟を組んでいる国からの借り物。後で返さなくてはならない。
 近隣諸国は同じように大雨の被害に遭い、助けを求められる状況ではなかった。そのため、少し遠くの国にお願いをしたところ、自国が傾かない程度に送ってくれることとなった。

 隣国に助けを求められなかったのもそのため。
 同じとはいかなくても、そこそこの被害は出ている。自国のことで手一杯だというのに、他国を助ける余裕はない。

「国民への税を上げるしかないでしょう」

 議会の一角で、声高に提案がなされた。

「他国に借金をしたままでは、いずれ従国になることは間違いありません。未来のために今は国民が一丸となるべきです!」

 タダで借りるのだから返すときには感謝とお礼を込めて、先立つ物も渡すことになっている。先立つ物とはお金。
 少額ではない。貴重な食料を分けてもらうのだ。それ相応の額になってしまう。

 予算を割けば問題ないのだろうけど、額が大きすぎるために無闇に使えないのもわかる。
 それを国民の税を上げて補おうという魂胆。

 この国の税金の仕組みがどうなっているかはまだわからないけど、この口ぶりからして支払うのは平民。もしくは下級貴族。
 中級貴族である自分達に苦労が及ばないようにしている。

 となるとだよ。税金とは働いて得た収益の何割かを収めること。
 領民は領主に支払い、領主から国へと収められる。
 平民は決められた自治体に収めるのだろう。

 市井の人々は不満を募らせても、災害の現実と国の存続を考えれば、反発を押し殺すしかないのだ。

 それは……平等ではない。

「はい。いいですか」
「公女様。今は大切な話をしているのですよ」

 さっきのことを根に持っているようだ。

 私は人として当たり前のことしか言っていないのに、おじいちゃん達からしてみれば恥をかかされた。

 しかもこんな子供に。名のある当主陣の前で。
 私に対する態度も自然と強くなる。

「二つほど聞きたいことがあるのです」
「我々にですか?」
「そうです」

 おじいちゃん達は顔を見合せて「どうぞ」と質問を促す。

「ここにあるテーブルや椅子は皆さんが作ったのですか?」
「は?まさか!ご冗談を」
「そういうのは全て下々の……平民の仕事です」
「ふむ、なるほど。では皆さんは、なぜそんなに偉そうなのですか?」

 オブラートに包むことなく直球で聞いてみた。
 遠回しな言い方をしたところで通じなければ意味がない。

 まぁ、通じないだろうと判断したからこその直球勝負。

「こ、公女様。いいですか。我々は偉そうなのではなく偉いのです!!」

 顔を真っ赤にしながら勢いよく立ち上がる。
 荒々しい息遣い。怒っていることは明白。

 私が勢いよく投げたボールは頭に直撃したようだ。
 貴族なら感情的になることなく、冷静な会話のキャッチボールが求められるはず。

「なぜですか?」

 怒りに気付いていながらも鈍感なふりをした。
 私は子供ですから。

「貴族という身分があるからです!!」
「身分は身分であって、偉いかどうかにはならないと思うのですが」
「はぁ!!?」
「これは例え話なのでお気を悪くしないで下さい」

 陛下に視線を移すと穏やかに笑ってくれた。これは了承してくれたってことかな。

「王族という身分があり、その方が玉座に座ったとします。でも、その王は何もしません。毎日毎日、自分の好きなように生きるだけ。豪遊するためだけに税を上げて民を困らせる。そんな王を国民は支持すると思いますか?」
「するわけがない!王としての役目を果たさなければ国のトップになど立てないのですから」
「つまり。偉いのは身分ではなく、国民のために何をしたかではありませんか」

 貴族に生まれて、それだけで偉いなんてあるわけがない。
 階級によって役割は違うだろう。
 国から与えられた領地をしっかり治め、国境を守り、軍事や司法を疎かにしないといった様々なことが求められる。

 では。おじいちゃん達はどうか。多少の役割は果たしているかもしれないけど、若い世代に役職を明け渡すことなくしがみつく。給料が良いのだろう。

 ほとんどの時間、仕事をすることなく椅子に座って喋るだけど見受けられる。
 厄介なのは陛下が就任したときから支えてくれていたということ。

 人は大きな恩があると、簡単には切り捨てられない。不安を抱える中で当時のおじいちゃん達の支えは心強かったことだろう。

 ただ、いつまでも過去の栄光にすがるのは良くない。時代は新しくなり、世代交代を果たさなくてはいつまで経っても国も人も進歩しないのだ。

 挙句に自分達のお金は使うのが嫌だからと、生活を苦しめるように税を上げようとする。

 ──偉そうと言われても仕方ないのでは?

