追放された錬金術師、素材1つで世界を壊す。俺だけ“純度100%”を作れるから

ケルベロス

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《第二章:世界核継承戦 — 蒼光の代行者と黒律の目覚め》

第4話 本編:精霊試練① ― 増殖の暴走領域

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翠深ノ森の中心へ近づくほど、世界は歪んでいった。

足元の草は異常な速度で伸び、  
枝は意思を持つように空を掴み、  
花は一瞬のうちに咲いては枯れる。

生命が狂ったように増殖していた。

「レオン、ここから先が“試練領域(テストドメイン)”だよ」

ユリが俺の手をぎゅっと握った。  
その表情はいつもの無邪気さよりも、ずっと真剣だ。

「キミが翠律石の力をコントロールできるか、森が判断するの」

ノアは反対側で静かに言葉を継ぐ。

「ただし、失敗すれば──  
 生命律に飲み込まれて、“森の一部”になる」

リーテが息を飲む。

「……つまり、死ぬってこと?」

ノアは淡々と頷いた。

「うん。ここでは命は簡単に“同化”される」

だが俺は一歩前へ進む。

「覚悟はできてる。  
 翠律石の暴走は止める。世界のためにも、森のためにも」

ユリは嬉しそうに笑い、両手を広げる。

「じゃあ──始めるよ。  
 “翠律試練・第一段階(フェーズ1)”、開放!」

森全体が脈動し、光が爆発した。



目を開くと、そこはもう別世界だった。

四方八方に伸びる蔓、宙を浮かぶ種子、  
地面には巨大な苔のクッション。

そして──  
俺の目の前に、巨大な“花の怪物”が咲き誇っていた。

花弁は刃のように鋭く、  
中心からは毒色の粘液が滴る。

リーテが震える声を上げる。

「な、なにこの化け物……!」

ユリが答える。

「“増殖の失敗作”だよ。  
 本来なら森が吸収して消すんだけど、  
 黒律が近くにあるせいで不完全のまま残っちゃってるの」

ノアが俺を見る。

「倒すだけじゃ意味がない。  
 “生命律を元へ戻すこと”が試練だ」

なるほど。  
ならば俺の技は一つ。

俺は剣を抜き、核視を最大まで開いた。

(見える……生命線の偏りが)

花の怪物は生命エネルギーが渦のように内部へ集まり、  
完全に暴走していた。

「純度100%……生命律・還元!」

剣を振り下ろした瞬間、  
青と緑の光が絡まりあい、渦を巻いて花を包む。

怪物が咆哮し、花弁を砲弾のように飛ばすが──  
俺はすべてを読み切っていた。

生命の線を“切らずに導く”。  
まるで演奏家が楽器を調律するように。

緑の線が整い、怪物の身体が光の粒子へ変わる。

やがて花はしぼんだ。

その中心に──  
小さな芽がひとつ、静かに残った。

ユリがぱっと笑う。

「成功だよ!!!」

ノアも珍しく温度のある声を出す。

「生命エネルギーを殺さず“再調律”するなんて……  
 本当に、純度100%の使い手だ」

リーテも胸に手を当てる。

「……すごい……これが世界核の力……」

だが──その瞬間。

森の奥から、黒い煙が立ち上った。

ノアが険しい表情になる。

「黒律だ。  
 “あれ”が近づいてる」

ユリが俺の腕を掴む。

「次の試練はもっと危険だよ。  
 でも、あなたなら絶対大丈夫。  
 だって……青律は“生命を導く光”だから」

(青律……?  
 俺の純度100%が、世界核の青律に相当しているのか)

疑問を抱く間もなく、ノアが指を鳴らす。

「レオン。  
 第二段階に進む準備をしろ。  
 ここからが本番だ」

森が深く脈動する。

翠律石の暴走は、まだ序章にすぎなかった。
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