 老害とはまでは言わないけど、過去の栄光にばかり縋るのは良くない。

 というか。何もしない人に価値はないと自分達でも認めているのに、その“何もしない ”に当てはまっていると自覚していないことが疑問。

「国は国民全員で作るものですよ」
「まだ幼い公女様にはわからないでしょうが、国は貴族が作るのです。平民はそのおこぼれを頂戴しているにすぎない」

 こんな子供相手に論破してやったと誇らしげな態度は賞賛に値する。

 無言の父様が怖くて上を向けない。私が誰よりも近くにいるから威圧を感じているだけで、他の人は感じていないのかな?

 父様が手を出す前に私がどうにかしないと。元はと言えば、私が蒔いた種なのだから。

「わぁ!すごいです!」

 手を叩いて大袈裟なまでに反応を見せると、ポカンと沈黙が流れる。
 この場に似つかわしくない雰囲気であることを瞬時に察した。

 満面の笑みで急に褒めればそうなるか。
 何か裏があるのではと表情が引きつっている。目まで逸らされると私が悪いことを企んでいるみたい。

 失敬な!純粋に褒めたよ。

 だって……。

「作ったんですよね、この国を」
「おお。ようやく理解されましたか」
「はい。本当にすごいです。王族が住むこのお城も、国民が暮らすための家も、木々を植えて自然を作り、川まで引いてくれて。私達が着ている服も全て手作りなんですよね?」

 私が褒めれば褒めるほど、陛下は口元を抑えて肩を震わせる。
 笑われるようなこと言ってないんだけどな。

 ストフォード様なんて笑いを隠すつもりもない。目には涙まで浮かべて。 

 いくつになっても人は褒められると嬉しいものだ。大人なら尚更。

「公女様は先程から何を仰りたいのですか?」
「だって国を作ったと言ったから」
「そんな平民の仕事を我々がするわけがないでしょう!!」
「皆様の言う平民の仕事がなければ、私達はこうして暮らせていません」

 貴族は欲しい物があればお金を払ってもらう。もしくは買うのどちらか。
 自分で作る発想には至らない。ドレスとか、デザインを考えることはあっても実際に縫うのは仕立て屋。貴族本人ではないのだ。

 食事にしてもそう。調理するのも、食材を育てるのもすべて平民の役割り。
 貴族が貴族らしい生活を送れるのは、彼らが見下す平民がいてくれるから。

 そんな当たり前のことを忘れてしまったら、もう人として終わりだ。
 感謝の気持ちを常に持ち、時には伝えてないと。

「おこぼれを貰っているのは我々、貴族ではありませんか?」
「口が過ぎますぞ!公女様!!」
「よりによって貴族を侮辱をする発言など!!」

 侮辱じゃなくて事実を言っただけ。

 私が怒鳴られる度に父様の瞳から光が消えていく。
 自然発火が起きそうで怖い。

「陛下。陛下も彼らと同じ考えをお持ちですか?」
「いいや。私にとって貴族も平民も大切な国民だ」
「でしたら!会議にも平民を呼ぶべきです」
「会議に?」
「もちろん、全員ではありません。街や村の代表者を一名決めて、彼らに来てもらうのです。平民が関わらないことには呼ばなくていいですが、今回のように知らぬ所で税を上げられたら国民の怒りは爆発します」
「国のために忠義を尽くすのは民として当然の義務だ!!」
「その理屈を無理に押し通して内乱が起きたらどう責任を取るのですか!?最終的な判断をしたのは陛下であると、全責任を押し付けて自分達は被害者だと言うつもりではありませんよね?」

 無理な政策は国を滅ぼす。

 人の命も、築き上げてきた思い出さえも壊す責任を取らないのであれば、何もするべきではない。

 誰かが言った。歴史は人の上に作られる。人がいなければ、歴史などない。

 人と人が手を取り合うからこそ、国は作られ豊かになる。
 助け合ってこそ理想に近づく。

 身分だけで他者を蔑み見下してばかりいたら、何も変えられないし、いつかは自分が見放されるだけ。

 たった今。父様の助けを必要をしていたのに、なぜわかろうとしないのか。
 歩み寄る努力をするだけで、心が救われる瞬間だって確かにある。

「そんなことになれば捕まえて処刑してしまえばいいだけのこと!所詮は魔力も持たない平民!!1時間と待たずにさらし首にしてやりましょう」
「国が追い詰めて苦しめた結果を、罪として擦り付けるおつもりですか」
「いい加減にして頂きたい!!我々は何も間違ったことなど言っていない!!」
「そもそも!!貴女様はそのようなことを言えるお立場ですか?」
「聞けば、公女様。貴女はテロイの名を名乗っているが、あの!ミトン家の血筋だとか」

 下卑た笑い。確信をついてやったと得意げ。

 そっと上を見上げた。

 父様から感情が消えつつある。自然発火したら最後、骨まで焼き尽くしてしまう。

「ミトン家と言えば傍若無人。血筋以外に自慢出来るものがない、恥晒しの一族」
「そんな汚らわしい血を体に流す公女様も汚らわしいのでは?」
「口を慎め!!!!」

 陛下の巨大な魔力が部屋全体を包み込む。酸素を奪い、殺気にも似た怒り。

 変えられない事実だからこそ、おじいちゃん達は口を閉ざさない。
 ニヤニヤと口角は上がりっぱなし。私が泣くのを待っている。

 泣いたら泣いたで父様が怒って命が危険に晒されるんだけどな。

 ここまで嫌われる貴族も珍しいのでは?
 しかも上級貴族で。身分大好きな貴族が揃って嫌うなんてよっぽど。

 主人公であるラーシャがどんなに善人だとしても、ミトンの名を持つ限りは遠巻きの対象。
 だからこそ、救ってくれる新しい家族が必要だったわけか。
 納得した。テロイ家はラーシャの物語を進めるための始まりであるということが。

「そうですね。では、私が成長してミトン公爵夫婦のような傲慢な大人になったその暁には、今と同じことを言って頂いて構いません。ですが。今、現段階において私はユーリ・テロイです。そのことをお忘れなきようお願いします」

 テロイ家の品位は落とさない。
 淑女として真っ向から悪意を受け止めた。

 4歳児にここまで大人の対応をされると思っていなかったのか、次の言葉は詰まり出てこない。

 陛下の命令に従うふりをして、咳払いをしながらこちらを見ようともしなくなった。

「殺したらダメ!!」

 突然、私が叫んだことにより何事かと全ての視線が一ヶ所に集まる。

「青龍!!やめて!!」

 黄色と青色の魔力が鋭い刃となり、無防備な心臓を貫こうとしていた。

【なぜだ?この者はユーリを汚らわしいと言った。万死に値する】

 低い声。怒っていた。とても。

「死んでしまったら……。命は返らないんだよ」

 後悔しようとも、時は戻らない。消えた命は消えたまま。

 人が死んだら悲しむ人がいる。誰かにとっては大切な人である以上、尊厳は守られなければならない。

 私はそのことを嫌というほど知っている。

「私は気にしてないから」

 魔力は揺れる。風に吹かれたかのように。

 私の必死の想いは伝わり、段々と魔力は薄れて見えなくなっていく。

「青龍。私のために怒ってくれてありがとう。でもね、無闇に命を奪おうとしないで」
【それをユーリが望むなら】

 ふぅ。事なきを得た。

 目の前で体に穴が開いて死んでしまったらトラウマものだよ。

 それに。おじいちゃん達は嫌な人ではあるけど、嫌いな人ではないのだ。
 死んでほしいなんて軽々しく思ってすらいない。

 態度と考えを改めてくれたらいいなとは思っているけど。

「ユーリ。青龍がいたのか?ここに」

 陛下は聞いた。うわずった声で。

「いたというか、えと……。青龍の魔力がそこに……」

 あれ?もしや陛下には見えていなかった?
 だって青龍と契約しているんだよね。

 これはもしや、契約ではなく侍従関係にあるから私にだけ見えた。その解釈で合ってる?

 おっと。先日の赤い風は私にしか見えていない可能性が出てきたぞ。

 あれは父様とアネモスの魔法を掛け合わせた複合魔法。
 身の毛もよだつ恐ろしい魔法を誰に撃つつもりだったのか。

 洗礼された魔力は美しくて、まるで絵画のようでもあった。
 インスピレーションが湧き上がるような、そんな感じ。

 これ以上の発言は悪目立ちしかしなさそうだ。

 よし、帰ろう!!

 当初の目的でもあるお弁当は届けたわけだし。

「父様。帰るね」

 膝の上から降りた。

「一人で大丈夫か?」
「大丈夫。私は馬車に乗ってるだけだから」
「そうか。今日はもう夕方には帰れると思うから、レーゼルと待っていてくれるか?」
「うん!」

 陛下が私を呼び止める前に退室した。

 部屋にはもうブロンテーの魔力は残っていないので一安心。

 これからは迂闊な発言をしないように気を付けないとね。

 一人廊下を歩きながら固く決意をした。
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